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フェアウッド研究部会

第35回「江戸にえらばれた西川材〜22世紀につなぐ」(2019.2.22)

2019.1.14掲載
2019.9.6更新

江戸のまちを支え続けてきた西川材。埼玉県飯能市は、古くから林業が盛んであり、江戸の西方から川づたいに材が運ばれたことから西川林業地と呼ばれ、今にいたるまで長い歴史を歩んできました。東京からほど近い場所に広がる森林から生み出される木々の色艶は美しく、年輪も密であることから良質な木材として重用されています。
第35回フェアウッド研究部会は、「江戸にえらばれた西川材〜22世紀につなぐ」と題し、古い歴史を持ちながらも常に新しい試みに挑戦し続ける林業家の井上淳治氏をお迎えします。次世代につなぐ森づくり、家づくりに加え、良質な材の可能性を広げる製品開発、将来世代へむけた木育にいたるまでの幅広い取り組みを行う西川林業地の今をお話いただきます。

開催報告

(三柴淳一 フェアウッド・パートナーズ/FoE Japan)

第35回は、埼玉県飯能市、いわゆる“西川材”の産地“西川林業地”で古くからの林業家で、NPO法人西川・森の市場代表理事の井上淳治さんに次世代につなぐ森づくり、家づくり、そして西川林業地の今についてお話をいただきました。

冒頭、井上さんは「江戸にえらばれた西川材〜22世紀につなぐ」というタイトルについて触れ、“22世紀”は林業は息子につなぐ、というだけでなく次世代につなぐ、そして林業自体を続けていくことが重要だ、という意味を込めたのだそうです。

(西川林業地の歴史について)
そもそも「西川」という地名はなく、埼玉県の南西部、荒川支流の入間川、高麗川、越辺川の流域を西川林業地といい、そこから出てくる材を「西川材」と呼ぶのだそうです。江戸から見ると「西のほう」から運ばれてくる木材が「西川材」となったわけです。

尾鷲とか吉野とかの名産地は除き、関東県内の木材では「西川材」のみが名前が付いていたそうで、これは当時、安定供給ができていたからではないか?と推測。“西川林業地”では江戸期から植林活動をしていたようで、ある程度、定期に定量の材を納入していたのであろう、さらには質についてもそこそこよかったのではないか、とのこと。明治の終わりの頃から枝打ちの高いの低いのが議論されていたらしく、その頃から良質材の生産に配慮されていた、ということが考えられるからです。

当時、飯能駅の周辺に材木屋がたくさんあったそうで、大正4年以降に線路が引かれたのですが、この頃は丸太で、板、角材で貨車で東京まで材木が運ばれていたそうです。

(西川林業地の特徴について)
西川林業地の人工林率は、戦前で40%、現在は80%。過去、人工林以外は薪炭林で、スギ、ヒノキの材木利用以外に、薪炭材の需要も高かったようです。そこから考察してみると、薪炭林の価値は当時は非常に高かったことがうかがえ、興味深いところです。

また、南斜面の日当たりのよい林地は薪炭林だったようです。成長がよいので回転を早くしていたのでしょう。一方で日当たりの悪いところは長樹齢の林地が多いとのことです。

西川林業地には大きな山林所有者はあまりおらず、大きくても100haくらいの規模だそうです。地域全体でも20,000haのため、林業地としては小さく、また樹木の成長も悪く、高い生産量が望めない状況ゆえ、「質」で勝負してきた経緯があるようです。なお、都市近郊であることは、この地にとってとても強みであることも強調していました。

(日本の林業について)
井上さんは、林業の抱えている問題のもっとも重要なのは価格の下落だ、と考えているようです。また野生動物による被害、特にニホンシカの被害は、もはや林業だけに留まらず日本全体の問題になっていると憂いています。シカ問題は看過できるものではないと。さらには、日本全国で林業労働者の数が5万人しかいないことについても問題視しています。そして、国内の森林経営においては、現状70,000haの皆伐施業があるにも関わらず、造林面積はわずか25,000ha。将来を考えると、植林、育林も喫緊の課題にあげていました。

(22世紀につなぐために)
井上さんは林業経営や手作りの家具等を作る工房「木楽里」の経営のほか、木育にも取り組んでいます。木育の対象は保育園の子供たち。「(木育の対象者が)山に足を運ぶのはなかなか難しい。よって街まで出向いて木育を実施している」とのこと。東京都内、飯田橋や荻窪の保育園のほか、埼玉の所沢の保育園などでも実施しているそうです。

また、西川材で家を建てたい、とのニーズはあるものの、家を建てようと思った人がいきなり工務店や林業家のところに相談にはこないために、NPO法人西川・森の市場での取り組みにも着手し、ワンストップでの「家作り」を提供しています。“適正な価格で木材を販売したい”との想いから、家を建てる人に木を伐ってもらい、そしてどこの部位をどの木で作ったか、ということがわかるようにするなど、木材の良さを伝える工夫をしています。

日本林業が抱える問題はなかなか容易に解決できるものではありませんが、井上さんのような心と意志のある林業家の取り組みには今後も注目していくとともに、私たちもフェアウッド・パートナーズとしてもそれら問題の解決に向けて、微力ながら貢献していきたいと感じたところです。

開催案内

【開催概要】
日 時:2019年2月22日(金)17:00~20:00(開場:16:30)
場 所: 地球環境パートナーシッププラザ(〒150-0001東京都渋谷区神宮前5-53-70国連大学ビル1F、http://www.geoc.jp/access/、03-3407-8107)
会 費: 3,000円(懇親会費1,000円を含む。当日受付でいただきます)

【プログラム】(内容は予告なく変更することがあります)
第1部:講演「江戸にえらばれた西川材〜22世紀につなぐ」
井上淳治氏/NPO法人西川・森の市場代表理事
第2部:懇親会

【講師プロフィール】
井上淳治氏(いのうえ・じゅんじ)
1960年生まれ。西川林業地の林業経営者。大学卒業後、奈良県の製材工業での製材見習いを経て、1984年4月から家業の林業に従事。1997年きまま工房「木楽里」を開設。林業から建築・木工まで、木材コーディネーターとして活動。

【お申込み】
お申し込みフォームにてお申し込みください。フォーム記入ができない場合、「第35回フェアウッド研究部会参加希望」と件名に明記の上、1)お名前 2)ふりがな 3)ご所属(組織名及び部署名等)4)Eメールアドレスを、メールにてinfo@fairwood.jpまで送付ください。
※定員60名

【お問合せ】

  • 地球・人間環境フォーラム(担当:坂本)
    http://www.fairwood.jp、info@fairwood.jp、TEL:03-5825-9735
  • ワイス・ワイス(担当窓口/広報課 野村)
    http://www.wisewise.com、press@wisewise.com、TEL: 03-5467-7003

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