<声明>日本市場から違法伐採木材を排除するために
~クリーンウッド法の実効性ある運用に向けて~
2017年3月21日
国際環境NGO FoE Japan/地球・人間環境フォーラム
国際環境NGO FoE Japan/地球・人間環境フォーラム
2017年5月に施行となる「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(通称:クリーンウッド法)の運用の基本となる省令案等が公表され、3月23日まで意見募集が行われています[1] 。本法は、生産国の自然環境や地域社会、公正な商取引に負の影響を与える違法伐採問題の解決に向けて、世界有数の木材消費国である日本の先進国としての責任を果たそうと、超党派の議員立法により伊勢志摩サミット直前に成立しました。
先行する他の先進国では、違法伐採木材の取引を禁じ、違法リスクについて確認をするデューデリジェンス(DD)を民間事業者に義務づける法律が導入されています [2]。一方、日本のクリーンウッド法では、合法伐採木材の流通・利用を促す促進法という枠組みのもと登録制度が設けられ、DD実施は事業者の任意となっています。
このような法的枠組みの限界を認識したうえで、クリーンウッド法がその目的である違法伐採木材の流入防止に最大限の効果を発揮するため、省令案等の内容、及びその運用について以下の通り提案します。
1.合法性の確認に至らなかった木材等の流通を認めることについて
「木材関連事業者の合法伐採木材等の利用の確保に関する判断の基準となるべき事項を定める省令案」(以下、基準省令案)において、「合法性の確認ができない木材等を取り扱わないこと」(II概要2追加的に実施することが必要な措置に関する事項(2))としている。しかし一方で、登録事業者であっても「合法性確認に至らなかった木材等」を譲り渡すことが可能となっていることから(基準省令案II概要3木材等と譲り渡すときに必要な措置に関する事項)、そのような木材の取引量を減らしていくことがどう制度として担保されるかが重要であり、特に以下の点が重要であると考える。
(1) すべての登録木材関連事業者について、合法性が確認された木材等と、確認に至らなかった木材等とを区別して取り扱い、その旨を書類上及び木材等に表示する仕組みを設けること。(基準省令案II概要3木材等と譲り渡すときに必要な措置に関する事項)
(2) すべての登録木材関連事業者について、合法性が確認された木材等と、確認に至らなかった木材等の取扱い割合(件数及び重量)を集計し、少なくとも年度ごとに登録実施機関に報告すること。(基本方針案II概要3合法伐採木材等の流通及び利用の促進のための措置に関する事項(4)①、基準省令案II概要2追加的に実施することが必要な措置に関する事項)
(3) 国は、確認された木材等と、確認に至らなかった木材等の国全体の割合を集計し、公表すること。合法性が確認された木材等と、確認に至らなかった木材等の取扱い割合が明らかになった後、国としての期限付きの数値目標を示すこと。(基本方針案II概要3合法伐採木材等の流通及び利用の促進のための措置に関する事項(4)①)
2.登録事業者によるデューデリジェンス(DD)について
登録事業者によるDDの基準や方法については、単に形式的な書類の確認で終わらない包括的なものとなるように担保することが重要と考える。具体的には以下の通り。
(1) 合法性の定義を広範に定めること。すでに法第4条2項において、関連法令の範囲が示されているが、1)伐採に関する権利2)伐採に関する税金等の支払い3)生物多様性や自然環境の保全4)土地や林産物の利用等に関する第三者の権利5)貿易及び関税、の5つの分野がその範囲に含まれること。(基本方針案II概要3合法伐採木材等の流通及び利用の促進のための措置に関する事項(4)②)
(2) すべての第一種登録事業者について、国が提供する情報(法第4条第2項)やその他必要な情報を踏まえて、書類の正当性や信頼性をかんがみて違法リスクの高低を事業者自らが判断し、違法性リスクを軽微なものと考えられる水準にまで軽減できた場合にのみ、合法性の確認ができたものとすること。(判断基準省令案II概要1確認に関する事項(1))
(3) すべての第二種登録事業者が行う合法性の確認について、取引先が登録事業者であること、及び譲り渡される木材等が合法伐採木材であることの確認ができていることを求めること。(判断基準省令案II概要1確認に関する事項(3))
3.DDを実施する事業者の対象範囲について
(1)合板型枠を使用する事業者によるDDの実施
我が国に輸入される違法リスクの高い木材製品として、合板型枠が指摘されている。違法伐採木材の流入防止を図るためには、合板型枠を輸入する事業者に加えて、合板型枠工事事業者及びこれらの事業者に対して発注を行う建築・建設工事事業者が共に本法に基づき登録を行い、事業において使用する木材等についてそれぞれDDを実施することが重要である。このため、これらの事業者の登録を促していくことを基本方針またはガイドラインに示すことが重要と考える。
(2)事業者によるDDの実施状況と本法の効果の検証
本法では、合法木材の流通を増やすことにより違法伐採木材の流通を減少させることを目的として、任意の登録制度を用いており、違法伐採木材の取扱いに対する罰則は設けられていない。このため、登録を行わない事業者については、DDの実施状況について第三者よりチェックを受けることなく、違法伐採木材を取り扱うことが可能である。これを踏まえ、国は、法施行後、定期的に我が国の木材流通量におけるDDにより合法性が確認された木材の割合を集計することによって、本法の効果を検証すべきである。本法施行5年後の見直しの時期においては、この検証結果を踏まえて、任意の登録制度による違法伐採木材の流通防止の効果が十分でないと判断される場合には、全ての事業者に違法伐採木材を取り扱わない義務を課すことを含めて、検討を行うことが求められる。
※本声明のPDF版
【本リリースについての問合せ先】
Eメール:contact@fairwood.jp
地球・人間環境フォーラム(担当:坂本、飯沼)TEL:03-5825-9735
国際環境NGO FoE Japan(担当:三柴)TEL:03-6909-5983