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インドネシア その1

2019.10 掲載

国内の森林減少と木材の輸出状況

インドネシアの森林は、東南アジアでは最大面積を誇り、国土面積の約半分が森林、そのうち約半分が生産林[1]。森林の72%は国有であり、残りの28%がコミュニティや個人の所有となっている[2]。世界最大の熱帯材輸出国であり、合板、家具、パルプや紙など、多様な製品を輸出。主な輸出先は中国、EU(欧州連合)、日本、韓国などがある[3]。日本には2016年に1,284百万USドルが輸出されており、そのうち約6割が合板となっている[4]

森林減少の割合は、2010年から2015年にかけては0.7%(FAO,2015)となっており、ブラジルに次いで二番目に森林減少の割合が深刻な国である(年間68万4,000ヘクタール)[5]

合法性保証制度(TLAS):SVLKとその課題

インドネシアの違法伐採対策は世界的に見ると原産国としては進んでいる方だと言えるが、ここでは仕組みとともに現在指摘されている課題を紹介する。インドネシアは2013年にEUとの二国間協定(VPA)を締結した最初の木材原産国である。VPAは森林ガバナンスの向上を目的とし、協定を結んだ国からEU市場に供給される合法木材をライセンス化する取り組みである。そのための木材合法性保証システム(TLAS)の構築に必要となる複雑なプロセスを経た後、インドネシアではSVLK(Sistem Verifikasi Legalitas Kayu)制度が完成、2016年11月にライセンス木材の輸出が始まった。

ライセンス材はEU市場においては合法とみなされEU木材規則のもと求められるデューデリジェンスが不要と規定されている。ライセンス材として扱われるEUでは、輸入業者は輸入前にFLEGTライセンスと呼ばれるライセンスを現地サプライヤーより取得し、電子ファイルの状態で自国の管轄官庁に提出し承認を得る必要がある。また、貨物到着や輸入申告前にこれを済ませておく必要がある[6]

    [1] インドネシアの森林法において基本となる法律は1999年の林業法(Law No. 41 of 1999) である。憲法には森林についての明記はないが、国による自然資源の管理については記述がある。NEPCon (https://www.nepcon.org/sourcinghub/timber/timber-indonesia) によれば、2011年より原生林と泥炭地については新規のコンセッション授与に関してはモラトリアムを実施しており、継続したコンセッションにおける伐採は、環境林業省が発行する許可証やライセンスにより管理される、とされている。伐採者は年次計画と10年次計画を提出しなければならず、伐採量や伐採地域が年次計画に明記される。しかし、フェアウッドとしては、モラトリアムが全面的に実施されているか否か、早急に確認が必要と考えている。
    [4]クリーンウッドナビ(http://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/goho/kunibetu/idn/info.html)(2019年9月26日)
    [5]FAO, Global Forest Resources Assessment 2015. (http://www.fao.org/forest-resources-assessment/current-assessment/en/) (2019年9月26日)
    [6]NEPCon インドネシアリスク情報:https://www.nepcon.org/sourcinghub/timber/timber-indonesia

下図:合法性保証書類(V-Legal Document)の流れ

出典:林野庁クリーンウッドナビ[7]

インドネシア側では、V-Legal(合法性確認)書類が合法性を保証する輸出書類となり、これが上記のEUで認められているライセンスである。SVLKに準拠する事業者は輸出先に関わらず、輸出貨物にこのV-Legal書類を付帯する。実際には、環境林業省の認定する民間機関が、保証対象となる事業者の輸出貨物の合法性を審査し、合法性確認書類を発行する。

木材合法性保証制度は、以下の要素で構築される。合法性基準、サプライチェーン管理、合法性確認プロセス、ライセンス制度、モニタリング、である。また、義務である合法性だけでなく、自主的な持続可能性の保証(PHPL)も含まれる。特徴の一つとして、監査の他に独立外部モニタリングの制度が設けられていることが挙げられる。

EUではデューデリジェンスが不要とされているライセンス材の基盤となっているSVLKであるが、施行後様々な課題の指摘がされている。いくつか挙げると、監査の質、市民社会による独立外部モニタリング権限と企業側の情報開示、先住民族や地域住民の土地の法的権利の確認状況、伐採権授与プロセスにおける合法性確認、確認すべき個々の基準と合法性保証状況の全体の合格・不合格の評価方法などに関するものがある[8]

    [8]Overdevest, C. and Zeitlin, J. Experimentalism in Transnational Forest Governance: Implementing EU Forest Law Enforcement Governance and Trade (FLEGT) Voluntary Partnership Agreements in Indonesia and Ghana, at: https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2802659

ガバナンス評価などのリスク

インドネシアはガバナンスや汚職の問題が以前から指摘されており、2018年のCPI(腐敗認識指数)は38である。世界ガバナンス指標(WGI)においても、近年スコアは上昇しているものの、ガバナンスの数値は全般にマイナスである。

木材に関するリスクを以下に挙げる。制度上はある程度の整備がされているインドネシアではあるが、主に各プロセスの実施に関してNGOなどが最も懸念しているのが、人権や汚職に由来する課題に関するものである。さらに、転換材に関するリスクの指摘もある。これらの詳細については「木材調達リスクに関する報告書」を参考にしてほしい。また、次回以降でNGOによる課題の指摘を要約する。

基準・指標の策定方法の問題

  • 合法性確認指標の適合性評価の方法が不十分
  • 社会面や環境面での法規制の遵守確認が不十分
  • 農地転換からの木材取得では、合法性確認を行う書類が不適切
  • 政府による許認可発行過程での不正や汚職についての確認が行われない

基準に基づく監査の問題

  • 書類の信頼性評価や不正リスクが高い場合も事実確認のための現地確認が行われない場合や項目がある
  • 外部監査の権限が弱く、企業からの情報提供がされず、透明性が低い

木材調達リスクに関する報告書

NEPConの通常まとめている木材の国別リスク評価のインドネシア版であるが、ライセンス材を出すインドネシアのものは他国の報告書とは異なる形態を取っている。本報告ページでは、以下についてまとめている[9]

  • - インドネシアの森林管理制度の概要
  • - FLEGTライセンス材の仕組み
  • - インドネシアの伐採に関する法制度(森林区分、伐採許可証の各種類、森林管理計画など)
  • - VPAとSVLKについて(簡単な仕組みと主要ステークホルダー)
  • - 制度の実施の仕組み
  • - SVLKの課題と、それに対してEUやインドネシア政府が取った措置(2016年のSVLKの改訂を含む)

結論としては、以下を示している。ただし、2016年のSVLKの改訂内容を考慮には入れていないが、別の研究で2015年に指摘された下記の課題は引き続きそのままであるとしている。

  • - インドネシアの合法性基準は容易に監査できる書類のチェックリストで構成されている
  • - 汚職と(森林)資源への権利の問題についての様々な課題をこの制度で解決できるかという点については、否定的である
  • - 書類ベースの制度では、コンセッションの授与、森林計画の承認、伐採・輸送許可証の発行における汚職の問題を解決できない
  • - 民間の監査機関では、政府であれ民間であれ汚職を暴露するだけの権限、能力そしてインセンティブに制限がある

注:本WEBサイトにおいては、FSCやPEFCといった民間の独立第三者機関が定められた原則と基準によって審査・認証する森林認証制度を「認証」と称しています。他方、例えばEUと木材生産諸国との間で二国間協定に基づき整備された「TLAS(合法性保証制度)」の場合は、「認証」とは異なるという理解から「保証」という表現を使用しています。

    [9]Setowati, A. et. al. (2015) Commodifying Legality? Who and What Counts as Legal in the Indonesian Wood Trade at https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/08941920.2016.1239295?journalCode=usnr20

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