ENGLISH | 日本語
クリーンウッド法に対応する木材DDのための実践情報
> 国別リスク情報 > マレーシア・サラワク州

マレーシア・サラワク州

2017.12 掲載

マレーシア・サラワク州は、世界でも最も森林減少率が 高い地域の一つであり、残る原生林は5%以下である。ここは長い間にわたり多くのNGOが伐採会社の違法操業と人権侵害を指摘してきた地域であり、木材の違法リスクが非常に高い。中でも人権侵害については違法伐採による先住民の権利の侵害が、マレーシアの国家人権委員会(SUHAKAM)によって指摘されている。サラワク州における先住民の土地への慣習権(NCR)はマレーシア憲法により保証され、州の土地法に組み込まれている。さらにこれらの権利は土地への慣習兼を主張し先住民族がサラワク各地で起こしている裁判においても認められているものである。しかしサラワク州政府は依然として政策にそれを反映しておらず、人権リスクが非常に高い地域としての代表例である。

木材調達リスクに関する報告書

日本は長い期間にわたり最大の輸出相手であり、1990年以来、サラワク州からの木材の1/3が日本へ輸出されている。最も多いのが合板であり、毎年1億枚以上が日本へ輸出され、その多くは使い捨てのコンクリート型枠や住宅の床材などに使われている。2015年には日本に流通する合板の1/4がサラワク州から輸入されたものだった。

サラワク州産の全木材の約半分は違法であるという国連の報告もある(国連薬物・犯罪事務所)。サラワク州の「ビッグ6」と呼ばれる6つの大手伐採会社(サムリン社、シンヤン社、リンブナン・ヒジャウ社、タ・アン社、WTK社、KTS社)が保有する伐採許可に対し、前州首席大臣であるタイブ氏が賄賂受け取っていることが調査により明らかになっている。また度重なる違法伐採により、2010年以降ノルウェー政府はサムリン社、タ・アン社、WTK社からの投資を撤回している。後続のアデナン氏[1]は森林セクターの汚職と違法伐採を認め対策の必要性を発表している。

多くの企業がサラワク州政府の承認を合法性の根拠としており、日本の対応の甘さがわかる。本報告書ではサラワク州産の合板の大半を輸入している7つの商社(伊藤忠、双日、住友林業、ジャパン建材、丸紅[2]、三井住商建材、トーヨーマテリア)を対象に行ったアンケート調査と公開情報を基にした追加的調査の結果を記載している。以下はその中の数点である:
  • - 全7社が違法伐採を行っている伐採会社と取引している
  • - 全7社が慣習的な土地への権利を侵害する伐採会社と取引している
  • - 全7社が保護価値の高い熱帯林で伐採を行っている伐採会社と取引している

また報告書では各社の調達方針や調査結果から7社の評価を行っている。

    [1]2017年に死去。
    [2]2017年1月1日より三井住商建材と丸紅建材は合併

サラワク州の伐採会社シンヤン社による社会・環境破壊を伴った違法伐採についての事例から、2020年のオリンピックに向けて合法かつ持続可能な木材の推進を提言する報告書。

サラワク州の木材がいかに日本市場との結びつきが強いかを詳細に示す報告書。コンクリート型枠として使用されるサラワク材を主に輸入する双日、伊藤忠商事、丸紅、住友林業、住友商事、三井物産など日本の商社が、同地域において深刻な人権侵害と環境破壊に加担していることを指摘。サムリン社及びシンヤン社による違法伐採が行われる地区も詳細に示している。

伊藤忠建材、三井住商建材 、双日建材、丸紅建材、トーヨーマテリア、住友林業など輸入業者と、大建工業、永大産業、パナソニック、ノダ、朝日ウッドテック、ウッドワン、ジャパン建材、ナイス、ジューテックなどのフローリング製造業者や建材会社を含む67の企業に行ったアンケート結果をまとめたもの。回答を拒否した企業をすべてリストアップし、回答のあった各企業の調達方針を環境社会面から項目別に評価している。

サラワク州における違法伐採と人権侵害についての詳細な報告書。特に先住民族の権利の関連法規や実際の判例を詳細に説明し、現在サラワク州で行われている伐採の人権リスクを明示。日本の商社や大手建設会社によるサラワク材の使用状況と照らし合わせ、国際ツール「国連ビジネスと人権に関する指導原則」や欧米規制と比較した遅れを指摘している。

サラワク州からの木材の合法性確認(DD)において留意すべき点

現在クリーンウッドナビには、伐採から第三者の権利まで6項目にわたりマレーシアにおける関連法規の詳細なリストとそれぞれの規則に準拠していることを証明するかなりの数の文書の例が記載されている。それらの統括システムとしてサラワク州木材合法性確認システム(STLVS:Sarawak Timber Legality Verification System)があるが、このシステムは問題があるとされている森林局や企業も運営に関わっている。

ナビには、輸出木材の合法性証明が輸出申告書への州森林局による押印と担当職員による署名が合法性の確認に利用できるという記述があるが、これだけでは明らかに不十分である。例えば2015年の当時の州首席大臣による、森林局が違法伐採を知っていて対応を怠っているという発言からも明らかな通り、このシステムは根本的に機能していない。

すでに紹介した通りサラワクにおける違法伐採と関連する人権侵害についてのおびただしい数の報告書からも、この押印と署名は意味をなさないことは明らかであり、特に環境社会リスクのある木材は調達しないという方針を掲げている企業にとっては、現在のところサラワク材は避けるべき木材である。それでも敢えて輸入しようとする企業はかなり入念なDDとそれに基づく説明責任を果たす必要がある。加えて、DDの結果は自己責任であり、世界各地で多くのNGOが注目するサラワク材を調達しその違法性が発覚した場合の社会的コストは各企業が負わなければならないことを十分に認識しておく必要があることを明記しておく。




2009 FAIRWOOD PARTNERS All Rights Reserved.