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第27回フェアウッド研究部会
森林経営管理法案の課題とフェアウッド
2018年5月23日(水)18:30 @東京・表参道

2018.4.18掲載
2018.5.30更新

開催報告

第27回目のフェアウッド研究部会は、森林ジャーナリストの田中淳夫氏をお迎えし、「森林経営管理法案の裏を読む」と題し、現在、審議が進められている同法案の枠組みと背景事情についてのお考えをお話いただきました。

 

まずは、この森林経営管理法案のエッセンスとしては、森林経営の責務の明確化、所有権と管理権の分離などが含まれていること、加えて、管理されない森林の管理が委託される「意欲と能力のある林業事業体」がどのように解釈できるかをご説明いただきました。

 

同法の下で伐採を行った場合、その利益を受け取るのは誰かという点については、委託を受けた事業体がそのほとんどを得、森林の所有者にはそれほど利益が分配されないおそれもあるとのこと。また「同意みなし制度」では、所有者が不明、不同意な場合でも、市町村の勧告と知事の裁定により、所有者が反対する場合でも伐採が可能であり、本法案のなかでも議論を呼んでいるポイントということです。

 

また法案中の「事業体が引き受けない森林」というカテゴリーは、採算の見込めない森林を意味しており、実質的には、森林環境譲与税を投入し、公社・公団造林の抱えた負債を市町村が穴埋めをするケースがほとんどであり、隠れ債務の払拭とも取れるとのこと。加えて、同法案の説明資料についても、「8割の森林所有者が経営の意欲が低い」と分析されているが、調査では「現状維持」、つまり規模拡大を考えない森林所有者は意欲がないとみなされている点や、3分の1しか再造林が行われていない現状において、主伐=皆伐を意欲の指標とすることは問題ではないかという指摘がなされました。

 

続いて、新たな補助金制度についても、様々な問題点が指摘されました。再造林の義務化を示しつつも、主伐を推進する補助金のあり方は、手間と時間をかけなければできない育林の本来的なあり方に相対するものであると注意喚起されました。補助金を目的として新規に参入する業者によるリスクも大きいとのことです。

 

なぜここまで木材生産量を増やしたいのか?という疑問については、間伐補助制度の限界や、木材自給率目標等との関連からの厳しい見解が述べられました。住宅着工率が低下するなか、合板や木質バイオマス、CLT(直交集成板)等の出口しか示されていないのが現状のようです。木材輸出への期待もありますが、輸出のほとんどは丸太であり、安さでのみ中国へ売られているのが実情とのこと。このような状況では、山へ利益を還元することが難しいといいます。CLTの製造への補助金のあり方、木質バイオマス発電に流れてしまう木材についての、非常に深刻な現状も指摘されました。

 

実際の皆伐の事例を写真と共に説明いただくなかで、木材利用の推進と平行して将来的に山を育てていくことの難しさが実感される研究部会になりました。最近の研究報告では、老木の方が若木よりも成長するという説も新たに出されているとのこと。伐採量を増やすだけではなく、山を生かす木の使い方について考えさせられました。

 

フェアウッド・パートナーズ/FoE Japan 佐々木勝教

 

今国会に成立を目指し、議論が進んでいる「森林経営管理法案」。林野庁が昨年10月に発表した「新たな森林管理システム」に基づき、日本の「林業の成長産業化と森林資源の適切な管理」を目指すとされています。しかし、森林・林業関係者からは懸念の声が上がっています。

今回のフェアウッド研究部会では、ジャーナリストの立場から森林経営管理法案が抱える課題について問題提起をされている田中淳夫さんに登壇いただき、概要と問題点、提言についてお話しいただきます。持続可能な木材の利用で森林保全に貢献しようとするフェアウッドの視点から、本法案をどのようにとらえていくべきかを考えます。

●開催概要
日 時: 2018年5月23日(水)18:30~21:30(開場:18:00)
場 所: 株式会社ワイス・ワイス(〒150-0001東京都渋谷区神宮前5-12-7 2F)
会 費: 3,000円(懇親会費1,000円を含む。当日受付でいただきます)

プログラム(内容は予告なく変更することがあります)
第1部:講演「森林経営管理法案の課題とフェアウッド」
田中淳夫(たなか・あつお)氏/森林ジャーナリスト

第2部:懇親会

【講師プロフィール】
田中淳夫氏(たなか・あつお)
1959年大阪生まれ。静岡大学農学部卒。日本唯一の森林ジャーナリストとして森林と人間の関わりをテーマに執筆活動を続けている。主な著作に『森林異変』『森と日本人の1500年』(ともに平凡社新書)のほか、『日本人が知っておきたい森林の新常識』(洋泉社)、『樹木葬という選択』(築地書館)、『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)など多数。


【お問合せ】
  • 地球・人間環境フォーラム(担当:坂本)
    http://www.fairwood.jp、info@fairwood.jp、TEL:03-5825-9735
  • ワイス・ワイス(担当窓口/広報課 野村)
    http://www.wisewise.com、press@wisewise.com、TEL: 03-5467-7003

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