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フェアウッド・カフェ 「木のある暮らし講座」
第4回「武蔵野の平地林の恵みをフル活用」開催報告

2010.11.9掲載

フェアウッド・パートナーズでは、フェアウッドな木製品に囲まれた、気持ちよい暮らしを実現するための講座を毎月1回開催していきます。おいしい森林農法のコーヒーを飲みながら週末の午後をお楽しみください。

進行役、フェアウッド・パートナーズの中澤
【第4回】
「武蔵野の平地林の恵みをフル活用」
日時:2010年10月2日(土)14:00-16:00
場所:カフェ&バー「ゴルビィ」(旧カペルシータ)
フェアウッド・アイテム:三富の広葉樹材の家具&小物
フェアウッド・メニュー:川越イモのスウィーツ

4回目となったフェアウッドカフェ「木のある暮らし講座」の主役は、埼玉県の「三富(さんとめ)地域」と呼ばれる場所の平地林です。都会の貴重な自然である平地林。その手入れのために切り出された木を利用したクラフトをご紹介し、やはり手入れために掃き出された落ち葉を肥料に育ったサツマイモのお菓子を召し上がっていただきました。この日の参加者は8人でしたが、少人数ならではのアットホームな空気の中、クラフト作りにも挑戦していただきました。

●平地林保全のための木製品づくり
お招きした講師は、この地域でクラフト製作をされている高村徹さん。本業である家具づくりの傍ら、平地林の間伐材を使った製品を生み出すことで地域の自然環境や景観の保全・改善にご活躍されています。

三富地域とは約330年前、江戸時代の元禄時代に、川越藩主・柳沢吉保が行った新田開発で誕生した「三富新田」を中心にその周辺を含めた畑作地帯のことです。現在の所沢市、川越市など埼玉県西部の5市町にまたがっています。

各農家には平地林があり、防風の役割のほか、間伐材は薪や炭に、落ち葉はたい肥化して野菜作りに利用され、人々の生活に密着した存在でした。しかし、昭和30年代に石油やガス、化学肥料が普及すると、薪や落ち葉の利用が急減し、平地林の面積は減っていきます。残った林も人の手が入らないまま放置され、荒れ放題に。一方、平地林は地域住民や都会の人々にとっては身近にある貴重な自然。次第にその価値が注目され、ボランティアによる落ち葉掃きなどが始まります。そんな中、「間伐材も利用できないか」と、地元でクラフト作りをしている高村さんに相談があったのだそうです。

「初め依頼が来たときは、『どうしようもないよ』という印象でした」と高村さんは数年前を振り返ります。樹種はクヌギやコナラ、ヤマザクラと様々で、日照や肥料が多すぎるために育ち過ぎ、家具づくりには不向きなのです。それでも高村さんは、それぞれの材の特性に合わせてデザインを工夫、フォトスタンドやコート掛けといった木製品を作り出しました。今では地元の美術館のミュージアムショップなどでも販売されるようになりました。

当初は小さな製品が中心でしたが、最近は試行錯誤の末、テーブルやスツールといった家具の製作にも成功しています。しかも、椅子を重ねると飾り棚になり、机は引っ越しの際に便利なノックダウン式と趣向の凝らされたデザイン。そこには「長年人々の暮らしを支えてきた林の木ですから、現代人の生活にも生かされるよう工夫しました」という高村さんの願いが込められています。

ただ、家具に向かない材を使うことには、大変な苦労が伴いました。それは、それぞれの材の特徴や性質を知って、それに合わせたデザインをしなければならないことです。例えば、クルミは粘りがあって軽く、タモはやや硬く木目が細かい。コナラは縮んだり割れたりしやすい性質があります。三富材のうちクラフトに利用できるのは半分くらいそうです。それでも、「地元の環境保全のため、これからもいい製品を作り続けたい」と意欲的な高村さん。「皆さんにはぜひ、製品を買って使うことでご協力願えたら嬉しいです」というメッセージでお話を締めくくられました。

●落ち葉で育った川越芋のスイーツ
今回は、コーヒータイムの主役も三富育ち。平地林の落ち葉堆肥で育った川越芋「ベニアズマ」を材料に、料理教室講師の早川晴子さんが作ってくださったスイートポテトです。お芋の育った環境は、江戸時代から300年間落ち葉がすき込まれ続けたふかふかの土――。参加者の皆さんは、そんな説明に耳を傾けながら、素朴な甘さに舌鼓を打っていらっしゃいました。

●ワークショップ:自分だけのフェアウッド製品作り
スイートポテトで腹ごしらえした後は、この講座では初の試みであるワークショップです。材料は三富の平地林出身のコナラ。講師はもちろん、高村さんです。

皆さんには正方形の板と紙やすり、木綿の布が一つずつ配られます。手順は簡単。刷毛で板に油を塗り、やすりで擦り込んでから布で磨くだけです。単純な作業ですが、皆さんにとっては「世界に一つだけの自作のフェアウッド製品」。油を擦り込む右手が痛くなると左手に持ち替えるなどして、長時間かけて熱心に取り組んでいらっしゃいました。

オイルを塗る やすりがけ

また、お互いの距離が近いアットホームな雰囲気で、作業台を囲む皆さんからは「こういう斑はどうしてできるんですか」「木が自分の重さでつぶれて黒くなるんですよ」といった質疑応答が自然発生。完成したコースターの手入れ方法の質問には、「洗うときは軽く水で流して拭いて、日陰に立てかけて必ず乾燥させてください」と高村さんは答えていらっしゃいました。

終了時刻が過ぎても、「トラック荷台を支えるフレーム部分に樫の木を使っていた理由は、鉄だと曲がったら戻らないが、堅木ならたわんでも元に戻ろうとするから」「シイはコナラなどの広葉樹をダメにするから里山の敵。薪には向くので、伐採して必要な方に差し上げています」といった木についての雑談は尽きることなく、談笑しながらひたすら手を動かす皆さんでした。

「家具に関わる仕事で、国産材を使おうとプロモーションしてきた」という会社員の男性(30歳)は「この数時間で木の育った環境を知り、ひと手間かけただけなのに一生捨てられないコースターができました。机上の理論を押し付けるだけでなく、こうした体験が大事だとわかってよかったです。農家の顔や栽培方法のわかる野菜が売れているように、家具も環境にやさしいものを選んでもらえるようにしていきたい」と話してくださいました。

また、「高村さんのことは椅子のデザインで知っていた」という会社員の女性(40歳)は「木材ごとに違う性質や積み重ねた時の姿まで考えてデザインされていると知って感動した。三富の雑木林を実際に訪ねてみたいと思います」と、コースターを嬉しそうに磨きながら話してくださいました。

フェアウッドでは高村さん製作、三富の平地林から切りだしたクリのカッティングボードを販売しています。使う人の気持ちに思いを寄せてデザイン・製作を手掛ける高村さんならではのこだわりが活きている作品です。

次回の講座は11月13日(土)、埼玉県南西部の飯能市周辺で育った「西川材」を取り上げます。都心から40キロ~50キロと近い場所で、代々良質の杉やヒノキが生産されてきました。西川材のテーブルやイスに親しんでいただき、ここの森で採れる原木キノコの軽食とともにお楽しみいただきます。楽しく有意義な時間を過ごしていただけること請け合いですので、皆さま奮ってご参加ください。

◆ご案内◆
三富地域の平地林を知ってもらおうという企画展「さんとめの木を活かす展」が、開催されます。日程は12月17日(金)~19日(日)、場所は西武新宿線本川越駅から徒歩3分の「小江戸蔵里」(川越市新富町1-10-1)です。高村さんの木製品も展示販売されますので、皆さま、よろしければお立ち寄りください。

問い合わせは、埼玉県農林振興センター農業支援部三富農業振興・平地林活用担当の長谷部さん(Tel:049-242-1810)へ。

※「木のある暮らし」講座は環境再生保全機構の地球環境基金の助成を受けて実施いたします。


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