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02. 世界の森林事情

中国

木材DD国別リスク情報 - 中国 (2)木材輸入の現状と違法伐採対策など

中国

2018.2 掲載

(1)違法リスクの高い輸入相手国の事例では、中国の主な木材輸入国で違法リスクの高い国を事例として紹介した。ここでは、その中国の輸入の全体像、関連する違法伐採対策の仕組み、最後に中国から輸入をしている消費国の対応について、木材調達リスク/木材デューデリジェンス(DD)の観点から紹介する。

中国の木材輸入の現状

中国の紙パルプを含む木材製品の輸出入状況に関して詳細にまとめた最新の報告書の一つ。現在ある中国に関する報告書の中では情報も新しく客観的な分析に基づいており、DDを行う企業にとっても最も参考になるものの一つとフェアウッド・パートナーズでは考えている。針葉樹、広葉樹別の分析、原産国別の分析、製品別の分析があり、それぞれのリスク情報についても記述がある。中国から輸入している企業は必見。以下、DDにおいて重要と思われるポイントを中心に、簡単に内容を紹介する。

輸出入状況全般

中国の輸入量は2016年には丸太換算で290百万m3(丸太換算、以下同)となっており、過去最高を記録。2006年に比較すると約2倍にもなっているが、これは国内消費量の増加によるものである。一方で輸出額も2006年の170億ドルから高リスク国から輸入の割合自体は減少(2006年の90%から2016年の67%まで)。しかし輸入絶対量は継続して増加(2016年には60百万m3)。

広葉樹・針葉樹別分析

針葉樹は数量で輸入全体の7割、金額にして半分を占める。近年オセアニア(豪州・ニュージーランド)からの植林木の輸入が急増(2016年に15百万m3/18億ドル)。これらについては、比較的リスクは低いとみなされる。一方で以前は90%を占めていた高リスク国ロシアからの輸入が急減。
広葉樹は数量にすると輸入全体の30%にしか過ぎないが、金額にすると約半分を占めている(2016年は5.97百万m3/985百万ドル)。PNG及びソロモン諸島が主要輸出国であり、違法伐採、違法取引のリスクが非常に高い。

地域別分析

2016年のアジアからの輸入は7%に留まり、一方でアフリカからの輸入が20%に達した。広葉樹の60%が中央アフリカから、25%が西アフリカから中国に輸出されている。アフリカの主な輸出国には赤道ギニア、モザンビーク、カメルーン、コンゴ共和国及びナイジェリアがあげられている。

製品別分析

全般に、全体に占める丸太の輸入量が激減(過去10年で約70%から40%へ)。また合板も減少傾向にあり(過去10年で75%減)、マレーシア、ロシア、インドネシアが中国への3大供給国であるがインドネシアからの輸入が激減。一方で製材、チップ、家具はそれぞれ約4倍、15倍、8倍となっている。
製材の主な輸出国はタイ(6百万m3/12.7億ドル)、米国(3百万m3/13.3億ドル)。アフリカからの高級樹種製材輸入が増加し、南米からの輸入は減少している。ベニヤに関してはベトナムが全体の80%を占めている。またチップもベトナムが最大の輸出国。ただしオーストラリアが伸びて来ている。いずれも違法リスクは比較的低い。家具については、過去10年でベトナムからの輸入が120倍にもなっており、メコン諸国のローズウッドを用いるなど違法リスクが著しく高い。紙・パルプの輸入は過去10年間で80%増加。インドネシア及びロシアからの輸入は天然林由来で違法リスクが高い。

輸出について

中国からの輸出先についても紹介があり、合板、家具、ファイバーボードについては輸出相手国を示す棒グラフが記載されており、日本もグラフ中に記載されている。また「敏感な市場」(違法木材規制を導入した国)への輸出として、日本の事例も入っており、金額別に見ると家具の輸入が圧倒的であることがわかる。

中国の違法伐採対策

英シンクタンク、チャタムハウス(英国王立国際問題研究所)の2014年の報告書。チャタムハウスは各国の違法木材規制対応について定期的に評価報告書を出しており、その一つ。報告書は、違法木材取引の問題に対する反応を、メディア、政府、民間企業ごとに分析評価し、評価対象国の違法取引の推定を出している。
本報告書には上記のカテゴリーに沿って中国に関する初歩的情報が載っており、違法木材取引についての中国政府の対応を紹介している点で参考になる。ただし、その後中国はDD導入への進捗を重ねており、情報としては少し古いものであることに注意する必要がある。DD導入については以下に紹介するInFIT(英国開発省(DFID)と中国政府の協働プログラム)の文書とあわせて参照されたい。以下、本報告書の内容を簡単に紹介する。
中国には違法木材取引を規制するための正式なハイレベル政策や法令は存在しておらず、中国政府の反応への評価は低い(政府調達政策を除いては2008年に行われた前回の評価と同様の100点中25点にとどまる)。国内では2008年の中国林業科学研究院(CAF)による世界的な違法伐採の影響検証、2009年の国家林業局傘下の国際林産品取引センター(CINFT)の設置、2010年の二国間協定支援のタスクフォースの設置などが行われ、以下に続く合法性証明制度の構築に向けた準備が行われている。
2011年に中国木材合法性証明制度(CTLVS: Chinese Timber Legality Verification Scheme)が発表され、政府間の二国間協定に基づくCGTVS(Chinese Government-guided Timber Verification Scheme)と民間ベースのCATVS(Chinese Association-guided Timber Verification Scheme)の2種からなる仕組みが決定している。ただし2013年時点ではCGTVSの基盤となる二国間協定は締結されていない。CATVSに関しては中国林産工業協会(CNFPIA)が中心となり必要な指針やガイドラインを作成することが決定されている。
民間企業の取組としては、2010年から2012年にかけFSCのCoC認証を取得した企業数は30%増加し、その後も増加中である。また、中国森林認証制度(CFCS: China Forest Certification Scheme)が2007年発足し、2014年にPEFCと相互承認している。
違法木材取引の割合に関しては、2000年から2013年の間に違法と推測される輸入量が40%から25%近くまで減少。ただし絶対量は増加。高リスク国としてロシア(丸太・製材)、インドネシア(木質パルプ)、PNG及びソロモン諸島があげられている。また、ミャンマー、ラオス、ベトナム(製材とべニア)も高リスク国として挙げられている。さらに、家具について、ローズウッドを主とする硬材丸太のメコン地域やアフリカからの輸入を高リスクとして指摘。
本報告書は全般に中国における取組を、前回調査の際よりも進捗があったとして評価している。
EUのFLEGT行動計画を推進するFLEGT Facility がまとめた、中国国内におけるDDに向けた取組に関する最新情報の一つ。時に不明瞭な中国の取組について、現在の全体像が簡潔にまとめられている。DDを行う日本企業にとって、中国企業のDDの取組の進捗状況について知ることができ、限定的ではあるが有益と言える。以下、内容を簡単にまとめた。
中国における取組は、二本立てで行われており、政府当局であるSFA(中国国家林業局)の主導する政策的枠組の構築と、業界団体を中心とするCTLVS(中国木材合法性証明制度)がある。政府は短期には輸入材の合法性を管理するための何らかの措置の導入を、長期には合法性証明の強制的な法的枠組みを計画している。CTLVSに関しては各業界団体が自主的基準やツールを構築しているが、政府の措置とこの自主的取組はお互いに整合性を持つものになることを目指している。
英国開発省(DFID)と中国政府(SFA及び中国商業省)の協働プログラムであるInFITは、Forest Governance Markets and Climate(FGMC、森林ガバナンス市場及び気候)の傘下にあり、CAF(中国林業科学研究院)とともに業界団体が合法性基準を構築する動きを支援している。その中で、CNFPIA(中国林産工業協会)が2017年9月、合法性基準を完成、公開している。この基準では、FMレベルでの合法性、土地への権利なども合法性確認の項目に入っている。基準は国産材、輸入材の両方に適用され、CNFPIAのみならずCTWPDA(中国木材・木材製品流通協会)の会員も従うよう政府から推奨される予定であり、この二つの団体で中国の木材輸入・輸出業者の80%がカバーされることになる。ブリーフィングにはCNFPIAの基準の概要が表になって記載されている。
InFIT及びCAFは同時に、中国企業がDDシステムを構築することを支援しており、そのためのツールキットが発行されている。ツールキットには、DDガイダンス、各種雛形や必要なツールが含まれている。さらに、この二つの機関と協働するSFAの傘下にあるCINFITのもと、中国責任ある森林製品貿易及び投資アライアンスも立ち上げられている。
ここまでが、中国の木材・木材製品の輸入状況と中国における違法伐採対策に関する包括的な情報をまとめた資料である。特に注目すべき点として、中国の高リスク材輸入の割合自体は減少しているものの、輸入の爆発的増加により数量自体は増加していることが挙げられる。高リスク材の割合減少は、中国国内のみならず世界的にもDDという概念がスタンダードになってきていることは一因と言えるが、まだまだ企業によるDDの実施は多くの国では追いついていない。特に気をつけるべき品目としてPNG及びソロモン諸島及びアフリカを原産国とする製品、複合製品であり違法リスクが著しく高い可能性のある家具などが挙げられる。

中国から木材製品を輸入している消費国の対応

ここからは、中国の輸出相手としてのイギリス及びEUの視点からの報告書を紹介する。EUは2013年からEU木材法を施行しており、違法木材の輸入に対して罰則が課されることから、中国からの木材の扱いについては法の施行初期段階から注意している。以下、二つ紹介する。

2015年2月、当時のEU木材法のイギリスにおける管轄官庁、国立測量局(NMO)がイギリス市場における中国からの輸入合板に関する取締結果を報告書としてまとめた。NMOは、調査対象として特定した企業16社に対し中国からの合板に対して適用されるDDシステム(DDS)に関する情報を提出するよう求めた。ちなみに調査対象となった企業の輸入量は前年の中国からの輸入合板の10%の量を占めている。
うち14社の提出したDDSが、EU木材法に照らして不十分と判断されている。そのうち多くは、書類収集、リスクアセスメント、リスク緩和がどのように行われた結果リスクが無視できるレベルと判断されたかという説明がきちんとできないものであったという。さらに、サンプルとして購入された合板を顕微鏡で検査した結果、13件中9件は、提出情報とは異なる樹種のものであったことがわかっている。
違法伐採問題に詳しいNGO、FERNの発行した報告書。より中国の違法伐採対策を包括的な視点から分析しており、各ポイントの詳細なデータも載っている。中国における関連する取組の進捗に果たすEU(EU委員会やNGOなど)の役割の可能性についての提言を含む。以下、日本企業にとっても興味深い情報を簡単にまとめる。
中国の国内消費は今や全体の需要の75-80%にものぼってはいるものの、世界最大の輸出国であり続けている。輸出の80%(数量ベース)は合板と家具で、米国(28 %)、EU (16%)及び日本(7%)の3地域で中国製品市場の半分を占めている。
「一帯一路」政策やアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立など、中国企業は原材料確保を主な目的として海外進出・投資を進めている。進出や投資に際しての社会環境影響に関しての批判も激しく、中国政府は海外企業へのガイドラインを多数発行している。
EUと中国は、2009年にBCM-FLEG:Bilateral Cooperation Mechanism on Forest Law Enforcement and Governanceを締結し、違法伐採対策の面で協働することとなった。さらにイギリス開発省の森林ガバナンス、市場及び気候((FGMC)プログラムのもと、中国国内の合法性証明制度の構築に向けた取組が進んでいる。
中国では政府の取締は厳しい面がありつつも、汚職認識指数(CPI)のランキングでは175カ国中100位に位置するなど、ガバナンスリスクは高い。ヨーロッパベースのNGOの積極的な活動を勧めている。また、イギリス政府の関わっている合法性証明制度の構築について、EU委員会により積極的に関わるよう提言している。
EU木材法のもと監督機関として認定されているNEPCon が中国の国産材の合法性リスクを評価した結果をまとめた報告書。考慮された合法性リスクは、伐採権、税金や各種料金の支払、伐採作業、第三者の権利、取引や輸送に関するものであるが、本報告書によると中国のスコアは100点中73点となっている。報告書中には各リスクの詳しいマトリックスが記載されている。中国国産材を購入する日本企業には基本情報として参考になると考えられる。
英国の製材、デッキ材、床材、造作材(集成材)などを手掛けるBrooks Bros社がEU木材法の要求事項に基づき、DDシステムを構築し、中国の木材サプライチェーンに対して実施したDDとその結果を紹介した資料。DDの結果、サプライチェーンの改善に取組んだ内容も盛り込まれている。
※本資料は、EU日本代表部主催の「国際ワークショップ:木材・木材製品の合法性確認のためのデューディリジェンス」(2017年6月28日、29日、30日の3日間、大阪、東京で開催)にて使用された資料を作成者の許可を得て掲載するものです(仮訳:FoE Japan)。