<リリース>
日本の新たな違法伐採対策法について
国際環境NGO FoE Japan/地球・人間環境フォーラム
5月末に開催されるG7伊勢志摩サミットに向け、超党派の議員立法にて検討が行われている違法伐採対策に関する新しい法律案(※)は、その名称や目的からもわかるとおり、合法木材の利用を促進する法律であり、違法伐採木材の取扱いや流通等を規制する法律ではありません。この点が、欧米等で先行して導入されている違法伐採対策法との大きな違いです。欧米豪では、違法伐採木材の輸入を禁じ、違法伐採木材を使用しないための措置であるデューデリジェンス(DD)を講じることを基本としています(欧豪は義務、米国は任意ですがDDをしていない場合には罰則が厳重)。一方、日本の新制度では、違法伐採木材の取引禁止は定められておらず、DDの実施も任意となっています。
日本の新法において提案されている任意の登録制度では、違法伐採の流入を完全に止めることはできません。政府の定める基準を満たしたDDを行う企業を登録機関が審査しますが、どのような基準で登録を審査するのかは今後決まっていきます。また、登録しない事業者は、違法材を購入していても通常通り事業を続けることができます。このことは登録事業者として責任あるビジネスを行おうとしている企業に対して、労力や価格の点で不公平な競争環境を生み出す可能性が高いことを意味します。
このような法的枠組みのもとでは、国内市場への違法伐採木材の流入を防ぐ効果を大きく期待することは困難と言わざるを得ません。
一方、上記の限界があるとはいえ、新法の持ちうる力を施行時に最大限発揮させることは重要であり、今後定められていく主務省令、基本方針の内容、さらに施行後の運用のあり方について、以下の点を注視する必要があります。
1.
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主務省令で定められる「木材関連事業者の判断の基準となるべき事項」(DDを行う際の判断基準となる要素)において、合法性の定義が広範に定められること。具体的には①伐採に関する権利②伐採に関する税金等の支払い③生物多様性や自然環境の保全④土地や林産物の利用等に関する第三者の権利⑤貿易及び関税、の5つの分野が含まれること。 |
2.
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「木材関連事業者の判断の基準となるべき事項」において、「木材関連事業者が合法伐採木材等の利用を確保するための措置」(DD)の内容が厳格に定められること。特に、伐採国政府が発行した合法性証明書類の取得のみで終わらず、事業者は証明書類の根拠とされた事実に関する情報を得て、合法性リスクの評価を行い、そのリスクを最小化すべき旨を明記すること。 |
3.
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「木材関連事業者の判断の基準となるべき事項」が、伐採国における違法伐採の状況、伐採国政府のガバナンスの状況等に即応できるよう、できる限り機動的に改訂されること。 |
4.
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「登録実施機関」の独立性を確保するため、法定の欠格事由を厳格に審査するとともに、公正な登録審査の安定を保障するため、登録申請事業者の支払う料金に依存しない財政基盤確保のあり方について検討すること。 |
5.
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合法伐採木材等の利用の促進という目的が達成されているかどうかを、伐採国における違法伐採の状況、伐採国政府のガバナンスの状況等を踏まえつつ、常時モニタリングし、その結果にもとづいて運用、主務省令、さらに法律そのもののあり方を再検討すること。 |
合法木材の定義を原産国の森林に関連する法令のみに限定し、書類ベースでの確認で十分とされている現行の制度から大きく変わらなければ、日本市場から違法リスクの高い木材を排除することはできないでしょう。違法伐採木材の国内での流通を撲滅し、日本が真に責任ある木材消費国となるためには、新法の効果を最大化すること、そしてもし十分な効果の確認ができない場合には、DDの義務化を含むさらなる取り組みを進めていくことが求められます。
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