第23回「フェアウッドと教育 ~木育実践の視点から」(2018.1.26)
2017.12.20掲載
2018.06.06更新
北海道発の「木育」は、「木材利用を推進する教育活動」として全国各地に広がり、教育や普及啓発の枠を越えて、地域利用、地域活性化のキーワードとして活用され一定の成果をあげています。この取り組みを一過性のものとせず、日本の森から世界の森へと視野を広げ、森や木とのかかわりを主体的に考えることのできる人づくりへとつなげていくために、現在木育、学校教育の内容、方法そして課題を整理しつつ、フェアウッドの教育的価値について考えます。
開催報告
(成田 陸/フェアウッド・パートナーズ インターン)
第23回フェアウッド研究部会では、埼玉大学教育学部浅田茂裕先生にお話頂きました。浅田先生のご専門は教育原理学、木材工学。加えて、NPO法人木づかい子育てネットワーク理事長も務められています。
冒頭は、日本人と木の関係性。日本人は木を信仰の対象とすることがあり、無条件に良いものとしているが、具体的な関わり方が重要であるとのこと。木は日本の風土と適合しており、機能性に優れています。また、生理的親和性をも育んでいることが大事な要素であるということでした。このように、人にとって良い機能を持つ木に幼少の頃から親しむことで、木とともに暮らしたいと思う人間を育てることが必要であり、木に触れる心地よさを体験することで、価値感も変化するということでした。
次に、木育の今日までの流れについてお話いただきました。木育の始まりは、平成16年、北海道。その後、平成18年に全国的な木育推進が始まりました。北海道の木育推進活動は、木育に必要だと思われる人材がすべて揃っており、木育推進の手本になる事例であったとのこと。対して、現在の木育活動を短期的効果、長期的効果、経済活動、教育活動に分類し、木材業界の弱点の一つであるレスポンスの悪さ、マーケティング不足という点を指摘、その改善方法を提示されました。
続いて、木育の最大の弱点である、学校教育への組み込みについて話して頂きました。わが国における木材、森林に関する教育は、専門教育、普通教育、産業教育、普及啓発の四種類に分けられ、現在の木育は普及啓発に当たる。木育が学校教育に組み込まれていない理由は、現在の学校教育にはおよそ350の「育」があり、これ以上入れられないという事情があり、課題としては、一過性のイベントとして扱われることなどが挙げられました。
次にガバナンス論からみた科学技術の問題点ということで、森林、林業を取り巻くフレームが歪んでいるとの指摘があり、これを解決していくことが必要とのことでした。リテラシー教育としての木育の課題としては、市民レベルで学ぶこと、専門家として学ぶことの線引きを考えていく必要性が挙げられました。
最後に、まとめとしてフェアウッドという教育課題についてお話頂きました。フェアウッドを、持続可能性の教育へ向けた新しいテーマとして位置づけ、木育との関連において重要なものであると仰られました。また、教育の対象とするためには、フェアウッドの社会認識を高めるための積極的なアピールが大事である。フェアウッドや木育が目指す社会を当たり前のものとし、「フェアウッド」や「木育」という言葉が使われなくなる社会を創っていくことこそが今後の課題だと仰られました。
開催案内
【開催概要】
日 時: 2018年1月26日(金)18:30~21:30(開場:18:00)
場 所: 株式会社ワイス・ワイス(〒150-0001東京都渋谷区神宮前5-12-7 2F)
会 費: 3,000円(懇親会費1,000円を含む。当日受付でいただきます)
【プログラム】(内容は予告なく変更することがあります)
第1部:講演「フェアウッドと教育 ~木育実践の視点から」
浅田 茂裕 氏/埼玉大学教育学部教授
第2部:懇親会
【講師プロフィール】
浅田 茂裕 氏(あさだ・しげひろ)
熊本県生まれ。九州大学大学院農学研究科。博士(農学)。専門は木材工学、技術教育学。学校校舎の快適性や木質空間における幼児の行動分析など、主として木材利用と子どもの育ちに関する研究を進める。林野庁の木育推進委員の一人。木育・森育楽会の設立、子育て支援施設Woods-Onの設置など実践、研究成果を活かした取り組みを進める。NPO法人木づかい子育てネットワーク理事長。
【お申込み】
お申し込みフォームにてお申し込みください。フォーム記入ができない場合、「第23回フェアウッド研究部会参加希望」と件名に明記の上、1)お名前 2)ふりがな 3)ご所属(組織名及び部署名等)4)Eメールアドレスを、メールにてinfo@fairwood.jpまで送付ください。
※定員50名
【お問合せ】
- 地球・人間環境フォーラム(担当:坂本)
http://www.fairwood.jp、info@fairwood.jp、TEL:03-5825-9735 - ワイス・ワイス(担当窓口/広報課 野村)
http://www.wisewise.com、press@wisewise.com、TEL: 03-5467-7003