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中国
(1)違法リスクの高い輸入相手国の事例

2017.12 掲載
2018.3 更新

世界第一の木材輸入国。国際市場の熱帯丸太の2/3を、熱帯材製品の1/3を輸入している。あらゆる国から輸入している中国であるが、原産国各国からの木材は中国国内で混ざって最終製品に加工される場合が多く、中国からの輸入については十分に合法性確認(デューデリジェンス:DD)を行う必要がある。

中国政府は2009年頃から木材DD規制を検討。EU(欧州連合)や米国のDD規制を念入りに調査しながら、政府主導、業界団体主導の2本立てでいくつかのパイロット調査も済んでいる。ただし正式に規制が導入されるタイミングについては不明であり、現在DDが適切に行われているわけではなく、多くのNGOが中国企業のDDの不十分さを指摘している[1]
中国へ輸出する原産国で違法リスクが高い国はロシアが代表的であるが[2]、今回はまず、以下のNGO報告書から違法伐採問題が深刻とされる2014年に熱帯材の輸出国第一位となったパプアニューギニア(PNG)の他、リベリア、ペルーを例に取る。報告書のサマリーと、現在クリーンウッドナビに情報がある国については関連部分を参照しつつ、フェアウッドの観点から中国からの木材のDDにおいて留意する点について紹介する。

表 中国が熱帯木材を輸入している国とそれらの国の「世界ガバナンス指標(WGI)」[3]

国名 中国の南洋材輸入相手国(2016年、%) 2016年WGI(法の支配)ランキング(%) 2016年WGI(汚職の抑制)ランキング(%)
パプアニューギニア 29 25 16
ソロモン諸島 19 40 44
赤道ギニア 11 7 0
モザンビーク 6.8 16 18
カメルーン 5.0 15 11
コンゴ共和国 4.8 14 10
ナイジェリア 3.3 14 13
ラオス 1.6 24 15
ミャンマー 1.6 51 55
リベリア 1.3 17 31
Sources : Import data from China’s General Administration of Customs ; Rule of Law and Control of Corruption rankings from 2016 World Governance Indicators (WGI), available at: http://info.worldbank.org/governance/wgi/#home
    [1]EIA, (2014) The Open Door: Japan's Continuing Failure to Prevent Imports of Illegal Russian Timber
    [3]Global Witness, 2017, China's high-risk timber trade: Lessons from Papua New Guinea

事例1:パプアニューギニア(PNG)から中国への輸出

2014年には熱帯材の輸出国として世界第一位となったPNGの最大の輸出相手は中国である。中国の輸入する丸太の30%はPNGからであり、PNGの丸太の90%が中国へ輸出されている。

PNGの森林面積は世界第三位であり、国土の約97%は先住民族が慣習的所有権を認められている。よって、先住民族の権利の侵害を含め、PNGにおける森林伐採は「大部分が何らかの形で違法」とするシンクタンク報告もある[4]。特に、2000年頃を境にSABLと呼ばれる特別農業ビジネスリースに由来する森林伐採が非常に問題視されている。

    [4]Lawson, S., Illegal Logging in Papua New Guinea (2014, Chatham House), at: https://indicators.chathamhouse.org/sites/files/reports /20140400LoggingPapuaNewGuineaLawson.pdf

木材調達リスクに関する報告書

PNGは、世界銀行のプロジェクト「世界ガバナンス指標」によれば下位25%に入っている。またEU木材法のモニタリング機関であるNEPConも、PNGを最も違法リスクの高い国の一つと位置付けている。

特に先住民族の権利が関わっている場合、伐採ライセンスの発行は規則に違反して行われることが多い。PNGにおいて特に問題とされるのが、SABL(Special Agriculture and Business Leases)と呼ばれる特別農業ビジネスリースの濫用である。多くは土地の所有者の同意を得ないものであり、深刻な人権侵害を伴っている。PNG政府による調査でも憲法やその他の法律に違反しているとの結果が出ており、PNGの首相はSABLを違法としているが、政府の対応が追い付いていない。日本のシンクタンク地球環境戦略研究機関も、SABLに由来する木材の購入は避けるように提言している。

PNGからの木材の合法性確認(DD)において留意すべき点

現在、クリーンウッドナビには、PNGからの木材の合法性確認書類の事例として、SGSの文書が載っており、SGSについて以下のような記述がある: 「パプア・ニュー・ギニアでは、民間検査・認証企業であるSGSがPNG政府から輸出向け丸太の監視を委託され、レポートを発行しています。SGSが検査した木材について、PNG林野庁発行の輸出許可と通産省発行の輸出ライセンスが発行されます」

しかしこれは合法性確認の根拠としては不十分である。SGS(Société Générale de Surveillance) は政府から委託を受けた民間の認証会社であり、PNG政府が伐採許可証を認めている場合、実際には人権侵害などの違法行為があったか否かまでを確認するわけではない。SGSのタグは伐採許可、伐採地方、許可番号を特定するためのものであり、伐採会社は与えられた許可証のもと伐採した丸太に番号を付与するにすぎない。また樹種やその他の必要な情報は伐採会社が記載しており、輸出前の貨物ごとの「検査」は貨物全体の10%のサンプル抽出による。SGSについての最新情報は、以下の報告書が参考になる。

事例2:リベリアから中国への輸出

過去5年間、中国はリベリアからの木材輸出の約80%を輸入しており、そのすべては熱帯丸太である。リベリアは2003年に第2時内戦が終わっているものの、木材や鉱物を含む資源管理に関する政府の改革は未だ成功しているとは言えない。

木材調達リスクに関する報告書

リベリアにおける大規模伐採契約はすべて根本的に違法である。政治家と伐採会社との癒着、禁止されている紛争時代の伐採者の採用、賄賂の可能性、リベリアの丸太追跡制度の濫用、地元住民の同意を得ていないコミュニティ森林管理システム制度の濫用、税の不払い(2500万ドル)などが見られた。

リベリアにおける伐採は、以下の3つの制度のもと行われる。(1)森林管理契約(FMC)(7地区)、(2)木材販売契約(TSC)(7地区)、(3)コミュニティ森林管理協定(CFMA)(最低でも5地区)である。本報告書では、大規模伐採会社がFMCまたはCFMAのもと行う各伐採地区を調査した結果を付属書Iとして詳細にまとめている。グローバル・ウィットネスの調査によればすべての地区において前述のような違法行為が発覚している。

リベリア政府はこれらの問題を深刻に捉え、2017年1月には違法伐採の独立調査の仮計画を発表している。さらに、石油をはじめとする採取産業における腐敗取締のための採取産業透明性イニシアティブ(EITI)のもと、リベリアEITI(LEITI)は各企業に様々な情報開示を求めており、2015年にはその結果が発表されたものの、情報開示のやり方自体に問題のあるケースも多々ある。またリベリアはEUの二国間協定(VPA)交渉の一環としての合法性証明制度の構築や、世界銀行の実施するノルウェー政府との持続可能森林管理プログラムを行っているなど内部改革に着手はしているものの、実際の伐採行為には前述の通り根本的な違法性が伴っている。


事例3:ペルーから中国への輸出

国連及びペルーの貿易データによれば、2016年のペルーから中国への熱帯木材の輸出は、量にして全体の61%を占めており、総額約5,900万ドルである。

ペルーの違法伐採問題については多くのNGOが調査しており、同国における違法木材取引は様々な社会環境問題と密接に関連しており、暗殺、強制労働、脱税、人権侵害、薬物密輸や組織犯罪との関連が指摘されている。これらは蔓延する汚職とあいまって、先住民族の権利の侵害や森林破壊の原因となっている。2017年10月には、アメリカ政府が木材の違法性を理由にペルーの輸出会社からの木材の輸入禁止を決定している。

木材調達リスクに関する報告書


事例4:ミャンマーから中国への輸出

2000年から2013年にかけての税関データをもとに、中国―ミャンマー間の木材貿易の傾向を分析したブリーフィング文書。

ミャンマーの主要な輸出先はインド(1位)と中国(2位)であり(全体の約80%)、広葉樹丸太ではミャンマーは中国にとって金額的には2位(約5億ドル)、量的には4位(約94万㎥)の輸出国である(ただしミャンマー政府は2014年に丸太の輸出禁止令を出しているため丸太は違法材)。

ミャンマーからの輸出は2006年にいったん減少して以来増加し続けており、2013年にはそれまでのほぼ倍となっている。

中国に輸出される主な樹種は二つで、ビルマパドウク(学名:Pterocarpus macrocarpus)とビルマローズウッド(学名:Dalbergia oliveri)である。これらは中国で需要が増え続けている高級家具「紅木家具」の原料となる。ただし現在の割合で違法伐採・取引が続けば、上記の樹種2つは近い将来商業利用のために絶滅することが懸念されている。

表:中国の広葉樹材輸出国トップ5(2013年)[5]

国名 金額(百万USドル) 国名 量(m3)
1.パプア・ニュー・ギニア 624.7 1.パプア・ニュー・ギニア 2,751,777
2.ミャンマー 532.4 2.ソロモン諸島 2,035,743
3ソロモン諸島 403.0 3.ロシア 967,715
4.ラオス 308.3 4.ミャンマー 938,092
5.コンゴ 198.6 5.コンゴ 502,131

製材輸入については、2008年以来減少傾向にある。

もう一つの特徴として、2007年以降、木炭が増加していることが挙げられる(全体量の約40%)。これはラオスやベトナムでも同様の傾向がある可能性がある。木炭は主に世界市場の50%のシリコンを製造している中国で燃料として使われる。

ミャンマーの木材は、国家所有であるMTE(Myanmar Timber Enterprise)の押印があり、ヤンゴン港を通って海経由で運輸されていれば、中国では合法とみなされている。海経由でなくてはならない理由は、違法取引を防ぐため、中国はミャンマーと陸続きの国境を通して木材や鉱物を輸入しないという二国間合意を交わしているためである。しかし、税関データのほとんどは北西部のカチン州と隣合わせの雲南省の首都昆明市のものであり、この二国間合意は守られていない。

2013年のデータによれば、ミャンマーから中国が輸入した木材の94%が昆明市で登録されており違法とみなされる。これによれば木炭の100%、製材の97%、丸太の91%、ベニヤ板の12%が違法であるとみなされることになる。


地図:ミャンマーから中国への直接ルート[6]

さらに、残り6%のヤンゴン港から輸出される木材は、タイ、マレーシア、香港など他の経由地をいったん通貨して中国にやってくることも多い。

木材の合法性確認(DD)において留意すべき点

日本企業がDDを行う際には、ミャンマーが原産国である可能性のある製品には十分注意すべきであり、ほとんどの場合には購入は控えておく方が無難であるのは言うまでもないが、少量はタイ、マレーシア、香港など他の地域をいったん経由して中国にやってくることも留意することをお勧めする。実際にはミャンマーの木材を使っていてもタイやマレーシアのものと記載されている可能性もある。また、2016年のワシントン条約第17回締約国会議において、Dalbergiaに属する種はすべて商業取引が禁止されている(2017年に発効)。よって、ビルマローズウッドは禁制品となっているため、日本へ輸入されたものはすべて違法である。[7]


    [5]フォレスト・トレンズ(2015年)『Analysis of the China-Myanmar Timber Trade(中国-ミャンマー間の木材貿易の分析)』
    [6]フォレスト・トレンズ(2015年)『Analysis of the China-Myanmar Timber Trade(中国-ミャンマー間の木材貿易の分析)』
    [7]中国で紅木家具の製造に使われるミャンマーの樹種と規制については、以下のEIAのブリーフィング文書が新しい。https://eia-international.org/wp-content/uploads/Myanmars-rosewood-crisis-FINAL.pdf

事例5:アフリカから中国への輸出

中国とアフリカ諸国との木材貿易の2007年から2012年のデータを分析した報告書。2008年に出した、1997年から2006年のデータ分析の続編であるが、2009年のリーマンショックがこの貿易に与えた影響を測る意味もあった。経済発展に伴う石油・鉱物・木材の需要に応えるため、アフリカからの記録的な輸入は継続しており、世界経済の影響はごくわずかと報告書は結論付けている。

アフリカにとって最大の輸出相手はいまだEU諸国であり、中国―アフリカ間の貿易は、量的には少ない(全体の2.8%)。またアフリカからの輸入は年によって変動があり一定ではない。このことは、アフリカ諸国で事業を展開するごく限られた数の大規模企業の存在を示唆している。中国への輸入はまた、全体に対する金額が量よりも高くなっており(5.2%)、さらに金額はここ10年上がり続けている。近年の傾向としては中国が輸入した木材を使った加工製品のアフリカ諸国への再輸出が増加していることが挙げられる

製品別には丸太が最も多く、次が紙パルプ、三番目が製材である(2012年のデータ)。紙パルプはほぼすべて、南アフリカ(最大)とスワジランド王国から輸入している。樹種別では、ローズウッド(注:現在はワシントン条約により商業取引は禁止)は言うまでもないが、オクメ(ガボンマホガニーとも呼ばれ合板・建築材・家具材などに使われる)が比較的高価な樹種として挙げられる。輸出国別では、2010年以前はガボン、コンゴ共和国、カメルーンが主要国であったが、南アフリカ(紙パルプ)、モザンビーク、赤道ギニア、スワジランド(紙パルプ)からの輸出も増えてきている。

表:2012年のアフリカからの中国への木材製品輸出[8]

  国名 割合(量) 割合(量)
1 南アフリカ 23.9% 12.3%
2 コンゴ共和国 14.2% 16.4%
3 カメルーン 11.9% 12.5%
4 モザンビーク 11.1% 12.8%
5 赤道ギニア 7.9% 8.1%
6 ガボン 7.2% 7.8%
7 ベニン 5.0% 6.1%
8 リベリア 3.4% 2.8%
9 ガーナ 3.4% 4.2%
10 ガンビア 3.3% 4.8%
その他 8.7% 12.1%

報告書の付属書には、アフリカの主要輸出国別情報が記載されている。ガボン、コンゴ共和国、赤道ギニア、カメルーン、モザンビーク、リベリア、コートジボワール、ガーナ、ナイジェリア、ベニン、トーゴ、南アフリカの12カ国である。ただし情報はリスク情報ではなく、輸出の傾向についてである。

    [8]Sun, Xuifang(2014年)『Forest Products Trade between China and Africa: An Analysis of Import and Export Statistics(中国-アフリカ間の森林製品貿易:輸出入統計分析)』(フォレスト・トレンズ発行)

木材の合法性確認(DD)において留意すべき点

本報告書は若干古いものであり、現在の状況を正確に反映しているとは言えないが、一定の参考にはなる。特に、輸出の傾向が常時変わるという点は注目に値することであり、アフリカに関してはより頻繁な情報更新が必要である可能性があることがわかる。この報告書自体には各国のリスク情報はないが、CPI(汚職腐敗指数)などのツールを見ても、一般的にアフリカ諸国からの木材については、リスクは非常に高いとされ、入念なデューデリジェンスが必要である。中国で加工された製品の一部は日本へ入ってくることは言うまでもないが、他の原産国と同じく多くの場合中国国内で原産国はわからなくなってしまうため、信頼できるデューデリジェンスシステムを持つサプライヤーとの関係構築・情報交換が必要である。アフリカでは、以前に紹介したグローバル・ウィットネスのリベリアから中国への報告書 が最新のものの一つであり、リスクの高さをよく表しておりアフリカ材のリスクの例として参考となる。




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