英国政府の新しいバイオマス戦略は、北米やヨーロッパの森林から英国の発電所への木材の流入を止めることはできないだろう。新戦略は、持続可能性基準の改善を約束している。しかし、森林は速やかに回復し既にいくらかの炭素を吸収しているから、森林由来の木材燃焼がカーボンニュートラルであるという現在の誤りを是認している。バイオエネルギーをカーボンニュートラルとすることで、その問題に対処(代償を払う)しなければならないのは、大気である。この戦略には6つの重要なポイントがある:
・炭素回収・貯留の有無にかかわらず、バイオエネルギーに対する新たな資金提供はない。
・政府のモデリングによると、2050年までに英国は必要なバイオマスの半分強しか利用できない可能性があり、英国のエネルギー安全保障とネット・ゼロの達成にとって、大きく危険な賭けである。
・バイオマスの持続可能性に関する基準を、熱、電力、輸送のすべてにおいて統一する計画があるが、バイオマスが "持続可能 "であれば、燃やしても二酸化炭素を排出しないという誤った前提がある。
・政府の計画では、英国は輸入バイオマスに大きく依存すると見ている。北米の森林から数百万トンの木材を継続的に輸入することを意味する可能性が高い。
・政府は、バイオマスの供給が変化することを望み、現在の木質ペレットから、2025年までには、ほとんどが農業残渣とエネルギー作物になると考えている。しかしこれらの資源がどこから来るのか、また現在は使用していない理由は説明されていない。
・炭素回収・貯留を伴うバイオエネルギー(BECCS)に関する科学アドバイザーの報告書は、バイオマス発電所が炭素回収技術を有していたとしても、森林の炭素蓄積にマイナスの影響を与える可能性があると認めている。
・2035年までに、炭素回収を伴わないバイオマス燃焼から移行するとしているが、これは政府の気候アドバイザーが提案している時期よりもずっと遅い。これはあと10年、おそらくそれ以降も、炭素回収を伴わない木材燃焼を継続するための、憂慮すべき裏口である。
・戦略では、米国南東部の貧しい有色人種コミュニティに立地する木質ペレット工場による大気汚染が健康に及ぼす重大な影響については、何も言及していない。こうした木質ペレット工場が存在するのは、英国のバイオマス需要があるからにほかならない。
原文はこちら(英語)
https://www.nrdc.org/bio/matt-williams/uk-biomass-strategy-wont-stop-destruction-north-american-forests