第21回フェアウッド研究部会
ボランティアによる森林保全活動から見るフェアウッド利用推進への課題
2017年10月25日(水)18:30 @東京・表参道
2017.11.22更新
開催報告
第21回のフェアウッド研究部会では、都市と農山漁村を結ぶJUON NETWORK(樹恩ネットワーク)の事務局長、鹿住貴之氏をお招きし、主に3つのテーマでご講演いただきました。まず1つ目がJUON NETWORKが行っている活動について。2つ目が森林づくり活動(非営利で森林の造成や維持管理を目的とした活動)についての実態調査結果とその考察について。最後はそれらを総括して、鹿住さんが考えるフェアウッド利用促進への現状の課題について、お話いただきました。
まずはJUON NETWORKの代名詞とも言える、国産間伐材製『樹恩割り箸』普及活動についてご説明いただきました。そもそも、現在日本で流通している割り箸の98%は外材で、ほとんどが中国産だという現状があり、国産木材を都市部へと運ぶ「架け箸(橋)」になってほしいとの願いを込めて、樹恩割り箸を作っているということでした。この樹恩割り箸は、障害者施設で生産を行っており、障害者の仕事づくりと日本の森の保全という二重の役割を担っていること、そして主に緑ちょうちんのお店(国産食材50%以上使用の店)に卸しており、食料自給率への配慮に取り組む飲食店と協力して取り組んでいるなどの特徴を知ることができました。
また、JUON NETWORKの「森林の楽校」プロジェクトでは、全国に散らばる16の森林で、それぞれの森や地域の特徴をうまく生かしながら、森林保全活動や地域住民との交流、農山村文化の体験教室などが行われているそうです。例えば、岐阜にある森林の楽校「風の谷」では、地元の方々協力のもと、財産区有林の整備活動などの森づくり作業体験を行い、時期によってはホタル観賞などのイベントも開催されるなど、幅広く森林にまつわる活動に取り組んでいます。一方、新潟にある森林の楽校「トキの島」では、トキの再生を主眼に置き、トキのエサ場づくりや住環境の整備活動に取り組んでいるとのこと。鹿住さんは、全国に16つある森林の学校の主催団体が、自治体もあれば、大学の研究会、NPOなど多様で、団体の特徴が大きく反映された個性ある取り組みが成されていることを強調していました。
また鹿住さんは「森林づくり活動についての実態調査」を林野庁から引き継ぎ、全国の非営利で森林の造成や維持管理を目的とした活動についての調査を行ってきました。その調査結果を今回ご報告いただきました。
興味深いのは、これまで活動団体が増加し続けていたが、H24を境に減少に入ったとのこと。これについて鹿住さんは、活動している人々の高齢化と、定年退職の年齢の引き上げを理由にあげていました。とくに、60歳で仕事を退職していた時代は、まだ働けるエネルギーがあり、そのエネルギーを山に入って使う人も多かったといいます。
しかしながら65歳に引き上げとなってからは、退職後に山に入るためのハードルが一段高くなり、減少の理由となっているとも考えられるそうです。また、活動団体へのアンケート「課題・必要なサポートはなにか」、という項目の回答として、これまでは「活動資金の確保」が常にトップでしたが、こちらの順位も変動し「会員・参加者の確保」がトップの回答になったそうです。こちらも理由は高齢化、といってしまえばそれまでですが、現在、森林づくり運動にカウントされる団体は約2500~3000あり、その多くの団体で、活動する人々の高齢化が起きていると考えられます。
そうすると、数十年後にはほとんどの団体の活動維持が不可能だとも考えられ、日本の森林を保全している団体が総倒れする未来も十分に予想可能だと思います。そうなった場合、森林が有する多面的機能は弱まり、川下に構える都市にとっても脅威であることは言うまでもありません。
最後に、国内の森林・木材の動向を良く知る鹿住さんに、フェアウッド利用推進への課題についてお聞きしました。鹿住さんは単刀直入に「日本で森林ボランティアをしている人々はクリーンウッド法についてあまり知らないんじゃないか。そもそも外材への意識はそこまでないのかもしれない」と話し、違法リスクの高い外材の輸入に対して関心のある外向きの組織と、国内の森林を利用・保全する内向きの組織とで、結びつきがあまりないことがもったいないのではないか?と疑問を呈していました。私自身、FoE Japanのインターンとして今年の9月にマレーシア・サラワク州で森林伐採の現場を視察し、見渡す限り、伐採を終えたはげ山の景色や、その後植えられた広大なパームプランテーションを目の当たりにしてきました。多様な動植物のすみかである森林やその生態系が破壊され続けている姿に、人間による経済追求への憤りを感じずにはいれませんでした。
日本の木材自給率は、平成28年現在34.8%で、約7割を輸入に頼っている現状で、その輸入材の中には違法伐採リスクの高いものや、現地の生態系破壊などに少なからず加担しているものが含まれてしまっている実態があると言われています。
鹿住さんは「日本に木材が無いから輸入しているわけではない。安いから買っているのであって、日本の都市は経済性という理由から、木材の生産地である地方農山村ではなく、外国とつながってしまっている」と話されていました。
国産木材の流通が拡大すれば、生産地である農山村に雇用が生まれ、荒れ放題の森林は保全され、最終的には違法リスクの高い外材の利用を抑えていくことができます。日本にとっても世界にとっても良いことづくめであることは間違いありません。国内の森林に着目する内向きの組織と、海外の森林に着目する外向きの組織が手を取り合い、協力して活動していくことで、フェアウッド利用へのより強固なネットワークが生まれるのではないかと実感できる、貴重な話を伺うことができました。
FoE Japanインターン 高田大輔
このようなJUON NETWORKの活動について、その問題意識やこれまでの実績などをご紹介いただき、持続可能な森林資源の利用を目指すフェアウッドという視点から、国内の森林保全の課題とその解決への糸口などについてお話しいただきます。
●開催概要
日 時: 2017年10月25日(水)18:30~21:30(開場:18:00)
場 所: 株式会社ワイス・ワイス(〒150-0001東京都渋谷区神宮前5-12-7 2F)
会 費: 3,000円(懇親会費1,000円を含む。当日受付でいただきます)
プログラム(内容は予告なく変更することがあります)
第1部:講演「ボランティアによる森林保全活動から見るフェアウッド利用推進への課題」
鹿住 貴之氏/JUON(樹恩)NETWORK事務局長
第2部:懇親会
【講師プロフィール】
鹿住 貴之氏(かすみ・たかゆき)
1972年生まれ。98年大学生協の呼びかけで設立された都市と農山漁村を結ぶJUON NETWORK(樹恩ネットワーク)に事務局スタッフとして参画。99年3月より事務局長。その他、NPO法人森づくりフォーラム常務理事、認定NPO法人日本ボランティアコーディネーター協会理事、杉並ボランティアセンター運営委員等様々な市民活動に携わっている。著書に『割り箸が地域と地球を救う』(創森社・共著)等。
【お問合せ】
- 地球・人間環境フォーラム(担当:坂本)
http://www.fairwood.jp、info@fairwood.jp、TEL:03-5825-9735 - ワイス・ワイス(担当窓口/広報課 野村)
http://www.wisewise.com、press@wisewise.com、TEL: 03-5467-7003
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