第14回フェアウッド研究部会(特別回)
林業再生への道筋~国産木材を使った家具づくりの最前線と可能性
テーマ: 林業再生への道筋~国産木材を使った家具づくりの最前線と可能性
登壇者: 佐藤岳利氏、佐久間源一郎氏、池田暢一郎氏、池田明生氏、吉崎英一郎氏
今回は、特別回として東京ミッドタウン・デザインハブの企画展「地域×デザイン2017-まちが魅えるプロジェクト」の一環として開催し、地域で国産材の活用と林業再生に取り組む講師陣をお招きしました。(プログラムの詳細はこちらからご覧ください)。
開催報告
最初は福島県奥会津の三島町で、林業と建築・土木に取り組む佐久間さんです。三島町は日本一の品質と言われる桐の生産地で、桐と言えばタンスが有名ですが、材質は軽くて軟らか、肌触りが良く木目と光沢が美しいなど高級材としての性質を備えています。
しかし、輸入材の影響で価格が暴落し、昔から桐が利用されてきたタンス、下駄、お琴などの用途も縮小しています。このため、佐久間さんたちは桐の特性を活かした新たなニーズと価値を見出すためテーブル、椅子、遊具、楽器、サーフボードや炭など、様々な桐の用途開発にも取り組んでいます。
良質な桐材の生産には、虫取りや芽かきなどの管理が必要だそうです。私は広葉樹でそのように手をかけて生産する材のことを知らなかったので、とても驚きました。同時に、今後広葉樹材の生産拡大や管理技術の開発にあたり、桐材の生産技術から学ぶことがあるかもしれないと思いました。
佐久間さんは、地方の民業は今逆境の中にあるとしつつ「山の恵みを多くの人に届ける産業を育てていきたい」と語ってくれました。木材も人材も、共に地域の資源でありそれらを余すことなく活用して行くという、意気込みが伝わるお話でした。
続いて、島根県隠岐の島の池田材木店の4代目社長池田明生さんと、隠岐産材にこだわった建築に携わる吉崎工務店の吉崎英一郎さん、そして横浜の池田建築設計代表で、明生さんの兄である池田暢一郎さんに、隠岐の島の木材とその活用についてお話しいただきました。
隠岐の島特産のクロマツは、アカマツよりも粘りがあって強く、木目が美しい高級建材ですが、マツクイムシ(マツノザイセンチュウ)の被害が拡大しており、生産量は一世代前の四分の一程度にまで落ち込んでいます。被害の拡大を見かねた明生さんは2011年から造林事業を開始し、マツクイムシ耐性クロマツ苗の生産や、管理ができなくなった山を借り受け伐採、植林後に山主に帰す取り組みをしています。
暢一郎さんを通じて明生さんに出会ったワイス・ワイスの佐藤岳利さんが、隠岐の島を訪問し、マツクイムシ被害で伐採・放置されているクロマツを家具として活用するための検討が始まりました。被害木は青く変色しますが、被害にあって1年目であれば高温乾燥処理で家具材として利用できるため、野積みにされていた被害木が家具として宝の山に生まれ変わるかも知れないそうです。木材がきちんと活用され、利益を生み出す本来の姿を取り戻せば、山主さんも山に気持ちを向け、再植林や管理にも携わるようになっていくだろう、という大変希望を感じるお話でした。
ディスカッションではフロアからも青いマツ材の積極的な活用方法や、桐のサーフボードについて多様な意見やアイディアが出されました。講師のみなさんにとっても刺激になったようで、「木の特性や、自然の中で生きてきたものに付加価値をつけ、デメリットをメリットに変えられるようにみんなで考えていければ」とおっしゃっていました。
最後にワイス・ワイスの佐藤さんから、「知るところからしか物事は始らない。現地の人達から直接話を聞き、出会うことが大切。人、思い、物語、それぞれの理由を知り、地域を捨てずにしがみついてでもやっていこうとしている人たちと関わっていきたい。今日お集りのみなさんは既に仲間ですから。」という呼びかけがありました。今回のフェアウッド研究部会特別回は、そのような出会いの場、新しい関係を生み出す場の一つとなれたようです。
(報告:飯沼佐代子/フェアウッド・パートナーズ、地球・人間環境フォーラム)
次回のフェアウッド研究部会は
3月22日(木)に「企業価値向上を目指すファンドによる森林資源・木材産業への投資と経営」というテーマで、株式会社マルホンの加藤拓氏にお話いただきます。詳細はこちらからご覧ください。