「熱帯合法性検証木材/森林認証材の利用拡大ワークショップ~熱帯林の保全と適正な利用の両立について考える~」開催報告
2008.8.1
2008年7月29日、30日の2日間、東京・日仏会館、及び大阪・国際交流センターにて「熱帯合法性検証木材/森林認証材の利用拡大ワークショップ ~熱帯林の保全と適正な利用の両立について考える~」を開催しました。
本ワークショップでは、各関連企業の取組みとフェアウッド ( 環境・社会に配慮された木材 ) 製品の市場拡大を加速するために、生産国であるインドネシア・マレーシアと需要国・日本の双方から多様な利害関係者を交えて、取組みの進捗や課題を共有し、持続可能な熱帯林利用の実現に向けて、各自が今何をすべきなのかを議論しました。
各報告のスライド資料は以下プログラムからダウンロードできます。
第1部の冒頭に、国際環境NGO FoE Japanの三柴淳一からフェアウッド・キャンペーンで実施中の「熱帯合法性検証木材/森林認証材の利用普及促進プロジェクト」の概要・取り組みを紹介しました。続いて、本プロジェクトの調査成果の一部である生産国の環境・社会リスク調査報告として、インドネシアの森林保全NGO、フォレスト・ウォッチ・インドネシアFarid Wajdi氏、マレーシアの資源環境コンサルタントRESCUのLim Tze Tshen氏より、両国の森林減少・劣化状況のマップベース分析結果、インドネシアについては政府の木材調達合法性検証システムTLAS(Timber Legality Assuarance System)の体制や実施状況の報告を、マレーシアについては各州の検証システムの評価や国際的・政府間の合法検証・認証に対するマレーシアの関与などを報告いただき、マップベースリスク評価の活用方法を三柴がまとめて報告しました。
第2部は、「持続可能な森林管理・経営に向けて~パネル(合単板)利用の側面から~」と題し、合法材・認証材利用を積極的に実施している需要者と供給者、さらに両者の架け橋を行うNGOの取り組みの報告をいただき、それらを踏まえてパネルディスカッションを行いました。
前半部の報告では、まず、需要者として積水ハウスの佐々木正顕氏より、木材調達ガイドラインに基づく、合法性・持続可能性確保・向上の取り組みを、供給者側として、インドネシア スマリンド社のAstrik Mursatio Budi氏より、FSC認証への取り組みと保全型林業が地球温暖化の解決策であるとする視点での環境ソリューションの実践を、マレーシア ヤヤサン・サバ森林部門Daud Tampokong氏より、欧州各国企業・基金との森林保全型林業実践プロジェクトの紹介、無線IDタグを利用した合法性証明の実施など実践を中心とした報告をいただきました。最後に、責任ある森林経営とビジネスをつなぐ会員制NPO, TFT(Tropical Forest Trust)のインドネシア支部より、Hartono Adi Prabowo氏は、供給者側にはFSC取得までの段階的アプローチを利用したサポート、需要者側にはサプライチェーンの紹介を行うなど、TFT独自の取り組みを紹介しました。
ディスカッションでは、法規制自体の矛盾・法執行の管理上の問題などからインドネシアでは合法性の確保がネックになっていることや、グリーン製品への市場の反応の鈍さが生産国から問題点として上がり、需要国側では、得に価格プレミアに関しては、消費者の感覚がグリーンであることが、差別化の要素になりえる状況に変わってきていること、また、そういった状況を促進するために、企業として努力を続けていく必要があるなどの発言がみられました。また、生産者側への要望として、認証材などの安定供給の確保が挙げられました。
第3部は家具、デッキ材利用の側面から、コミュニティレベルでの森林経営の取り組みをテーマとし、熱帯諸国のコミュニティ林の認証と、認証製品の市場開発のケーススタディを通じて課題を分析、提案を、地球環境戦略研究機関(IGES)Henry Scheyvens氏、ジャワの環境NGOARuPAのRonald Muh Ferdaus氏、前出TFTのHartono Adi Prabowoより報告いただき、コミュニティ林業と家具材をテーマに再度、ディスカッションの場をもうけました。
ディスカッションでは、家具、デッキ材を触れる機会が多く、より身近な南洋材でありながら、複雑なサプライチェーンを持ち、環境社会的にハイリスクなものが多い、中小企業による取り扱いが多いことなどを特徴付けた上で、それらの特徴がコミュニティ林業の生産規模に合っているとし、そこから生産される木材を直接取引し、家具・デッキ材として広く普及していくことは可能かどうか、議論をしました。
詳しい講演録は、地球・人間環境フォーラム発行『グローバルネット』2008年9月号(9月15日発行)及び当WEBサイトに掲載される予定です。
プログラム [プログラムダウンロード:230KB] | |
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開会 | 開会挨拶 Amha BinBuang(国際熱帯木材機関事務局次長) |
第1部 | 生産国の環境・社会リスク評価報告 (10:30~11:50) (1)日本における認証/合法検証された熱帯木材の需要開拓プロジェクトについて 三柴淳一(FoE Japan 森林担当) [資料PDFダウンロード:879KB] (2)環境&社会リスク調査報告 インドネシア: Farid Wajdi氏(森林NGO Forest Watch Indonesia プロジェクトコーディネーター) [資料PDFダウンロード:172KB] マレーシア: Lim Tze Tshen氏(コンサルタント RESCU 研究員) [資料PDFダウンロード:1.61MB] マップベース評価の使い方: 三柴淳一(FoE Japan 森林担当) [資料PDFダウンロード:291KB] |
昼食休憩(11:50~13:10) | |
第2部 | 持続可能な森林管理・経営に向けて~パネル(合単板)利用の側面から (13:10~15:35) (1)住宅メーカーの調達方針策定に伴う調達木材の見直し 佐々木正顕氏(積水ハウス(株) 環境推進部企画グループ チーフ課長) [資料PDFダウンロード:253KB] (2)森林認証取得による持続可能な森林経営へ Astrik Mursatio Budi氏(スマリンド社 副代表) [資料PDFダウンロード:5.44MB] (3)グリーン購入法に対応した合法木材供給体制 Daud Tampokong氏 (ヤヤサン・サバ社 森林部門グループゼネラルマネージャー) [資料PDFダウンロード:3.27MB] (4)段階的アプローチによる森林管理改善支援 Hartono Adi Prabowo氏(熱帯林トラスト(TFT)インドネシア 代表) [資料PDFダウンロード:6.71MB] (5)パネルディスカッション&フロアからの質問 [パネラー]: ・佐々木正顕氏(積水ハウス(株) 環境推進部企画グループ チーフ課長) ・本間健郎氏(住友林業(株) 山林環境本部 環境経営部 チームマネージャー) ・Astrik Mursatio Budi氏(スマリンド社 副代表) ・Daud Tampokong氏(ヤヤサン・サバ社 森林部門グループゼネラルマネージャー) ・Hartono Adi Prabowo氏(熱帯林トラスト(TFT)インドネシア 代表) [コーディネーター] 坂本有希((財)地球人間環境フォーラム 企画調査部次長) |
休憩(10分) | |
第3部 | コミュニティレベルでの森林経営の取り組み~家具・デッキ材利用の側面から (15:45~17:30) (1)コミュニティ森林の林産物認証~課題と展望 Henry Scheyvens氏((財)地球環境戦略研究機関 森林保全プロジェクト研究員) [資料PDFダウンロード:2.08MB] (2)グヌンキドゥルでの取組み紹介~LEI認証 Ronald Muh Ferdaus氏(環境NGO ARUPA 代表) [資料PDFダウンロード:83KB] (3)スラウェシでの取組み紹介~FSC認証 Hartono Adi Prabowo氏(熱帯林トラスト(TFT)インドネシア 代表) [資料PDFダウンロード:5.04MB] (4)パネルディスカッション&フロアからの質問 [パネラー]: ・大山典保氏(テラス社 代表取締役) ・Henry Scheyvens氏((財)地球環境戦略研究機関 森林保全プロジェクト研究員) ・Ronald Muh Ferdaus氏(環境NGO ARUPA 代表) ・Hartono Adi Prabowo氏(熱帯林トラスト(TFT)インドネシア 代表) ・Lim Tze Tshen氏(RESCU 研究員) [コーディネーター] 中澤健一(FoE Japan 理事) |
開催概要
●日時 2008年7月29日(東京)、31日(大阪) 10:30~17:30
●場所 東京:日仏会館 ホール (東京都渋谷区恵比寿3-9-25 Tel:03-5424-1141)
大阪:大阪国際交流センター 小ホール (大阪市天王寺区上本町8-2-6 Tel:06-6772-5931)
主催
国際環境NGO FoE Japan | 地球・人間環境フォーラム | 熱帯林行動ネットワーク(JATAN) |
共催
地球環境戦略研究機関(IGES)
後援
国際熱帯木材機関(ITTO)、林野庁、外務省、環境省、経済産業省
協力
全国天然木化粧合単板工業協同組合連合会、(社)全国木材組合連合会、(中)全国木材検査・研究協会、(社)日本家具工業連合会、(社)日本建設業団体連合会、日本合板工業組合連合会、(社)日本木造住宅産業協会、日本木材輸入協会
※ 本ワークショップは、国際熱帯木材機関(ITTO)及び(独)環境再生保全機構 地球環境基金の支援を受け開催いたしました。