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2.中国の森林資源管理と木材調達政策

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           中国国家林業局国際林業協力センター副主任 : 蘇明(ス・ミン)

 森林問題は今日の国際社会における重大な戦略問題である。森林は陸地生態系の中心として、地球の陸地面積の30%を占め、生態系のバランスを維持する重要な役割を果たし、人類の生存と発展の基礎となるものである

 1992年に開かれた国連環境開発会議と2002年の国連持続可能な開発に関する世界首脳会議において森林問題は議題の一つとなり、多くの時間が議論に費やされた。ここ数年、森林の機能に関する認識が高まるにつれて、国際社会および各国政府は森林と林産品の監督・管理を強化し、世界レベルでの森林の持続可能な開発の実現を追求している。中国は林業大国であり、森林面積は世界第5位、蓄積量は第6位。とくに世界貿易機関   (WTO)への加盟以来、林産品の輸出入は大幅に増え、世界の林産品貿易チェーンの中枢となりつつある。

 中国は世界最大の発展途上国であり、責任感を持つ国家でもある。中国の発展は世界に依存しながら、世界の 発展に貢献する。そして地球の生態系バランスを守るという義務を果たすため、政府は資金、技術共に厳しい状況の下、相次いで「三北防護林」(注1)「退耕還林」(注2)「天然林保護」(注3)等の大型生態プロジェクトを実施し、 国内林業の発展を大きく加速しようとしている。
 現在、全国の森林面積は1万7,491万ha、被覆率は1949年の建国直後の8.6%から18.21%に高まった。人工林の面積は5,326万haで世界トップである。全国の立木の総蓄積量は117億8,500万m3に達し、長い間減少し続けていた状況が一転、面積、蓄積共に増加している。国内林業の発展は世界の森林面積増加の原動力となり、世界の生態系保護に大きく貢献している。

二重システムにより持続可能な林業の発展を目指す
 地球は人類共通の故郷であり、世界的な危機の解決は各国共通の責任と義務である。中国政府は「生態整備を主とする林業の持続可能な発展の道」を確立し、国際社会と連携して違法伐採および違法な木材貿易の取り締まりに積極的に取り組んでいる。現在、中国の森林資源管理と木材調達は、合法性と持続可能性という異なる要求に基づき、法律の監督・管理を主な手段とし、市場メカニズムの活用を補助的な手段とする二重システムにより実施されている。

 国内の木材および木製品の合法性を確保し、森林資源を保護し、違法な伐採と加工を抑制するため、政府は「森林法」と「森林法実施条例」を核とする法規システムを整備した。以下の二つのシステムが含まれる。

 (1)
 森林伐採管理システム:「森林法」第29条及び第30条では、「国は年間伐採量を厳しく規制する」「国は年間木材生産計画を策定し、年間
 基準伐採量を上回ってはならない」と規定している。さらに、木材伐採には伐採許可証の申請が義務づけられている。
 (2)
  木材加工輸送管理システム:「森林法」第35条および第37条では、「森林区域から木材を搬出する際は必ず林業主管部門の輸送証明書を
  有していなければならない」「木材輸送証明書を所持しない場合、いかなる組織・個人も輸送を引き受けてはならない」と規定している。さらに
 「森林法実施条例」では、森林区域での木材加工には県レベル以上の人民政府の林業主管部門による許可が必要とされ、伐採許可証ある
  いはその他の合法証明のない木材はいかなる組織・個人も購入してはならないと定めている。 ガイドラインの策定には二つのポイントを設け
  ました。

 今のところ、中国には林産品に絞った政府調達政策がなく、林産品の購入は他の公共製品と同様に、2003年に発効した政府調達法に基づいている。政府調達法、クリーン生産促進法、環境マーク製品政府購入リスト等の規定では「政府調達は国家の経済および社会発展のための政策目標実現の一助となり」「省エネルギー、水資源の節約、廃棄物の再生利用等に有効な環境・資源保護製品を優先すべき」としている。このため、中国政府は行政法規の監督・管理を強化し、以下のような市場手段により持続可能な木材および木製品の調達の実現を積極的に図り、国内の森林の持続可能な経営を推進している。
 (1) 森林認証
  2007年10月1日、中国森林認証が正式に始動した。中国森林認証は森林経営と生産・流通・加工過程の管理の二つがあり、世界でもっとも広く採用されている森林管理協議会(FSC)の基準と指標を参考に策定された。九つの基準と100余りの指標を含み、幅広い内容をカバーしている。森林認証以外に、ISO14000や中国環境保護マーク(CEC)、中国建材認証(CTC)等の認証マークを使う企業もあるが、これらの認証は環境配慮のみを強調し、木材の出所の「合法性」と「持続可能性」は確保しないため、森林認証とは大きく異なる。  
 (2) 業界認定  
  とくに木材加工産業の関連団体が一定の規約・規範により独自に行う認定方法。中国林業産業協会、中国木材流通協会、中国林産工業協会等はいずれも特定の基準や手法を持っており、その認定方法は国内で広く認められている。現在、中国政府はEUと相互に認める業界認定基準と企業リストについて協議中である。
 (3)企業の自主的取り組み
  一部の大型(国有)森林工業企業は、造林営林、森林伐採、木材加工、製品販売のすべてが生産プロセスに含まれ、管理システムは厳しく高く信用されている。企業は関連業界の主管部門や関連団体の審査認定を経た上で「担保(承諾)書」という形で社会あるいは消費者に対 
し保証する。2004年3月、中国と世界自然保護基金(WWF)は共同で中国森林貿易ネットワーク(CFTN)を香港でスタートし、数十社の企業の参加を招致した。  

  中国共産党中央・国務院の「林業発展の加速に関する決定」では「積極的に森林認証を広め、迅速に国際社会に追いつく」ことが求められている。中国林業は伝統的な経営モデルから現代的な経営モデルに転換し、森林の持続可能な経営はすでに林業の発展目標として国家政策に組み込まれている。森林認証は全国21の省区で試験的に実施され、全国森林認証センターが2008年上半期から正式に始動することになっている。。

国際社会との連携を強化し世界の森林問題の解決を  
  経済のグローバル化に伴い、世界の林産品貿易はすでに各国の林業生産のグローバル化を実現させた。森林資源の保護と発展は世界各国共通の責任である。中国政府は国内の森林法規のガバナンス強化、違法伐採の取り締まり、森林認証の推進、企業の自主的取り組みを奨励すると同時に 、さまざまな施策を通して二国間、多国間の協力を強化し、違法伐採の多国間貿易と闘っている。  

  東アジアおよび欧州・北アジアにおける森林法の施行およびガバナンスに関する会議に出席し、2007年9月にはEU等と共同で同会議を北京で開催した。林産品の輸出入に関する厳しい基準に加えて、「中国企業の海外における持続可能な森林育成ガイドライン」を制定し、中国企業の海外での森林育成事業に業界基準と自主的取り組みの根拠を示した。今後、中国政府は日本政府を含む国際社会との協力を引き続き強化し、世界の森林の持続可能な発展の促進に新たに貢献していく。   

  環境と発展の問題について人類が解決すべき任務は重く、道のりは遠く険しい。しかし、世界各国が互いに助け合う精神に基づいて協力し、積極的に行動すれば、経済発展と共に必ず地球環境の保護は実現できると確信している。中国政府と中国国民はその実現を目指し、積極的に貢献していきたいと望んでいる。
 
注1 1978年に始まった巨大生態系整備プロジェクト。生態系環境が脆弱で、経済が立ち遅れている東北、華北、西北の各地区で大規模な造林が行われ、2003年末にはギネスブック本部より「世界最大の植樹造林プロジェクト」に認定された。実施計画期間は2050年まで。
注2 1998年に始まった「耕地に木を植える」政策  
注3 1999年から全国全ての天然林を禁伐するというもの
   
(財)地球・人間環境フォーラム発行『グローバルネット』2008年2月号(207号)より転載
            http://www.gef.or.jp/activity/pubication/globalnet/index.html
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