第20回「SDGsで自分を変える、未来が変わる」(2017.9.27)
2017.8.17掲載
2017.10.25更新
2015年秋に国連で合意されたSDGs=持続可能な開発目標。環境・CSR・開発分野に関わっている人であれば聞いたことのない人はいないほど知られているキーワードです。その内容は人や組織によって同じものは二つとないほど多種多様な分だけ、イマイチとらえどころのない考え方と見えるかもしれません。
そこで今回の研究部会では、ピコ太郎さんでも話題になったニューヨークの国連ハイレベル政治フォーラムの日本政府プレゼンやレセプションをプロデュースしたSDGsのエキスパートの川廷さんにSDGsを読み解いていただきます。
ESG投資とエシカル消費、そしてフェアウッドというキーワードを絡めて、ご本人の日頃の活動とSDGsの関わり、どんなふうにSDGsを自分事として位置づけられているのか、たっぷりお話しいただきます。
速水林業太田賀山林 | 南三陸町FSC & ASCダブル認証記者発表 |
開催報告
(報告:高田大輔/鎌田茉莉花 FoE Japanインターン)
今回、研究部会では博報堂DYホールディングスCSRグループの川廷昌弘さんをお招きして『SDGsで自分を変える 未来が変わる』というタイトルで講演をしていただきました。川廷さんは1986年博報堂入社し、環境コミュニケーション領域に専従。2010年には「生物多様性条約締約国会議(COP10)」で「教育とコミュニケーション」決議で提言し成果を挙げ、国際自然保護連合教育コミュニケーション委員会のメンバーに。営利・非営利を問わず社会課題のCEPA(コミュニケーション・教育・普及啓発)のプロデュースを行いました。現在は、SDGsが主要テーマで、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンSDGsタスクフォース・リーダーを務めています。
お話の冒頭では、川廷さんが薫陶を受けた偉人たちの紹介もありました。例えば、流域思考を提唱している慶応大学教授の岸由二氏が、「生物多様性」という言葉を「生き物たちでにぎわう世界」と表現しており、生物多様性という言葉の神髄を実に的確に、そして一般市民に分かりやすく、伝えていることに尊敬の念を表していました。また、明治維新の時代、日本を経済面で大きく牽引していった渋沢栄一氏が、“正しい道理の富でなければ、その富は完全に永続することができぬ”と「道徳経済合一説」を唱えていたことにも大きな関心を寄せていました。川廷さんは「この言葉は今まさに、現代を生きる我々が受け止めなければならない言葉である」と述べ、明治時代にすでに、このような境地に立っていた日本人がいたことを忘れてはならないことを強調していました。
さて、メインテーマである「SDGs」とは「Sustainable Development Goals」の略称で、地球規模の課題を整理して国際連合が採択したものです。持続可能性について提言されはじめたのは1972年、ストックホルムで行われた国連人間環境会議でした。ここで「成長の限界」ということに触れられてから、21世紀に入った以降もCOP21やESD、国連持続可能な開発会議(リオ)など様々な環境条約や開発目標などが掲げられてきましたが、社会問題の複雑化とともに終着点が分散してしまっているという状況に陥っていました。そこで、社会の仕組みを変えて個人の意識も変えていくものとして、今までの目標や条約を包括したものとして採択されたものがこのSDGsです。
SDGsアイコンは国連に採択されたことにより、世界共通のアイコンとなりました。キーワードは「Transforming Our World No one will be left behind」、日本語に翻訳すると「私たちの世界を変革する、誰一人置き去りにしない」。これが採択された当日、国連本部の壁にはプロジェクションマッピングが行われたそうです。
採択の当日にこのような大規模なイベントを行うということは事前に準備が必要ですが、世界中の風景が映し出されたプロジェクションマッピング内には日本の映像が一つも使われておらず、皮肉にも日本は世界に置き去りにされた形となっているのだと川廷さんは指摘されていました。
しかしながら、少しでもSDGsを日本に浸透させるためにと、川廷さんや博報堂の方々は、SDGsが掲げる17箇条ある英語で発表された目標の、公式日本語版の制作に奮闘されたそうです。意味が変わらないように、かつ国民に当事者意識を持ってもらうにはどんな言葉を選んだ良いか、について日夜議論を重ねたそうです。さらに川廷さんは、一見日本には関係のなさそうに見える目標であっても、そんな目標は実は一つもないんだということを強調していました。例えば、「1.貧困をなくそう」という目標。国連が公表したことを考えると、紛争地域や食糧難、病気が蔓延している地域などを想像しがちですが、日本における相対的貧困率は、他のOECD各国の中でも高く、中でも学習格差などによる子どもの貧困は深刻な課題であることをおっしゃっていました。このように、日本にも貧困は蔓延していることを、国民が自分事として考えてもらうきっかけとなるよう、17ある目標に一つひとつ願いをこめて作っていったそうです。
SDGsを実行するうえで企業にとっては結果を出せるか否かということが大きな課題となります。ESG投資が1%にも満たない日本では、SDGsが自社にもたらすメリットが不透明であることから実行に踏み切ることがなかなか難しい現状にあります。しかし2015年から2016年にかけての一年間で国内サステナブル投資合計は2.1倍に拡大しており、このままブームで終わらせることのないようにしていかなければなりません。SDGsとは何かというWhatの段階から、私たちがどうしていくのかというHowの段階へと視点を変える必要があるのです。
また、SDGsをどのように実行していくのか複数の視点から実際のプロジェクトと絡めてお話をいただきました。まず一つめは「会社で」の考え方を変革していくこと。多くの企業が持続可能性や社会課題について遠ざけている現状がありますが、それを「価値」と「投資」の対象であると見方を変えてほしいと期待されていました。社会課題にこそ大きな需要があり、それが利益に繋がる、そのような理念で操業する企業が増えていってほしいとのことです。
次に、二つ目は「地域で」ということで、実際に南三陸町で森林認証(FSC)と水産養殖管理認証(MSC)のダブル認証を取得した二つのプロジェクトを例に挙げながらお話しいただきました。ここでは、地方農山村において認証を用いた取り組みが、結果的にSDGsの達成に大きく貢献していることについて強調し、つまりはSDGsの達成には、企業の取り組みを変えるだけではなく、地方農山村の力、再活性化が必要だということを述べていました。
三つ目は「仲間で」。国際認証ラベルの普及のために日本サステナブル・ラベル協会(JSL)を立ち上げ、結果的に社会問題の解決に結びつくよう活動されているということです。今、大きな問題としてあるのがサプライチェーンの問題です。この製品や原料がどこで、どのように生産されたものなのか、それを明確に、そして持続可能な範囲で公正な労働環境の下で生産されたものとして信頼を置くためにも、認証制度の普及は必要不可欠で、その認証制度の普及に向けて取り組みを行っているとのことです。
そして最後に「自分で」なにができるのかということ。川廷さん自身も認証材を使った家づくりを自分の手でしていると聞いて、大変驚きました。私たち一人一人の意識が少し変わるだけでも社会問題を解決に導く糸口になるのかもしれません。SDGs達成というテーマのもと、企業の取り組みから、地方農山村、個人、さらには国内外の認証制度にまで、横断的にお話を聞くことができ、理解が深まったとともに、達成のために自分自身も頑張っていきたいと思いました。
開催案内
【開催概要】
日 時: 2017年9月27日(水)18:30~21:30(開場:18:00)
場 所: 株式会社ワイス・ワイス(〒150-0001東京都渋谷区神宮前5-12-7 2F)
会 費: 3,000円(懇親会費1,000円を含む。当日受付でいただきます)
【プログラム】(内容は予告なく変更することがあります)
第1部:講演「SDGsで自分を変える、未来が変わる」
川廷昌弘氏/博報堂広報室CSRグループ推進担当部長
第2部:懇親会
【講師プロフィール】
川廷昌弘氏(かわてい・まさひろ)氏
1986年博報堂入社。「チーム・マイナス6%」の立ち上げ直後から関わり、環境コミュニケーション領域に専従。2010年「生物多様性条約締約国会議(COP10)」で「教育とコミュニケーション」決議で提言し成果を挙げ、国際自然保護連合教育コミュニケーション委員会メンバー。営利・非営利を問わず社会課題のCEPA(コミュニケーション・教育・普及啓発)のプロデュースを行う。現在は、SDGsが主要テーマで、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンSDGsタスクフォース・リーダーを務める。一般社団法人CEPAジャパン代表、公益社団法人日本写真家協会の会員で写真家でもある。
【お申込み】
お申し込みフォームにてお申し込みください。フォーム記入ができない場合、「第20回フェアウッド研究部会参加希望」と件名に明記の上、1)お名前 2)ふりがな 3)ご所属(組織名及び部署名等)4)Eメールアドレスを、メールにてinfo@fairwood.jpまで送付ください。
※定員50名
【お問合せ】
- 地球・人間環境フォーラム(担当:坂本)
http://www.fairwood.jp、info@fairwood.jp、TEL:03-5825-9735 - ワイス・ワイス(担当窓口/広報課 野村)
http://www.wisewise.com、press@wisewise.com、TEL: 03-5467-7003