ベトナム
1980年代より天然林の伐採が段階的に禁止されており、2014年に全面禁止。加工国・輸出国としての役割がほとんどである。2014年の英チャタムハウスの調査によれば2013年にはベトナムの天然林から8万m3、植林から800万m3、土地転換などから8万m3の木材が収穫されており、同年の輸入木材ベース製品は1,200万m3。輸入の比率は40~50%と推定されている。[1] 日本への輸入はチップが大半を占めるが合板、集成材、建具、建築用木工品などもある。
ベトナムは違法材を大量に密輸しているというNGOの報告では、同国がメコン地域から木材を「盗んでいる」とも批判されている[2]。もともとはラオスから、そして近年ではカンボジアからの違法材が大量に市場に入ってきている[3]。ベトナムはラオス・カンボジアともに違法材の密輸を防止するため協定を結んでいるが(ラオスとは2008年、カンボジアとは2012年)[4]、問題は依然として深刻である。
ベトナムは、伝統的にトップダウン式のガバナンス傾向があり、森林ガバナンスについても同様で特にステークホルダー参画が大きな課題とされている。ベトナムは、汚職認識指数(CPI)ではスコアは35、180カ国中107位という、汚職リスクは非常に高い国。世界ガバナンス指標(WGI)では「市民の声とアカウンタビリティ」の項目が10%と顕著にスコアが低く、ステークホルダー参画の不在とトップダウン式のガバナンスであることがわかる。さらに「汚職のコントロール」についても42%にとどまっている。
森林ガバナンスの概念はベトナムでは比較的新しいが、輸出国として世界市場を意識するベトナムは、2017年EUとの二国間協定(VPA)を締結している(EUのVPAの締結はベトナムで7カ国目である)。ベトナムとのVPAは2018年中に批准される予定である。また、輸出国として、ベトナムは輸入材にも適用される木材DD規制を導入しており、中国がベトナムのモデルに習うことが期待されている。
ただ前述の通り非常にガバナンスの脆弱な国であり、違法木材輸入の蔓延についてはNGOの詳細な報告書が今年も出されたばかりであり、VPAを基盤とする今後の改善が早急に求められている。
木材調達リスクに関する報告書
EIAによる2016年11月から2017年3月にかけての現地調査をまとめた報告書。ラオスの輸出禁止(後述のフォレスト・トレンズの報告書を参照)に伴って、2016年以来、ベトナムの主要輸入元はカンボジアに移っている。この報告書には、カンボジアのラタナキリ州にある国立公園を含む保護地区内にあるCPA(コミュニティ保護地区)での大規模違法伐採と、違法木材をベトナムが輸入する違法な手法について詳細な記述があり、現地において違法木材がどのように合法化されるかがわかる。
カンボジアは2016年に木材に関してはベトナムとの国境を閉鎖しており、カンボジアからの丸太・製材輸入は違法となっている。それにもかかわらずベトナムの輸入業者は、カンボジアの役人に賄賂を渡して違法材を輸入し続けている。調査では1m3に対して平均45ドルが支払われていることがわかった。
いったんベトナムに入った木材に対しては、ベトナム側の役人がロンダリングを行うため、違法木材に対して正式に合法材としての割当が与えられる。ロンダリングされた違法材は30万m3、それに対するベトナム側役人が受けるキックバックを1,300万ドルと推定している。
2017年から状況が変わっていないことを明らかにした報告書。カンボジア国内の、Virachery 国立公園、Lower Sesan 2 ダム、Phnom Prich野生生物保護地区の3か所において大規模な違法伐採が行われベトナム市場へと密輸されている様子について詳しい。
2011年の報告書であり、少し内容は古い。以下、日本に関する部分のサマリーである:
日本はベトナムの森林製品(量)の最大の輸入国であり、市場の26%を占めている。金額的には第3番目の輸入国で市場の15%を占める。2008年にベトナムが日本に輸出した森林製品は丸太換算で220万m3、金額にすると4億1,000万ドルである。輸出の80%はチップや残渣材である。家具の輸出量・輸出金額は安定しており、チップや残渣材は減少傾向にある。
その他の関連資料
- 国連薬物犯罪事務所(2013)『Criminal Justice Responses to the Illegal Trade in Timber in Vietnam(ベトナムにおける違法木材取引に対する刑事司法対応)』
- 英国王立国際問題研究所(チャタムハウス)(2014)『Trade in Illegal Timber: The Response in Vietnam(違法木材の取引:ベトナムの対応)』(英語のみ)
- 環境調査エージェンシー(EIA)(2008)『Borderlines: Vietnam’s Booming Furniture Industry and Timber Smuggling in the Mekong Region(ボーダーライン:ベトナムの反映する家具産業とメコン地域からの木材密輸)』(英語のみ)
- 環境調査エージェンシー(EIA)(2011)『Crossroads: The Illicit Timber Trade Between Laos and Vietnam(クロスロード:ラオスとベトナム間の違法木材取引)』(英語のみ)
ベトナムからの木材の合法性確認(DD)において留意すべき点
冒頭に記した通り、ベトナムは経済発展の背後に脆弱なガバナンスと汚職の問題を抱える国であり、書類ベースのリスクアセスメントではリスクを軽減できない。