「日本の環境政策の影響で米国が大変な状況に陥っている」──米国のNGO幹部が9月下旬に来日し、日本がバイオマス発電用に米国から輸入している木質ペレットの生産活動等の影響で、米国の森林やコミュニティが破壊されている、と訴えた。
この数年で、日本国内の木質バイオマス発電に使われる木質ペレットの輸入が急増。その輸入の約2割が米国産だ。同発電は経済産業省の固定価格買取制度(FIT)の対象となっているが、来日した南部環境法律センターの弁護士ヘザー・ヒラカー(Heather Hillaker)氏は「木質バイオマス発電は再生可能エネルギーではない」と指摘している。
来日したのは、ヒラカー氏のほか、アラバマ州などでペレット工場建設の反対運動に携わるポーシャ・シェパード(Portia Shepherd)氏、英国や米国で活動する環境NGO「Biofuelwatch」の共同ディレクターのゲイリー・ヒューズ(Gary Hughes)氏。このほど環境金融研究機構の取材に応じたほか、東京でセミナーや記者会見も開き、国会議員や経済産業省や林野庁の担当部局等に、米国の現状を訴えた。
3人によると、ミシシッピ州など米国南東部に木質ペレットの生産工場が立地し、同地周辺の豊かな森林が伐採され、木質ペレットの製造に充当されているという。こうした開発の進行で、南東部の豊かな森林は、その生物多様性の損失のリスクに直面、絶滅が危惧される種も少なくないという。さらに、工場の操業による大気汚染や粉塵公害も起きて、地域住民を悩ましている。
同地で製造された木質ペレットは米国内での使用ではなく、大半が輸出に回されている。輸出先は英国や日本だ。実際に、日本の木質ペレットの輸入量は急増している。林野庁によると、2024年の木質ペレットの輸入量は638万トンで、20年の202万トンの3倍に増大している。638万トンの輸入量のうち米国産は約2割の118万トン。
日本では2012年に始まったFITによってバイオマス発電が急増してきた。3人を招いた「一般財団法人地球・人間環境フォーラム」によると、同発電燃料の7割が輸入バイオマスとされ、そのうちの多くが輸入木質ペレットで占められているという。
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