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1.国産材を使うために必要なこと~住まいづくりの立場から~

株式会社コスモスイニシア 経営企画グループ 経営企画部
シチズンシップ推進課 リーダー 森永真由子

「国産材プロジェクト」をスタートした理由
(株)コスモスイニシアグループにおいて、CSRを推進する『シチズンシップ推進課』が発足し、『事業を通じた社会貢献』とは何か?を考え始めたのは、2007年7月のことでした。

経営陣とともに、われわれの会社が事業を通して社会のために為すべきことは何か?を1年かけて話し合い、その結実として『人々が夢を実現できる社会をつくる』というビジョンへと改訂し、その実現に不可欠な三つの究極目標を定めました。

『環境』~維持保全に留まらず、地球環境を蘇生する
『安全安心』~生活を楽しみ、安全で安心した健康的な暮らしを創造する
『一生涯』~現世代のみならず、三、四世代先の一生涯にこたえる

この究極目標の達成に向けた一歩として、環境共生住宅などの研究に着手しはじめました。
国産材の研究・活用プロジェクトも、『事業を通した社会貢献』の一環として始められました。数ある環境・社会問題の中で、「なぜ国産材なのか?」

それは、
① 日本・世界の環境問題に大きく関わること
② 自然素材を利用することで健康的な暮らしが望めること
③ 昔の住宅のように、永く使える素材を利用することで、その思い出や想いを次世代へ引き継ぐことができること

という、ビジョンに掲げた究極目標のいずれにも合致するものであったということにあります。最初のきっかけは、手入れされた山と、手入れされていない山の大きな違いを目の当たりにし、なんとかしなければならない、と強い危機感を覚えたことでした。

ご存じの方も多いと思いますが、日本の山林の多くは、木材を利用するために人の手によってつくられた、手入れを必要とする『人工林』です。しかしながら、住まいの建材や内装材、家具をはじめとする日本の商材に、輸入されたものが多く使わるようになってから、国産材の消費が激減しました。

国産材の消費量が減ったことによって山を育てるための手入れが不十分になり、土が痩せ、土砂崩れなどの問題も起こしています。しかも、かつては落ち葉が土に交じって腐葉土になり、そこに含まれるミネラルなどの栄養素が川に流れ、海を潤していましたが、その流れも途絶え、自然循環に悪影響を及ぼしているのです。海外では輸出のために違法伐採が行われているという事実もあります。こういった問題を解決するには、まず我々が国産材をうまく「使うこと」にあると考え、『使われる国産材』を目指した開発を始めました。

国産材が使われない理由
①コストが高い
②割れる、反れるなどの品質面が問題とされる、
という主に2点が挙げられます。

確かに、国産商材には品質が担保されていないものも多く、そういった商材が割れたり反れたりして使いづらい、という先入観を与えてしまっていることも事実です。また、海外の平地で育てられる木材とは異なり、急な山で育てられた木材は手入れにも、搬出にも手間がかかりますし、人件費もかかる。外材と同じ商流で仕入れれば当然高額になってしまいます。

適切に管理された森林の材を使うために

また、環境を守るという側面で期待される認証についても、日本の場合は、認証がとれているからといって、品質が担保されているわけではないこと。そもそも森林経営が厳しい中でコストがかかり価格を上げざるを得ないこと、という問題点もあげられます。

前述のコスト面と、品質面。また、それを担保しながらの開発が必要と判断して、コスト・環境の側面に関しては、認証などに頼らず、顔の見える関係で、産地直送で納品する。品質に関しては割れ、反りの原因になる「乾燥」に主眼をおいて材を開発することとしました。

国産無垢床材の品質を徹底的に洗い出す



今まで国産に限らず無垢材は「自然のもの」であるがゆえに、工業製品に行うような「品質試験」は行われてきませんでした。それが使用する側の不安をぬぐえない原因の一つであると考え、『自然のものだから割れたり反れたりするのは仕方がない』のではなく、『自然のものはこれくらい割れたり反れたりするのだ』という数値的な根拠が必要であるとし、開発した床材に工業製品と同じ試験を行いました。

その試験の中で、工業製品に比べ、圧倒的にもろいと思われていた無垢材ですが、材の種類、また自然塗装の有無によってはキャスターなどの小さな車の引きずりに対して、同じ程度の強度を持つものもあったり、日焼けに関しても、材によっては工業製品と同程度の日焼けしかしないものがあることがわかりました。

また、無垢材は夏には湿気を吸って膨張し、冬には水分を放出して縮む性質を持っているのですが、それがどの程度かを確かめるために2008年1月~2009年9月まで長期放置試験、というものを行い、実際の材料の伸び縮みを確認しました。
(下グラフ、資料①)

また、フェアウッドパートナーズにもご協力いただき、国産材に関するセミナーを開催し、実際に得られた結果などについてお客様にご意見をお伺いしたところ、事前にしっかりとした説明があれば、試験結果は住まい手の許容範囲にあることなどがわかりました。

資料①※2008年1月~2009年7月の長期放置試験結果です。

商品への導入について
今までトライアルとして、モデルルームでの外装材や家具、戸建のモデルハウスの2階の床材などへ導入を行ってきました。

それらの経験と、実験結果、お客様のご意見をもとに、賃貸住宅への導入、またダイニングテーブルなどの家具への導入、新築のお住まいに無垢材を選択できる仕組みづくりを行っていきたいと考えています。また今年度は昨年の「床」に続き「壁」の研究も行っていきたいと思っています。

開発を通じて思うこと
開発を通じての感想ですが、一番必要なことは、国産材を供給する山側の人々と住宅を供給する人々、そこに住む人々との『対話』であると思います。通常の商品開発では欠かせない、使う側が何を欲しているのかを伝えることが実はほとんど行われていないということがわかり、これでは「使われる国産無垢材」が少ないのも納得できることでした。フェアウッドパートナーズをはじめ、山と街をつなぐコーディネーターが増えることで、これから日本の山が元気になるのでは?と、ひそかに期待しています。

産業革命以降を人工化された社会とすると、人間が誕生してから今日まで、実に99.9%もの時間は自然界とともに暮らしていたことになり、必然的に自然対応型の身体ができていると言われています。国産材など自然素材と暮らす安心感、ぬくもりを健全に住まいの中に取り戻すことを目標に、これからも研究・開発を進めていこうと考えています。
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