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コラム:ロシア 高級樹種資源開発のリスク評価の試み

ロシア極東においてタモ、ナラ、チョウセンゴヨウなど高級樹種資源への開発圧力が高まっています。これらの樹種は、多様な動植物を育む水辺広葉樹林や広混交林の主要な構成樹種であり環境保全的に重要である一方、その加工生産や木材輸出は、重要な地域経済を支える産業であり、持続的な資源利用も求められています。

このような状況において、高級樹趣資源がどのような場所で開発される危険性(開発リスク)が高いかや、開発による各種の影響(開発影響リスク)の大きさを 実態に即して評価することは、森林資源の保全指針を示す上で有効と考えられます。そこで、現地調査や文献調査の結果に基づいてリスク評価モデルを作り、あわせて現地で収集したGIS(地理情報システム)データを用いてリスクマップを試作しました(図.1)。


図.1 リスク評価の手順


1. 開発リスクの評価
高級樹種資源の開発は、該当樹種の資源量の豊富さ、法規制による伐採制限の有無や程度、伐採権の設定状況などと関係した開発の容易さ、アクセスや流通・加工施設までのコストなどの要因が関係して拡大していると考えられていました。そこで、これらを考慮した3種類のモデルを作り、樹種別森林分布図、森林法規制図、伐採権配置図、鉄道・道路網地図といった既存のGISデータを用いて旧営林署管轄区画を単位としたリスクマップを試作しました。 「資源量モデル」は高級樹種の資源量を指標とし、「開発適性モデル」では資源量の多さプラス伐採実施の容易さの二つの因子から伐採適正を指標とし3段階でリスクを評価し図化しました。また、「経済性モデル」では各地点の開発リスクは、高級樹種の資源量が多いほど、需要の大きな輸送ポイントに近いほど高まると想定し、需要量と輸送コストを加味して、各輸送ポイントに対するリスク値を計算しその合計値を3段階評価し図化しました。



2. 開発影響リスクの評価
高級材資源の開発は、沿海地方特有の動植物生息環境や生態系の破壊、生態系の脆弱性による大きなダメージを与えることが危惧されています。そこで、保全価値の高い森林の多さを指標とする「重要度モデル」と、希少動植物の生息状況や固有生態系の分布、生態系の脆弱性の程度などを考慮した「脆弱性モデル」を作成し、既存のGISデータを用いて、開発リスク同様に旧営林署管轄区画を単位として開発影響リスクを3段階で評価し、リスクマップを試作しました。

その結果、両方のモデルともに開発影響の大きい場所として、ロシンスキー営林署管轄区など北部の地域が抽出されました(図.2)。これらの場所は、開発リスクも高いと評価されていることから、今後、高級材樹種の開発が、まだ森林開発が進んでいない北部地域で自然環境に大きな負荷をかけながら進んでいく危険性を示唆しています。なお、ここに示した分析は、ごく試行的なものであり,使用したGISデータ,評価のロジック,解析精度などに改良が必要です。また,評価単位も,担当区(レスニーチェストボ)程度のサイズが沿海地方の森林管理や利用の実態などから適当と考えられます。


図.2 沿海地方の高級樹種資源の開発リスク(上左;開発適性モデル、上右;経済性モデル)および開発影響リスク(下左;重要度モデル、下右;脆弱性モデル)に関する試行的評価結果。シェードが高リスクと判定された地域。

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