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第32回フェアウッド研究部会
森林浴から見直す森と人との関わり
2018年11月29日(木)17:30 @東京・表参道

2018.10.31掲載
2018.12.11更新

開催報告


第32回フェアウッド研究部会は、「森林浴から見直す森と人の関わり」と題し、一般社団法人森と未来 代表理事の小野なぎささんにお話しいただきました。「森と未来」は、2015年に設立されたとのこと。現在では当たり前に周知されている森林セラピーですが、小野さんが大学で学び始めた当時は、かなり珍しいものとされていたそうです。ご自身が大学時代に学んだ森林の印象は、国産材は売れない、違法伐採問題など暗い話ばかりだったことから、どうすれは森林から離れた暮らしをしている都会の人が森に興味を持つのか、どうすれば森を使うことがで、地域に貢献できるか?を考え、森林を活用した人材育成、地域資源を活用した地域支援、地域資源を活用するための人材育成の3本柱で事業を進められています。

今、森林浴は世界的に認知されはじめています。英語では、Forest bathingと訳されますが、日本語のShinrin-yokuは、ほぼ全世界的に理解さるほど一般化されており、日本発祥の“森林浴”として海外メディアに取り上げられ、“森林浴”を体験させてほしいという依頼も寄せられるそうです。

また森林浴は、当初は何が良いのか科学的には証明されていませんでしたが、2004年頃から医療分野の方々による解明が始まり、医学的に分析されるに至ります。森林浴の主な効果としては、プラスの感情である「活気」の上昇、血圧の低下、ストレスホルモンの減少、がんの予防などが挙げられ、その効果は4週間にも渡り持続されるようです。また、ストレスが高い時に高まる「交換神経活動」が抑制され、リラックスした時に高まる「副交感神経活動」が優位になることから、現代病とされる心の病などの予防の観点からも非常に重要とされています。

地球誕生から人類誕生までの歩みを振り返り、人類と森の関わりをみた場合、人間は99.9%を森林環境で暮らしてきたことから、人工的な環境は私たちの身体にはストレスのかかるものであり、森林に身を置くことで自然と調和する感覚を取り戻し、恒常性(ホメオスタシス)が整うのだそうです。今は、森林浴だけでなく、森林療法や森林医学という言葉もありますが、小野さんご自身は、2014年頃より全国の森林セラピー基地における人材育成に携わってきました。また3年前からは、北京政府の依頼で中国での森林療法に関する人材育成も行っているとのことでした。

人間は日常生活において、五感のうち圧倒的に視覚に頼っていますが、「1/fゆらぎ」と呼ばれる規則性と不規則性の混じった状態としての森の音に耳を傾けると、身体に鎮静効果があるそうです。嗅覚・味覚・触覚のそれぞれでも森林は楽しみや温かみを与え、くつろぎや心地よさをもたらします。小野さんはこのような効果を医学の分野で使うのではなく、働く人々の人間的成長を支える人材育成(研修」として形作ることで、企業にも受け入れられるコンテンツ「TIME FOREST研修」を提供し、森の中で感性を養いと自身と向き合う機会を創出しています。テクノロジーの発展が進み、IoTやAIなどが仕事に取り入れられる時代において、これからは人間が持つ強みとして感性や身体性が重要となることから、「次世代リーダー研修」や「管理職研修」として、大手企業からも求められているとのことです。その他にも、TIME FOREST研修を地方の森を活用して行うための地域支援事業や、シドニーオリンピック水泳日本代表の萩原智子さんと共同で、全国の子どもたちに森や水の大切さを伝える「水ケーション〜森と水の授業」を行っているとのことです。

今回のご講演を通し、漠然としか理解していなかった森林浴が、森林から離れてさほど時間の経っていない人類がストレスを感じざるを得ない人工的な環境において、五感を整えストレスを解消する医療的な効果をもち、働くということを考える上でも森林と関わることの重要性が感じられた研究部会となりました。

(FoE Japan 佐々木勝教)

森の新たな資源として注目を浴びる森の癒し効果。全国各地で森林セラピーや森林療法などの形で森林浴が活用されています。

都会の人々に、自分と向き合う時間をテーマに森林浴を取り入れ、森と共に豊かな未来に繋がる活動がしたいと思いから、2015年に一般社団法人森と未来を立ち上げ、人材育成活動や地域支援活動を各地で展開している小野なぎささんを講師に迎えます。

今、見直される森林浴の効果を新たな森林資源と捉え活用する小野さんの活動を紹介いただき、森と人との関わり方やつながりのあり方を改めて見直します。

●開催概要
日 時:2018年11月29日(木)17:30~20:30(開場:17:00)
場 所地球環境パートナーシッププラザ(〒150-0001東京都渋谷区神宮前5-53-70国連大学ビル1F、http://www.geoc.jp/access/、03-3407-8107)
会 費: 3,000円(懇親会費1,000円を含む。当日受付でいただきます)

プログラム(内容は予告なく変更することがあります)
第1部:講演「森林浴から見直す森と人との関わり」
小野なぎさ氏/一般社団法人森と未来代表理事

第2部:懇親会


【講師プロフィール】
小野なぎさ氏(おの・なぎさ)
東京農業大学地域環境科学森林総合科学科卒業後、森を人の健康に活用したいという動機から企業のメンタルヘルス改善に関わる事業に携わり、認定産業カウンセラー、森林セラピストの資格を取得。約10年間で、森林を活用した研修プログラムの開発、健康リゾートホテル事業、海外のメンタルヘルス事業の立ち上げを経験。全国の地域と連携し、森林資源を活用した観光プランつくり、企業研修、人材育成を実施し、執筆や講演活動を行う。2015年一般社団法人森と未来を設立、代表理事に就任。著書に『森ではたらく!27人の27の仕事』(2014年、学芸出版社)。

【お申込み】
お申し込みフォームにてお申し込みください。
フォーム記入ができない場合、「第32回フェアウッド研究部会参加希望」と件名に明記の上、1)お名前 2)ふりがな 3)ご所属(組織名及び部署名等)4)Eメールアドレスを、メールにてinfo@fairwood.jpまで送付ください。
※定員70名


【お問合せ】
  • 地球・人間環境フォーラム(担当:坂本)
    http://www.fairwood.jp、info@fairwood.jp、TEL:03-5825-9735
  • ワイス・ワイス(担当窓口/広報課 野村)
    http://www.wisewise.com、press@wisewise.com、TEL: 03-5467-7003

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