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《CSR調達セミナー》
リスクある木材を避ける
―欧州の違法伐採対策とサプライチェーン管理-

2014.12.12掲載

 2014年11月19日に開催された上記セミナーのうち、ピーター・フェイブルグ氏(NEPCon CEO)の講演内容の要旨を紹介します。

3)デューデリジェンスの実施~EUTRの事例から
(ピーター・フェイブルグ/NEPCon CEO)

NEPCon(ネプコン)の事務局長ピーター・ファイルブルク氏はその豊富な経験を交えながら、木材調達におけるデューデリジェンスの方法について説明しました。NEPConは、合法で持続可能な森林管理に取り組む環境NGOです。

 

EU市場の違法木材流通を規制する「欧州木材規則(EUTR)」によれば、違法伐採とは伐採地の法律に違反した伐採のことです。EUTRは、木材を輸入する者に対して、1)違法な木材や木製品を出荷しないこと、2)デューデリジェンスを実地すること、そして3)そのデューデリジェンスを維持し定期的に評価することを義務付けています。

 

それでは、どうすればデューデリジェンスを順守することができるのでしょうか? 成功のカギは、「サプライチェーンマネジメント」です。違法な商品は、複雑なサプライチェーンを通じて、多様なステークホルダーを介しながらEUの市場に流れてきます。そのため、デューデリジェンスの実行のためには、このサプライチェーンを管理することが非常に肝要になります。

この「サプライチェーンマネジメント」は、①「サプライチェーンについての情報収集」、②「リスクの査定・評価」、そして③「特定されたリスクの緩和」の3ステップに分けることができます。

 

ステップ①「サプライチェーンについての情報収集」
EU市場の商品が合法であることを判断するにあたって、まず「情報の一貫性」が重要になります。合法性の証拠となる関連書類や記録の情報が食い違っていれば、違法な伐採が隠ぺいされている可能性があるためです。また、伐採地で汚職が横行していないかどうか調べることも大切です。汚職の多い国ではサインや押印がお金で手に入ってしまうので、適切な書類がそろっていても合法性は確認できません。

 

ステップ②「リスクの査定・評価」
情報を集めたら、その中にどのようなリスクが潜んでいるか評価します。そのとき、3種類のリスクに着目する方法があります。
リスク1: 伐採地において違法に伐採されるリスク
リスク2: サプライチェーンにおいて違法に取引・輸送されるリスク
リスク3: サプライチェーンにおいて違法な木材が混入するリスク

 

リスク評価の際に、例えば以下のような表は有用です。縦軸が汚職の程度を、横軸が木材の価値を示しています。価値の低い木材を汚職度の低い国から輸入するときはリスクが小さく、逆に、価値の高い木材を汚職度の高い国から輸入するときはリスクが大きくなります。


この表の左上の「小リスク」の場合は特に対策をする必要はありませんが、「中リスク」はリスク緩和策が必要になります。そして右下の「高リスク」の場合、他の伐採地に変更するか、現地に監督者を送る必要があります。


腐敗度を判断する際には、汚職の終焉をめざす国際NGO、Transparency internationalによる「腐敗認知指数」が参考になります。

このとき、残念ながら、政府の発行する輸出許可証は合法性の証明になりません。たとえばインドネシアのSVLK(木材合法性証明制度)はEUに認められていないのに偽造証明書が出されて問題になりました。マレーシアのTLAS(木材合法性基準)では、なぜか中央アフリカ共和国の木材が証明されているという事態すらありました。 NEPConは森林合法性評価を行ったり、国別評価プロファイルを作ったりして、企業が簡単に情報を手に入れられるように取り組んでいます。

 

ステップ③「特定されたリスクの緩和」

リスクが特定されたら、そのリスクを緩和しなければ、木材をEU市場に流通させることができません。どうすればリスク緩和は可能なのでしょうか?

リスク緩和の選択肢としては、第一に、書類を細かく見て問題があれば受け取らないことです。その上で、サプライヤーと協力して緩和策に合意し、NGOや管轄機関などのステークホルダーとコンサルテーションを行うという方法があります。または、FSC(Forest Stewardship Council)に認証されたものを購入する方法もあります。ただし、FSC認証を受けたと宣伝しながらFSCに何の関係もない商品もあるため、その業者や商品がFSCの認証データベースに入っているか確認することが必要です。さらに、第3者認証を依頼して、伐採地までたどりつくような確認システムを使って監査を実施する方法もあります。


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