日本の木材需要・供給
日本の木材需要・供給
日本の木材調達
日本は自国に充分な森林資源があるにもかかわらず、経済のグローバル化により、紙・パルプを含めて木材の約80%を、輸入に依存しています。過去10年間、この輸入依存の傾向はほとんど変わっていません。FAO(国連食糧農業機関)の統計によれば、2002年時点で、先進国の中で、木材の純輸入量(総輸入量-輸出量)が最も多いのが日本です。
日本の木材輸入量(2004年)を国別にみると、カナダ(12.0%)、オーストラリア(10.2%)、ロシア(9.5%)、そしてアメリカ(8.2%)と、温帯林ないしは北方林を持つ、いわゆる先進国が多いことがわかります。
カナダやオーストラリアの森林については、オールドグロースと呼ばれる原生林の減少を問題にする環境団体が依然として活発な伐採反対運動をしていますが、森林面積の減少までには至らず、地球規模の環境問題になっているとまでは言い難い現状です。
ロシアは市場経済への移行の中で森林・林業政策が二転三転し、本来、林業を監督する立場の営林署が、無秩序な伐採活動に加担するなど、混乱の最中にあります。特に、中央政府から遠い、極東ロシアやシベリアでは、木材生産量そのものは減少しているにもかかわらず、いわゆる違法伐採が横行していると言われています。極東ロシアやシベリアでは、人為的な原因による森林火災も多発しており、僻地であるため森林資源の減少が正確に把握されていない、あるいは情報開示がなされていないケースも多い。また、この地域の森林のかなりの部分が永久凍土の上にあり、伐採・火災跡地に太陽光が降り注ぐと凍土が溶けて、閉じ込められていたメタンガスが地上に噴出することになる問題も懸念されます。メタンガスは二酸化炭素(CO2)の約20
倍の温室効果があると言われ、ロシアでの森林減少はCO2吸収源の損失以上に大きな負の影響が生じてしまいます。
図2 金額でみる日本の木材輸入▼ |
資料:2007年4月9日林野庁報道発表資料「2006年木材輸入実績」 |
極東ロシア・シベリアからの木材の輸出先は、1990 年代は日本向けが最も多かったのですが、2002年頃を境に中国向けが急増し、いまや日本の3倍の輸出量となっています。中・ロの政府が対策をとり始めていますが、税関・役所の汚職構造やガバナンスの弱さが改善されないかぎり、違法伐採・貿易は収まらないだろうと言われています。
日本の木材輸入量のうち中国のシェアは2.8%ですが、輸入金額では、カナダを抜いて第2 位になりました(2006 年、図2)。この中の大部分はロシアなど他国から丸太を輸入して、加工後、日本やアメリカなどに再輸出しているものです。
中国から日本への木材輸出額が1,800 億円と大きいのは、合板・集成材・ボードなど加工度の高い木質材料が多いからです。しかも、家具はこれには含まれていません。家具や建具には極東ロシア産の高級樹種が使われているケースもみられ、原産国までのトレーサビリティを確認することが難しいため、中国から木材・木材製品を調達する際には、細心の注意が求められます。
熱帯木材を輸出しているインドネシアとマレーシアが日本の木材輸入量に占めるウエイト(シェア)は、それぞれ5.8%、6.3%です。日本からみると、数量的に大きいとは言えないが、インドネシアやマレーシアからみると、日本向けが両国の木材輸出量の第1位となっています。熱帯雨林の破壊は、南米アマゾンやアフリカ・コンゴ盆地で1960年代から問題になっています。熱帯雨林には利用可能な多様な樹木が豊富に存在するので、現地の安い労働力を使った、先進国主導の森林資源開発が早くから行われてきました。インドネシア・マレーシアの熱帯雨林は欧米から遠かったこともあり、1980年代以降になって、日本や華僑の業者が森林開発を推し進めました。インドネシア・マレーシアは、いまやアマゾンなどよりも森林減少のスピードが早い地域として、欧米から注目されています。特にインドネシアでは火災による森林減少も大きく、森林のCO2吸収・蓄積量が大きく減少しています。また、熱帯地域には陸上生態系の約半分の生物種が育まれているとされますが、例えば、インドネシアの森林が分断されていくが故に、希少動物であるオランウータンやスマトラゾウが生息地を失っているような状況は、地球規模の生態系・生物多様性の問題だと言えるでしょう。
日本の木材輸入、その影響はこのように世界中に広がっています。地域別の課題を下表にまとめました。
北米
主たる製品 | 原木、製材品、パルプ |
---|---|
用途 | 構造材、造作材 |
森林減少・森林火災 | 原生林の皆伐・減少、虫害による立枯れ |
違法伐採 | 特に大きな問題なし |
生態系影響 | 大規模な天然林皆伐に伴う植生変化 |
地域社会との摩擦 | アラスカトンガス国有林、カナダグレートベア雨林 |
森林認証 | 森林認証(CSA、SFI)普及 |
ウッドマイルズ | 中~大 |
極東ロシア、東シベリア
主たる製品 | 原木、製材品 |
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用途 | 構造用針葉樹合板、羽柄材 |
森林減少・森林火災 | 原生林の皆伐・減少、火災、凍土融解 |
違法伐採 | 違法伐採蔓延も対策不十分 |
生態系影響 | 沿海地方での生物多様性への影響 |
地域社会との摩擦 | 先住少数民族の狩猟地への影響 |
森林認証 | ロシア欧州部でFSC普及も、極東・シベリアは僅少 |
ウッドマイルズ | 小~中 |
中国
主たる製品 | フリー板、ボード、床板、家具 |
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用途 | 内装・造作材、家具 |
森林減少・森林火災 | 過伐による林地荒廃、砂漠化 |
違法伐採 | 世界の違法材のロンダリング地 |
生態系影響 | 過伐による土壌・水源涵養機能の破壊 |
地域社会との摩擦 | 家庭用燃料需要、劣悪な労働環境 |
森林認証 | 制度づくりは進展。CoC認証は急増中 |
ウッドマイルズ | 中 |
東南アジア
主たる製品 | 原木、合板 |
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用途 | コンクリート型枠、床板基材、造作、外装材、家具 |
森林減少・森林火災 | 熱帯林の荒廃、火災、農地や植林地、プランテーションへの転換 |
違法伐採 | 一部で対策進行も、ガバナンスに問題 |
生態系影響 | 熱帯林の生物多様性への影響。植林地の多様性喪失 |
地域社会との摩擦 | 植林・プランテーションの先住民族との土地所有権をめぐる対立 |
森林認証 | 制度づくりは進展も普及に至らず |
ウッドマイルズ | 中 |
欧州
主たる製品 | 製材品 |
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用途 | 構造用集成材 |
森林減少・森林火災 | 特に大きな問題なし |
違法伐採 | 特に大きな問題なし |
生態系影響 | 特に大きな問題なし |
地域社会との摩擦 | 特に大きな問題なし |
森林認証 | 森林認証(FSC、PEFC)普及 |
ウッドマイルズ | 大 |
豪州
主たる製品 | チップ |
---|---|
用途 | 紙 |
森林減少・森林火災 | 原生林の減少、火災 |
違法伐採 | 特に大きな問題なし |
生態系影響 | 大規模な天然林皆伐に伴う固有種への影響 |
地域社会との摩擦 | タスマニアで環境保護側と摩擦 |
森林認証 | 森林認証(AFS)普及 |
ウッドマイルズ | 中 |
南米
主たる製品 | チップ |
---|---|
用途 | 紙 |
森林減少・森林火災 | 熱帯林の荒廃、火災、農地や植林地、プランテーションへの転換 |
違法伐採 | アマゾン周辺で違法伐採蔓延。ガバナンスに問題 |
生態系影響 | 熱帯林の生物多様性への影響。植林地の多様性喪失 |
地域社会との摩擦 | 植林・プランテーションの先住民族との土地所有権をめぐる対立 |
森林認証 | 一部植林地などでFSC普及 |
ウッドマイルズ | 大 |
アフリカ
主たる製品 | チップ、原木 |
---|---|
用途 | 紙、家具 |
森林減少・森林火災 | 熱帯林の荒廃、火災、農地や植林地、プランテーションへの転換、薪炭材利用 |
違法伐採 | コンゴ流域周辺で違法伐採蔓延。一部対策進行もガバナンスに問題 |
生態系影響 | 熱帯林の生物多様性への影響。植林地の多様性喪失 |
地域社会との摩擦 | 家庭用燃料需要、植林・プランテーションの先住民族との土地所有権をめぐる対立 |
森林認証 | 一部植林地などでFSC普及 |
ウッドマイルズ | 大 |