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03. 違法伐採問題

03. 違法伐採問題

ロシアの違法伐採(2)

ロシア

ロシアの違法伐採(2)

2009年5月掲載

狭義での違法行為

1.盗伐
盗伐は通常、ブリゲート(小規模な伐採団)によって行われます。通常2-4人で活動し、夜間、闇夜に紛れて盗伐行為を働くのです。調査中も径にばらつきのある木材を積載して夜遅くに走る木材運搬トラックを何度か目撃しました。このように夜間を利用して運送する場合もあれば、捏造した伐採証明書類を使用する場合や監視所などにおける担当役人へ賄賂を支払うことでそれ以後の流通経路をクリアする場合もあります。
ある調査では、このような盗伐を行った場合、トラック一台分で貯木場まで運んで約2500ドルの収入(1台10 m3とすると250ドル/ m3。監視所での賄賂が200~300ドル)があると言う聞き取り結果が得られています。

2.間伐による禁伐種の伐採、禁伐区、伐採制限区での伐採
森林局および営林署は、高級樹種であるナラ、タモ、チョウセンゴヨウが優先的であるこの地方の森林フォンドにおいて、商業開発林の管理と流通管理に従事してきました。しかしながら営林署が森林施業という名目で行ってきた間伐(衛生伐、保育伐)が、用材調達の隠れ蓑となっているという指摘が1990年代中頃から目立つようになっています。このような間伐や林道建設という名目で禁伐種、希少高級樹種が年間許容伐採量算定の枠組み外で伐採され、輸出され続けてきたことは、市場に供給され続ける当該樹種の製品を見ても明らかです。名目上は合法性が担保されているだけに最も遡及が難しく、かつ重大な違法行為と言えます。

3.関税法違反など流通過程における違法行為
サプライヤーとバイヤー間で行われ、取引き数量やグレードを過小申告するなど、不当に関税を下げることで利潤を確保し、組織的に利益を分配する商業上の違反行為です。これは、ロシア政府にとって国益に反するものとして、最も問題視されているタイプの違法行為です。

また、加工というプロセスを経ることで、伐採地で発行された証明書類は、それ以後の流通過程でチェックされる必要がなくなることを利用したり、偽造証明書や証明書の使い回しにより検問所の目を誤魔化し、規定量以上の木材を搬出する例も確認されています。この検問所の警察官と林産業者の癒着の問題も深刻です。

4.長期リースを有する業者による違法行為
この違法行為の場合、規定以上の量を伐採する過伐の問題が主ですが、当該地方の広葉樹資源は原則的に択伐されるため、衛星・航空調査などの遠隔調査によっては発見が難しく、地上調査が最も確実な方法になります。このため、調査員と業者間の汚職関係や、調査員や調査費の削減が、解決を複雑化しています。
また、発覚しても、罰金により解決をみる場合がほとんどであるため、根本的な問題が存続し続ける場合が多い。上記1に示した小規模な伐採団が、リース保有企業にお金を払って許容伐採量を超えて伐採させてもらうケースもあります。このような伐採団には、加工、輸出能力がないため、そこで調達された木材を、反対にリース保有企業に売却することになりますが、企業側も木材の販売量を増やすことができ、追加収入となるメリットがあります。

5.中国人ビジネスと関連した違法集材、加工
最も新しいと同時に極めて深刻な問題を生み出しているのが、このケースです。近年、中国人のペネトレーション(伐採をしたり製材工場を作ったりなど)をコーディネートしているロシア国内の中国人あるいは中国系企業がいます。通常伐採権を獲得したり工場を作るには地元の役人とのパイプが不可欠なため、賄賂などを使い、調整を行います。
始めに違法に工場を作ってしまい、それを既成事実として合法化させる例もあります。ロシアの法制度上、撤去や操業停止に伴う損失を行政が補償しなければならないため、違法でも作ってしまったらそれを撤去したり操業を止めさせることはかなり難しいです。

このようにして中国人が製材機を持ち込み、小規模の業者と組んで、盗伐あるいは現金により違法調達した木材を製材して違法流通、輸出させている。それらの木材は、中国国内で高度に加工され、日本や欧米に再輸出されています。ロシアから中国への流通は伐採から輸出まで違法行為が横行しています。従って、ロシアから直接日本向けに輸出される場合と中国を経由する場合では、流通の質の面で大きな違いがあるのです。

広義での違法行為(持続可能性に対する非モラル的行為)

6.森林生態系の劣化を導く資源利用(持続可能性、生物多様性)
上 記1から5までの違法行為にまで及ばないか、あるいは現行の法律上の規制をクリアしている場合にも、当該地方の森林管理体制、森林施業の現状を考慮し、森林生態系を破壊する可能性を検討する必要があります。2007年初頭の森林法の改定とそれに伴う森林管理権限の変更は、地方林業の大幅な変更を余儀なくさせ、
これに国家レベルで推進される木材加工業と隣国からの需要の高まりを受けることで、持続可能な森林管理や未開発のまま残されてきた保護価値の高い森林の保護を困難にしています。
このような状況においては、木材購入者とサプライヤー間の情報の透明性に立脚する以外に、明確に合法性が担保された木材を購入することは不可能です。

7. 森林と結びついた地域住民(先住民)の生活を侵害する資源利用
ロシアにおいて大規模な開発を免れた森林地帯がこれほどまでに残されているのは、古くからこのような奥地の森林に居住し、狩猟を生業としてきた先住民族たちがソビエト連邦時代には、毛皮調達を主な業務とした国営狩猟組合の一員としてこの広大な森林を利用し、国民として生活する権利を保障されていたからに他なりません。ソビエト連邦の崩壊と共に、これらの権利は失われ、貧困と失業が深刻な問題となりました。かろうじて道路が敷設されているこのような奥地の森林は、隣国からの木材需要の高まりや、台頭する資本主義経済へ対応するため、真っ先に伐採の対象にされることになります。
森林開発は、賠償金の有無に関わらず一義的に彼ら先住民の伝統的な生活形態を破壊し、人権の侵害になる可能性をはらんでいます。

加えて、このような狩猟を生業とする先住民の居住地の森林を開発することは、端的に言って上記6の生物多様性の破壊をも意味します。


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