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01. 木材デューデリジェンス

実践的な情報をお届けします

01. 木材デューデリジェンス

合法性確認のための木材DDのステップ

2017.10 掲載
2018.2 更新

合法性確認のための木材DDは以下の3つのステップからなります。

CW法に対応する合法性確認のための木材DDのステップ

CW法に対応する合法性確認のための木材DDのステップ

また、CW法に対応する合法性確認のための大まかな流れをフローチャートで示します。この図はあくまでも簡略化されたものですので、詳しい手順や参考情報は各項目をご覧ください。

CW法に対応する合法性確認のための木材DDフローチャート

CW法に対応する合法性確認のための木材DDフローチャート

なお、ここではCW法に対応するということで、合法性のみを確認することとしていますが、木材調達における持続可能性配慮をお考えの方は「フェアウッド調達」を実施することをお勧めします。

1.情報収集

CW法規定に従い、以下の項目について情報を収集します。

  1. 種類
  2. 樹木の樹種(通称、和名及び学名)
  3. 伐採された国または地域
  4. 重量、面積、体積または数量
  5. サプライヤーの氏名・名称及び住所
  6. 法令に適合して伐採されたことを証明する書類

樹種については、通称(木材取引で使われる製品名等)や和名のみではリスク情報の確認がむずかしいため、学名を確認する必要があります。通称名や和名が学名と1対1で対応していない例もあるので、樹種調査においては、通称・和名に加えて学名を同時に確認するようにします。

樹種の通称/和名/学名の対応の例[2]

通称(製品名) 和名 学名
ホワイトウッド、スプルース エゾマツ、トウヒ Picea jezoensis
レッドウッド、アカマツ ヨーロッパアカマツ Pinus sylvestris
紅木、ローズウッド 紫檀 Dalbergia spp.
[2]参考資料は以下

2.リスク評価

1で収集した情報のうち樹種及び伐採地(国または場合によっては地域)について、国が提供する情報を中心に違法伐採に関して公開されている一般的なリスク情報に照らしてリスクの高低を評価します(初期リスク評価)。
樹種・伐採地の両方、またはいずれかでリスクが十分に低いと判断できない場合、さらなる情報収集・確認を行う詳細リスク評価に進みます。なお、樹種や伐採国・地域が不明だったり、樹種の生息地と伐採国・地域が一致しない場合、リスクは高いと判断することになります。

リスク評価は、サプライヤーまたは製品ごとに最初の入荷に対して行い、少なくとも年に一度は更新しなければなりません。また、樹種やサプライヤー、伐採地が変更した場合には、リスク評価は新たに行うことになります。

i. 初期リスク評価

初期リスク評価では、主に(1)樹種と(2)伐採国・地域のリスクの高低、加えて、(3)サプライチェーンに関わる事業者による違法行為への関与を示す情報がある場合も、初期リスクは高いと判断し、詳細リスク評価に進むことになります。

(1)樹種リスク評価

樹種の合法性リスクについては、ワシントン条約や国連などで取引が規制されている樹種かどうか、レッドリストで絶滅の危険度が高い樹種かどうかを確認します。また、過去の違法伐採の事例に含まれている樹種の場合、樹種が不明な場合にも、高リスクと判断します。

○ワシントン条約:ワシントン条約記載されている樹種の場合、付属書I(商業取引禁止)であれば取引不可、付属書IIまたはIIIであれば輸出国発行の許可証や輸入に当たっての手続きが必要となります。適切な許可証と手続きを示す書類があれば、これ以上のステップは不要となり、取引可と判断できます。ワシントン条約詳細については以下のウェブサイトを参照できます。

○国連制裁よる取引禁止樹種の場合、取引は不可となります。

○国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストの記載種の場合、伐採国等で規制がかけられている可能性があるため、さらなる情報の確認が必要となります。

(2)伐採国・地域リスク評価

伐採国・地域における森林開発・伐採、木材取引等に関して違法行為の重大なリスクがないかどうかを確認します。

日本で使われている木材の主な生産国・地域リスク評価

伐採国・地域リスクが高い
伐採国・地域リスクが低い
国・地域名 CPI(2016年) 違法伐採推定割合 出典
ロシア欧州部 29 15 E
ロシア極東 29 50 E
ルーマニア 48 - -
ウクライナ 29 - -
ドイツ 81 - -
ノルウェー 85 - -
スウェーデン 88 - -
フィンランド 89 - -
インドネシア[全体] 37 60 C
 インドネシア[木材] 37 35 B
 インドネシア[紙] 37 70 B
マレーシア 49 35 A
 半島 49 5 B
 サバ 49 10 B
 サラワク 49 50 B
ビルマ・ミャンマー 28 85 B
フィリピン 35 10 B
ベトナム 33 30 B
ラオス 30 80 A
カンボジア 21 85 B
中国[全体] 40 - -
 中国 [木材] 40 20 B
 中国 [紙] 40 20 B
ブラジル・アマゾン 40 50以上 A
ペルー 35 80 -
チリ 66 - -
米国 74 - -
カナダ 82 - -
オーストラリア 79 - -
ニュージーランド 90 - -
パプアニューギニア 28 70 A
ソロモン諸島 42 85 B
日本 72 - -

違法伐採推定割合の出典:

  • Alison Hoare. 2015. Tackling Illegal Logging and the Related Trade; What Progress and Where Next?. Chatham House. (p.12 Table 2 Percentage of total timber production estimated to be illegal, 2013)
  • UNODC. 2013. Transnational Organized Crime in East Asia and the Pacific; A Threat Assessment. (P.95 Figure 5 Recent estimates of the proportion of illegality)
  • OECD. 2007. The Economics of Illegal Logging and Associated Trade. (P.17 Table 2)
  • The World Bank. 2006. Strengthening Forest Law Enforcement and Governance. (p.9 Table 2.1 Estimates of illegal logging as a percentage of total wood harvest)
  • E:Seneca Creek Associates, LLC. 2004. “Illegal” Logging and Global Wood Markets: The Competitive Impacts on the U.S. Wood Products Industry. (p.3-5 Table 1 Estimates of Illegal Logging Activities and Estimates of Production and Trade)

※違法伐採推定割合は算出方法も様々存在しており、一般的に数値には非常に幅があるもので、表示は低い数値を採用する傾向があります。また、この割合はあくまで参考数値であり絶対的なものではないことには注意が必要です。

リスクをみる方法の一つには、国・地域ごとの違法伐採の広がり度合いを示す違法伐採推定割合が高い場合、伐採国・地域リスクは高いと判断することになります。なお、推定割合が報告されていない国・地域で違法伐採が存在しないということではありません。

もう一つの方法は、ガバナンス状況をみる方法があります。違法伐採問題がその国・地域の行政統治のレベルや汚職腐敗と密接な関係を示していることがわかっているため、ガバナンス状況(森林分野の法制度の執行状況、汚職・腐敗の程度、紛争の発生状況、情報公開の度合い等)が低い場合には、リスクが高いと判断することになります。また、武力紛争が発生している国・地域の場合もリスクが高いと判断します。

○違法伐採の広がり度合い:木材の合法性・持続可能性を確認するための情報提供ウェブサイトや、国連機関、NGOや研究機関、メディア等による違法伐採に関する報告書等を参考に、重大な違法伐採に関する報告がある場合は、詳細リスク評価に進むことになります。なお、国内に違法伐採割合が異なる地域が存在する場合には、地域ごとに評価を行うか、リスクの高い評価を採用します。

  • NEPCon Sourcing Hub:EUTRで求められるDDに対応しようとする企業を支援することを目的に、EUTRモニタリング機関のNEPConが提供する木材の合法性に関するリスク評価のための情報・ツール提供ウェブサイト。世界の木材取引の87%を占める62カ国をカバーしている。
  • Global Forest Registry:国際的な森林認証制度FSCがNEPCon等と共同で開発している違法性・持続可能性に関する国ごとのリスクを評価するための情報提供ウェブサイト。

○ガバナンス状況:腐敗認知指数(CPI)が50未満など、森林の統治や法制度の実効性の度合いが低いと評価される場合は、詳細リスク評価に進むことになります。

  • 腐敗認知指数(CPI):腐敗・汚職を減らすための調査・啓発を行う国際NGO国際透明性機構(Transparency International:TI)が毎年更新している、公的部門の腐敗の認識を測る指数。評価対象となる国・地域数は毎年変わるが、2016年版では176カ国。
  • 世界ガバナンス指標(Worldwide Governance Indicators):表現の自由・説明責任、政治的安定・非暴力など6つの指標で各国のガバナンス状況について200カ国以上を対象に、世界銀行が毎年更新している。

○その他の情報源:世界各国の違法伐採に関する情報を包括的にみることができる情報源。

  • Illegal Logging Portal:英国のシンクタンク王立国際問題研究所Chatham Houseが管理運営する違法伐採に関する情報ウェブサイト。国やテーマ別に情報検索ができる。
  • LEAF(Law Enforcement Assistance for Forests:国際刑事警察機構(インターポール)による違法伐採及び関連する環境犯罪対策プロジェクトのウェブサイト。

 

ii. 詳細リスク評価

初期リスク評価によってリスクが高いと判断される場合、一次サプライヤーを経由する形で伐採国・地域、可能であれば伐採場所までのサプライチェーンを確認します。伐採状況や森林管理、木材取引がどのように行われたのかについて情報収集を行い、違法リスクが十分低いレベルであるかどうかを判断します。リスクが十分に低いと判断するかどうかは、自社として納得できるかどうかということになります。つまり、違法リスクが十分に低いと判断した根拠や判断基準について、社内外に対して透明性のある形で説明責任が果たしているかという点をクリアできるかどうかと考えるのがよいでしょう。

この段階では書類やサプライヤーからの情報に加えて、NGOやメディアを含む第三者など多様な情報源を利用して行うことが重要です。また、認証制度を活用することも可能ですが、制度に基づいて発行されている書類だけでなく、認証制度自体についても信頼できるのかどうかを、様々な情報に基づいて自らが評価・判断する必要があります。

なお、十分な情報収集ができない場合、リスクが十分に低いとはみなすことはできないため、次のリスク緩和措置へ進むことになります。

サプライチェーンのリスク評価

伐採地までのサプライチェーン上に違法行為に関連する業者がいないかどうか、違法材の混入のリスクの有無、木材の価格の妥当性や通常と異なる取引方法がないかどうかなどによりサプライチェーンのリスクを確認します。一般的にサプライチェーンが長く複雑なほど、違法に伐採された木材がサプライチェーンに入り込む可能性が高くなります。

まず、伐採地までさかのぼるサプライチェーン上の業者リストを作成し、伐採業者、集材業者、製材業者、輸出業者、輸入商社、メーカー、建材問屋などを特定します。その上で、個々の業者についての情報収集を行います。例えば、森林認証を取得しているかどうか、認証の有効期限が有効かどうか、苦情処理の申し立てを受けていないかどうか、政府による合法性確認の評価を受けているかどうかについて情報収集も行います。さらに、NGOやメディア、政府関係から情報収集を行い、違反事例の有無、違法伐採への関与履歴の有無の確認を行い、信頼できるサプライヤーかどうか吟味します。

書類の評価

まず証明書類がカバーする法令の対象範囲を確認し、範囲が十分かどうかを判断します。合法性の範囲については、EUTRにおける合法性定義に定められている以下の5つの分野を参考にするのが望ましいでしょう。

  1. 伐採に関する権利
  2. 伐採に関する税金等の支払い
  3. 生物多様性や自然環境の保全
  4. 土地や林産物の利用等に関する第三者の権利
  5. 貿易及び関税

以上の範囲について、明確に確認することが可能で検証可能な書類による裏付けを得ているかどうかを確認します。適用範囲が不十分であれば追加的に確認すべき書類等を要求するなどして、その書類でカバーされていない法令違反の可能性がないかどうかを確認します。

次に、証明書類の発行手続きにおいて汚職や違反行為、不適合等の事例の報告の有無について情報収集を行い、書類の信頼性について評価をします。そのためには、これらの各分野での問題事例など、NGOやメディア、政府関係から情報収集を行い、入手した書類が信頼できるものかどうか、類似の不審情報がないか確認します。この際に、CPIが50以下の評価の国・地域による文書については、信頼性が低いとみなし証明する書類としては利用できないと判断します。

いずれの場合も、サプライヤーからの情報だけに頼るのではなく、NGO等を含む多様な情報源を利用して、信頼性が低くないことを確認することが重要です。

認証制度の活用方法

詳細リスク評価において認証制度や政府の合法性証明制度を活用することもできます。しかし、証明書があるだけで合法性を確認できるとやみくもに信用するのは場合によっては危険です。

証明制度が望ましい法令の対象範囲をカバーしているかどうかを確認するとともに、認証制度の信頼性について、認証機関についての情報や過去に認証制度についての批判が行われていないかどうかを確認します。

また、認証製品については、認証原料が製品全体に占める割合がどれくらいなのか、非認証原料に対する合法性評価がどのように行われているのかを確認する必要があります。非認証原料については、伐採地までさかのぼるサプライチェーンの情報収集を行い、そのリスクを評価する必要があります。この際には、過去に認証がはく奪・凍結されている業者でないかどうかなどに目を向けることが重要です。

○認証制度や認証が剥奪・凍結されたり、NGOなどから問題が提起されている事例: リンク(作成中)

3.リスク緩和措置

リスク評価によってリスクが十分に低いと判断されないものについては、以下のような緩和措置をとります。緩和措置は以下に限られているわけではありません。また、リスクと緩和にかかるコストや時間は比例する場合が多いことに注意が必要です。

  • 伐採地(国・地域ではなくFMUなど最小の伐採区域レベル)のデスクベース監査
  • 伐採地(国・地域ではなくFMUなど最小の伐採区域レベル)の現地監査
  • 信頼度の高い認証材・証明材の購入への切り替え
  • 伐採国・地域の変更
  • サプライヤーの変更

このようなリスク緩和措置を実施してもリスクが高いと判断される場合や、これらの措置が実施できない場合には、違法材であるリスクが高いので、購入を控えることになります。