日本に実効性ある違法伐採対策法の導入を
~無責任な木材消費国との批判を受けないために~
私たちは、昨年春以来進んでいる、日本における違法伐採対策強化のための新たな法規制の導入に向けた国会議員による議論の進展を歓迎し、その動きを注視してきました。
違法伐採問題は木材生産国・消費国の双方が取り組むべき問題であることが、これまでのG7/G8サミット等で繰り返し合意されてきました。先進国を中心に木材輸入量の多い消費国において違法伐採木材の流通を規制することの重要性が認識されるようになり、2008年以降、米国、欧州連合(EU)、オーストラリアなど他の主要な木材消費国が違法伐採木材の取引を禁じ、民間事業者に対してデューデリジェンスを義務づける法制度を導入しています。このような状況の中、同様の法制度を持たない国は先進7カ国の中で日本だけとなっています。
世界の木材市場の20~50%を占め、年間300億米ドルに上るとされる違法伐採木材・木材製品は1、森林減少・劣化を引き起こし、生物多様性の損失や気候変動の促進につながるだけでなく、森林に依存して暮らす先住民族や地域住民の生活や文化を破壊し、汚職や不正の温床となり、熱帯林が残る途上国の持続可能な発展を阻害することが指摘されています。さらに、安価な違法伐採木材の流入により日本国内の森林・林業に悪影響を与えています。
日本の木材市場に違法伐採木材が流入することを防ぐためには、事業者自らが取り扱う木材について情報収集を行い、違法リスクに関する評価とそのリスクの低減措置からなる「合法性に関する念入りな確認(デューデリジェンス)」を行うことが不可欠です。その実施を確実なものとするためには、欧米等で実施されている制度と同様に、木材・木材製品を取り扱う事業者に念入りな確認を義務付けし、それに対する違反行為に対して罰則を科す仕組みでなければ、効果的に違法伐採木材の流入を防ぐことはできません。
念入りな確認を義務付けている欧米では、執行事例が増えるにつれ、その効果が表れています。1,300万米ドルという巨額の罰金事例が出た米国では、リスクの高い国からの輸入木材の価格が上昇し、輸入量の8割が減少したという分析があります2。EUにおいても、市場行動パターンが変化し、違法伐採木材のないサプライチェーンが着実に確立されていることが報告されています3。
上記の要素が含まれない法制度が日本で導入されることになれば、今年5月末に開催されるG7伊勢志摩サミットの議長国である日本に対して、「"無責任"な木材調達国」との批判は避けられません。今こそ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックとその先の、日本と世界の森林保全と持続可能な森林経営の実現に向けた基盤として、責任あるビジネスを後押しすることができる、実効性ある違法伐採対策法の導入が求められています。
2016年3月31日
- Nellemann, C., INTERPOL Environmental Crime Programme (eds). 2012. Green Carbon, Black Trade: Illegal Logging, Tax Fraud and Laundering in the Worlds Tropical Forests. A Rapid Response Assessment.United Nations Environment Programme, GRIDArendal.www.grida.no
- Prestemon, Jeffrey P.. 2015. The impacts of the Lacey Act Amendment of 2008 on US hardwood lumber and plywood imports.
- COMMISSION STAFF WORKING DOCUMENT Evaluation of Regulation (EU) No 995/2010 of the European Parliament and of the Council of 20 October 2010 laying down the obligations of operators who place timber and timber products on the market (the EU Timber Regulation) Accompanying the document (http://ec.europa.eu/environment/forests/eutr_report.htm)
賛同者
(団体、五十音順)
ウータン・森と生活を考える会、国際環境NGO FoE Japan、認定NPO法人環境市民、グリーン購入ネットワーク(GPN)、国際環境NGOグリーンピース・ジャパン、サラワク・キャンペーン委員会(SCC)、WWFジャパン、地球・人間環境フォーラム、認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金(JTEF)、トラフィックイーストアジアジャパン、日本インドネシアNGOネットワーク、NPO法人日本森林管理協議会(FSCジャパン)、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)、NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク、メコン・ウォッチ、一般社団法人more trees、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)日本代表部
(個人、五十音順)
足立直樹(サステナビリティ・プランナー)、内田生美、鹿住貴之(JUON(樹恩)NETWORK事務局長)、後藤敏彦(環境監査研究会代表幹事)、相楽美穂、島本美保子(法政大学社会学部教授)、庄野眞一郎、原田一宏、百村帝彦、山口真奈美(株式会社FEM代表取締役)、横田康裕
※PDF版のリリース
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地球・人間環境フォーラム(担当:飯沼、坂本)TEL:03-5825-9735
国際環境NGO FoE Japan(担当:三柴、岸田)TEL:03-6909-5983