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04. 森林認証制度

04. 森林認証制度

森林認証制度(4)認証制度の評価

森林認証制度(4)認証制度の評価

2009年5月掲載

世界中に様々な森林認証制度があり、それぞれつくられた背景や目的が異なります。認証する内容やその手続きについても違いがあります。

制度によって、基準と指標の策定経緯と内容、認証審査機関の登録認定手続き、認証審査の単位レベル、現場での審査内容、審査報告の透明性、製品への認証材以外の原料の混合など違いがあることを理解し、それぞれの認証制度やその認証森林が、調達製品のリスクを十分にクリアできるかどうかを判断して、各制度の特徴を把握した上で、調達・購入時に判断していく必要があります。

認証制度の評価については、世界銀行が認証制度の評価ツールを作ったり、欧州のいくつかの政府調達制度において評価が実施されたりしているので、それらを参考にすることができます。

ここではフェアウッド・パートナーズが「森林生態系に配慮した木材調達に関する共同提言」で推進する6項目をもとに選定した以下の7つの比較項目に基づいて、日本市場で普及している3制度(FSC、PEFC、SGEC)の認証基準を比較してみました。

●違法伐採でないことの確保
●貴重な森林生態系の保護
●森林利用をめぐる地域住民との紛争対立の回避
●天然林の大規模な皆伐回避、天然林の転換の禁止
●希少種(樹種、動植物)の保護
●天然生態系への重大な影響(薬物、GM)回避
●認証製品のトレーサビリティ

それぞれの項目について、認証基準で要求しているか、また、そのレベルはどの程度かを、公開されている基準・指標からA~C評価で比較してみた結果を下表に示しました。

日本で見られる認証制度の認証基準の比較▼
FSC PEFC SGEC
違法伐採でないことの確保

【評価基準】
(1)伐採の合法性の確保 (2)森林管理に関する法律 (3)環境社会面の法規制
A:いずれも要求 B:(1),(2)のみ要求 C:(1)のみ要求またはいずれも要求なし
A
(1)ロイヤリティなどの支払い(1.2)無許可行為からの森林の保護(1.5)
(2)(原則1)
(3)環境に関する法律の順守(1.1,1.3)労働者の安全確保に関する法律(4.2)
B
(1)明確な記載なし
(2)(Annex3-3.2)
(3)ILO条約(Annex3-3.3)生物多様性や京都議定書(Annex3-3.4)
A
(1)(4-1-3)
(2)(5-1)
(3)環境面での法律(5-1)労働者の安全確保に関する法律(5-4)
貴重な森林生態系の保護

【評価基準】
(1)世界的に貴重な生態系 (2)未開拓林 (3)水源・土壌の保護 (4)伝統的慣習的価値の高い森林
A
(1)HCVFの定義内-絶滅危惧種、固有種など(HCV1)
(2)(HCV2)
(3)HCV4、10.6)
(4)(3.3)
B
(1)「貴重」の定義は不明(4-1-b)
(2)なし
(3)(基準5)
(4)(6-1-d)
B+
(1)「貴重」の定義は不明(2-3-1,2-4-1)
(2)(2-1-2,2-2)
(3)(基準3)
(4)(6.4)
森林利用をめぐる地域住民との紛争対立の回避

【評価基準】
(1)慣習的利用権の尊重 (2)地域社会との調和 (3)紛争対立地の認証不可
A
(1)(原則2,3)
(2)(原則4)
(3)(2.3,4.5)
B+
(1)(6.1-b)
(2)(6.1-e)
(3)紛争対立地に関する規定は特に定まっていない。訴訟、苦情、紛争の処理手順(Annex3-6)
B
(1)(5.2)
(2)(6.7)
(3)紛争対立地に関する規定は特に定まっていない。紛争解決のメカニズムは規定されていない。
天然林の大規模な皆伐回避、天然林の転換の禁止

【評価基準】
(1)天然林大規模皆伐の禁止 (2)天然林のプランテーション・土地利用転換禁止
B
(1)皆伐を禁止する規定はないが、経済面・環境面などから、間接的に伐採施業は持続可能であることが求められている(5.1,5.6,6.3)
(2)1994年11月以降に天然林から人工林に更新された森林については認証の対象とはならない(10.9) 土地転用・植林地化は原則不可。ただし、例外措置あり。長期的に確実に保全便益をもたらす転換である場合は例外許可(6.10)
C
(1)皆伐を禁止する規定はないが、経済面・環境面などから、間接的に伐採施業は持続可能であることが求められている(1.2-a,3.2-b,4.2-e)
(2)規定なし
B
(1)天然林に限らず大面積皆伐を回避すること(4.1)
(2)基準には含まれないが、日本の森林登記、計画の条件として、土地利用転換は原則的に禁止されていると考えてよい。
希少種(樹種、動植物)の保護

【評価基準】
(1)希少樹種(レッドリスト、CITES)の保護 (2)希少動植物(レッドリスト)の保護
A
CITES、生物多様性条約などをの国際条約締約国の順守。絶滅危惧種、生息地の保護(1.3,6.2) A
地域ごとに適用されるリストに規定される絶滅危惧種の生息地の把握、管理計画への反映(4.1-b) A
絶滅危惧Ⅰ、Ⅱ種、純絶滅危惧種の属する種、生息地の保護(2.3)
天然生態系への重大な影響(薬物、GM)回避

【評価基準】
(1)禁止農薬・肥料・除草剤の使用禁止 (2)遺伝子組換種の使用禁止 (3)外来樹種利用の規制
B+
(1)可能な限り使用しない(6.6) 容器の処理についても適切な対応を求める(6.7)
(2)禁止(6.8)
(3)禁止ではないが、在来種を優先とし、外来種の方が好ましい場合もモニタリングの実施を要求(6.9)
B
(1)可能な限り使用をしない(5.2-b)
(2)規定なし
(3)悪影響の回避、最小限利用を要求(4.2-b)
C
(1)可能な限り使用をしない(4.8)
(2)規定なし
(3)規定なし
認証製品のトレーサビリティ

【評価基準】
(1)認証材原料が認証森林から生産・流通していることの確保
(2)混合する非木材原料への高リスク木材(違法伐採、地域社会影響、生態系影響)の禁止
A
(1)Chain of Custody(管理の連鎖)
(2)2004年10月よりミックス品製造時に混合する非認証材(Controlled Wood)の条件が承認・実施されている。FSC-STD-40-005に規定。同時にControl
Wood向けの森林管理認証基準も設定されている(FSC-STD-30-010)
A
(1)Chain-of-Custody
(2)「問題のある由来を含む原材料の調達を回避するための要求事項の実施」という基準を2007年5月発行(Annex4付属書7)
B
(1)分別・表示システム
(2)混合する非認証材に関する規制は設けられていない

・A:すべて要求 B:一部要求 C:要求なし
・PEFCについては、相互承認されている各国制度が満たすべき基礎的規定を対象としている
・ 具体的に言及されている原則・基準、指標の番号を()に表示している

※国際環境NGO FoE Japan、地球・人間環境フォーラム(2008年)「フェアウッド~森林を破壊しない木材調達」より抜粋

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