ENGLISH | 日本語

企業セミナー:
木材サプライチェーンの違法リスクとデューデリジェンス

質問票への回答 ※セミナーでは対応できなかった質問票に回答しています。

Q1. サラワクの違法伐採について・・・年間の違法伐採の割合は?(材積又は面積)
A1. サラワク州内の生産林面積は770万ha(PFE、State Land)(SFC資料から)あり、そのうち森林認証取得面積は95342.1haです。サラワク材の合法性は極めて信頼性が低いため、仮に認証森林のみ合法性が確保されていると仮定すれば、面積ベースで99%は違法伐採だということもできます。
Q2. 原木から製品となる過程で流通、工場含め仮に5社の組織があった場合、
全ての組織でDDを(1→2→3→4→5)実施するのか?
A2. 自社の系列ということであれば最初に原木のリスクに関するDDをきちんと実施していれば、それ以降の川下の会社ではサプライチェーンに関するリスク(例:分別保管など)のDDを行えばよいと思います。全く別組織ということであれば、どの程度そのサプライヤーの体制や管理状況を信用しているかにもよると思われますが、最初は一度、すべての段階でDDを行うことが望ましいと思われます。その後、製品やサプライヤーに変更があるまでは、簡素化したチェックでよいと思います。もちろんこれは、サプライヤーが信頼できるかどうかということとも連動していますので、リスクが低いという根拠が示せるのであれば、すべての段階で簡素化したDDも考えられます(例:すべてFSCの認証材である、など)。
Q3. 日本ではFSC、PEFCとかの認証材がリクエストされるがEUTRでDDを実施して、お客に対し説得力がないのでは?
A3. EUTRの基準で実施をするということは、それよりも低い基準が設けられている日本の制度上求められる基準はクリアしているということになります。つまり、日本の基準はクリアしたうえで、それより高い基準でDDを行っているということになります。それに対してお客様がどう感じられるか、またどう感じてもらうかの説明は、それぞれの企業の姿勢ということになるかと思います。
Q4. EUTR、FSC等さまざまなDDの方法があるが、共通している所、それぞれのオリジナルの所をまとめて頂けると助かります。
A4. DDのレベルは、違法伐採の横行度合いやサプライチェーンの複雑さによって異なるため、その方法も状況によって異なります。違法伐採のリスクが高くなれば、より厳しい方法が必要になります。
EU木材規則(EUTR)や米国のレイシー法、オーストラリアの違法伐採禁止法(ILPA)は、いずれもDDが
1.情報収集(木材の原産地、樹種等)
2.リスク評価
3.リスク緩和
の3つのステップから成ると認識しています。EUTRやレイシー法、ILPAにおけるDDの手順の比較はこちらを参考にしてください。

EUTRでのDDは木材規則第6章及びEUTRガイダンス文書に記載されています。ILPAでのDDはこちら(regulation)に記載されています。米国ではDDを実施せずに違反が見つかった場合の罰則を厳しくすることで、DDの実施するよう企業に促しています。米国の法制度では、DDの手法の一般的な解説やガイダンスはありませんが、個別事例(ギブソン・ギター社、ランバーリクイデーターズ社)から、どのようなDDが求められるかを理解することできます。

FSCやPEFCなどの第三者による認証や合法性検証は、リスク評価・リスク緩和の手続きの役に立ちますが、自動的に合法性を証明するものではありません。企業には依然、リスクを評価し、その第三者によるシステムが合法性を十分保証するものかどうか検討する義務があります。EUTR、レイシー法、ILPAとFSCの関係についてこちら(FSC「違法伐採対策法が施行される国以外の FSC 認証取得者への影響」)を参照してください。
Q5. 日本で法律化された場合の経済への影響はどの様に想定されていますか?
A5. 規制により日本市場に流入している違法伐採木材が減った場合を想定して木材需要・価格への影響を経済シミュレーションを行ったところ、国産合板用丸太需要が増え、あわせて価格も上がるという結果が得られています。今回、導入される法律が効果を発揮し、違法伐採木材の流入が規制されれば、国内林業の活性化に寄与する可能性があると言えます。
詳しくはこちらをご覧ください。
Q6. ヨーロッパで流通するFSC等の認証材の割合はどれぐらいですか、法律化されると認証材は必要なく成るのでは?
A6. EU市場での認証材のシェアは不明です。しかしEUTRの結果、EUでは認証材の需要が増えています。
一方、認証には多くの異なるタイプがあることを知ることが重要です。いずれも合法性を義務付けていますが、一部は持続可能性の基準を含むため、合法性以上のものが必要です。
FSC認証では、良好な労働条件の維持、先住民族や地元コミュニティの権利の尊重、木材原産地の持続可能性の確保や、保護価値(貴重性)の高い森林への影響の削減など、他の重要な社会・環境要因を考慮しています。認証も生態学的な持続可能性を保証するものではないことを認識することは重要ですが、従来型の伐採活動の改善には寄与するでしょう。
Q7. サラワクの伐採企業の中にはPEFC取得している企業(コンセッション)もありますがPEFCが機能していない理由を教えて下さい。
A7. PEFCはサラワクではZedtee(Shin Yang)、Syarikat Samling Timber Sdn. Bhd.、Shin Yang Plywoodの3社に認証を与えています。しかしうち2社の事業は、木材生産量の少ないプランテーション(統計はこちら ※1)で、その他は比較的小さな天然林伐採事業です。違法で非常に持続不可能だと私たちが特定した伐採問題の多くは、認証を受けていないハートオブ・ボルネオの天然林での伐採権地域で、それらの同じ企業によって管理されている事業で起きています。
グローバルウィットネスが明らかにした、違法で持続可能でない伐採の証拠に関する詳細は、「野放し産業」(2013年9月)、「日本の木材輸入はサラワク州における熱帯雨林の破壊と先住民族の土地権の侵害に拍車をかける」(2014年6月)、「マレーシアの熱帯林破壊と日本:持続可能な2020年オリンピック東京大会へのリスク」(2015年12月)を参照してください ※2。さらに、EIAによる最近の調査(こちら)では、PEFCの合法性DDシステムの重大な不備について言及されています。私たちは、合法性確保のためのPEFC認証の質について、懸念しています。

※1:参考リンク(英語)

※2:参考PDF(日本語)

Q8. EU規制のDDとしてPEFC、FSCはミックスの非認証材に関するDDSが有効と主張していますが、率直な感想を教えて下さい。
A8. Q4.の回答を参照)
Q9. ここ一年間のアデナン政権による違法伐採への取組に対してどの様に評価しているか?
A9. アデナン首席大臣が、サラワクでの違法で持続可能でない伐採の問題を認識し、問題解決のために様々な手段を講じるコミットメントに言及したことを、私たちは歓迎しています。
しかし私たちが期待するような行動はまだ確認できません。
政府は、私たちや他団体が発表した、違法で持続可能でない伐採に対する証拠についてまだ一つも調査をしていません。私たちの知る限りサラワクの主要な伐採企業の作業現場の周辺では、監督・法施行は強化されていません。
私たちはハートオブ・ボルネオで、大変に非持続可能で、違法伐採の可能性のある施業を記録しています。そこでは首席大臣の「サラワクの森林破壊を止める」という主張にもかかわらず、急速に非持続可能な方法で原生林が伐採されています。首席大臣はサラワクの森林セクターにおける情報開示と透明性を確保するというグローバル・ウィットネスや他の団体との約束を実行に移していません。残念ながらサラワク州政府の行動はその美辞麗句に一致しているようには見えません。
Q10. 現状は分かりました。しかし、どうしたら良いのか、国の法だけで間に合うのでしょうか?
A10. 日本の場合、新法が違法伐採の規制法でなく合法木材の促進法となったこと、任意の登録企業だけにDD実施の義務が課せられることなどから、新法に「違法伐採木材を市場から排除する」強い力は無いと考えられます。
今後省令やガイドラインによって企業に求められるDDのやり方やレベルが明らかになっていくのですが、木材輸入、ユーザー企業としては個別にDDに取組み、違法木材を自らのサプライチェーンから排除することに積極的に取組むことが望まれます。
Q11. 企業に求められるデューディリジェンスのレベルについて、ガイドラインはあるのでしょうか?
A11. 規制により日本市場に流入している違法伐採木材が減った場合を想定して木材需要・価格への影響を経済シミュレーションを行ったところ、国産合板用丸太需要が増え、あわせて価格も上がるという結果が得られています。今回、導入される法律が効果を発揮し、違法伐採木材の流入が規制されれば、国内林業の活性化に寄与する可能性があると言えます。詳しくはこちらをご覧ください。
Q12. 可能であれば・・・地域の人も違法伐採をしたくてしている訳ではないと思うのですが、地域(経済面)に支える方法はないのでしょうか?根本的には、経済面のサポートがなければ違法伐採が無く成らない様に思います。
A12. 私たちはサラワクでの違法伐採の原因が、経済力の不足にあるとは考えていません。
森林伐採権の大部分はサラワクに本社を置く6社の多国籍伐採企業に管理され、森林とそこに依存する先住民族に最大の影響を及ぼしているのはその6社の施業です。違法伐採を引き起こしているのは、地元コミュニティによる小規模な活動よりも、むしろサラワク州政府による監督と法執行の欠如、あるいは汚職関連の事例であると考えています。
私たちの調査では、これらの企業の中には、違法で非持続可能な伐採事業をリベリアやパプアニューギニアなど他の森林国で展開している所もあることが判明しています。マレーシア人権委員会は過去十年間に複数のレポートを発表し、これらの多国籍企業による伐採が、どれほど地元コミュニティの文化や生活手段を破壊し食糧安全保障の危機と極端な貧困をもたらすかについて発表しています。
Q13. CoCとDDとの関係・・・FSCのCoCを持った人が正規の手続きでFSCの製品があると言った場合でも追加DDは必要なのか?
A13. もちろん、どのレベルでDDをすると決めるのかは当事者が責任を持ちますが、行った方が望ましいと考えられます。この場合は、実際に購入するFSC製品がすべての条件を揃えているかどうか(製品自体に有効な認証がされているか)をチェックします。
Q14. 主に東南アジアでの違法森林伐採の現状についてと、認証制度の確立度合いが知りたい。またそれらの多くは構造材として日本で使われているのか、加工品(家具、フローリング等)として使用されているのか教えて下さい。
A14. 東南アジア諸国全般にいえることは、森林ガバナンスは依然脆弱であることです。違法伐採はまだまだ続いていると考えてください。
違法伐採対策としては、EUとの自主的二国間協定(FLEGT-VPA)の交渉が公式にはインドネシア、ラオス、マレーシア、タイ、ベトナムにおいて交渉が進められていますが、非公式では、その他のミャンマー、カンボジアなどでも進められています。
なお、森林認証の普及度合いについては、まだまだ十分ではありませんが、インドネシアやマレーシア、ベトナムにおいては、FSCやPEFCの認証林が増えてきていますし、実際のラベルの有無はさておき、認証材も日本国内に流通しています。
Q15. DDの効果について下記のどちらがより期待出来るか、
1.DDを実施して違法か、合法かの証明が行われるケースが増える。
2.DDに要する費用や困難性を踏まえDDを実施せずによりriskの低い木材の調達に切り替えるケースが増える。
A15. 合法証明が増えることと、高リスク木材の回避のどちらがより期待できるか、とのご質問ですが、答えはその両方です。
DDにより合法性の確認ができた場合には、それが効果ですし、DD実施のコストが高すぎると判断して高リスク材を回避することも違法伐採が疑われる木材の流入を止める有効な方法です。コストやリスクの高低のアセスメント結果により、DD実施か調達切り替えを判断します。
Q16. 建設会社の者ですが、建設現場で型枠の合板や木材は多く使用されますが、具体的に日常管理の中で違法伐採を使わない様にするにはどうしたら良いでしょうか?合板や木材を現場や建材店で見て判別出来るのでしょうか?
A16. ご存知のとおり、違法伐採材か否かは製品の品質の良し悪しとは異なり、見てわかるものではありません。
しかしながら、製品によっては、その製品の製造者が製品に貼り付けてあるラベル等で判別することができます。たとえば型枠合板や床台板など合板製品については、国内製造、輸入を問わず、ほとんどに製造者の刻印があります。インドネシアか、マレーシアか、マレーシアならどこの地域のどの工場か、がそのラベルからわかります。違法伐採材か否かを”リスク”で判断するのであれば、十分に対応することは可能です。
Q17. バイオマス発電について・・・実際に取引されている違法木材の現状が知りたいです。EX、PKS 一方で適法性確保されているケースでは、何がポイントになっているのか?
A17. PKS(Palm Karnel Shell)は、農産物残渣(ざんさ)であり木材ではないので、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)では合法性確認は求められてません。木質バイオマスの場合は、合法性証明が求められますが、現在の輸入量は少なく、北米の認証材中心となっており、違法リスクは今のところ高くありません。今後、中国やベトナムなどから輸入が増えた際に、違法リスクが高まる可能性はありますが、合法木材促進法の省令やガイドラインにおいて、対象に輸入バイオマスが含まれるかどうかで、大きく変わってくる可能性はあります。
Q18. CoCで十分でないとすれば、どうすればよいか?「認証をとるべき」と言う事に成るのか?
A18. Q4.Q13.の回答をご参照ください)


2009 FAIRWOOD PARTNERS All Rights Reserved.