グヌンキドゥルの
コミュニティ林訪問レポート1
個人でも企業でもない、村落単位での林業スタイル
東南アジア最大の国、インドネシア。多くの日本人が知るインドネシアは、バリ島を代表する南国のリゾートではないだろうか。しかし、インドネシアは世界でも有数のチークの産出地であり、中でもジョグジャカルタ特別自治州、グヌンキドゥル県は水分が少なく、岩石の多い山岳地帯に育つ硬いチークで有名だ。
さらにこのグヌンキドゥル県のドゥンゴ、ギリスカル、クドゥン・クリスの3村はインドネシアの森林認証、LEI(Lembaga Ekolabel Indonesia)を取得している。たとえばこの木材を購入する事により、日本の企業は持続可能な森林資源の利用を目指すことができるだけでなく、木材の生産地まで辿ることができる。
しかも、このエリアで行われているのは、企業ではなく村が森林経営を行う「コミュニティ林業(Community Forestry)」であり、大規模な造林が行われているエリアにはつきものの「地域住民vsプランテーション企業」の様々な問題が見られないのだ。
しかし、このコミュニティ林業+森林認証という特性をもつチークも、グローバル化した市場ニーズに対応するには様々な課題があり、認知度が低く、その本領を発揮できないでいる。
価値を見出されない森林認証
グヌンキドゥル県はカルストが地表を覆う岩だらけの山岳地帯であり、水源は主に地下を流れるため昔から水不足に悩まされてきた。
地元の環境保護団体は「水が少ない→水を買うため貧しくなる→森林資源を切り売りする→山の保水力が失われる→水が少なくなる」という悪循環を断ち切るため、1998年からこの地域において森林の保水力を説き、森林資源の適切な管理・利用を推進してきた。そして2006年にはそれが森林認証の取得という形で実ることとなる。今では水資源問題も少しずつ改善しつつあり、村の住民も森林の重要性を認識しているという。
「水源涵養林としての役割を持つ村の森林を持続可能的に利用するため、森林認証(LEI)による付加価値を頼りとしましたが、森林認証があるからという理由で木材を求めるバイヤーは滅多に来ません。」
●●村の村長はそう語る。近隣の住民たちにとって、森林は管理するだけではただコストがかかるだけで、破壊しない範囲で利用していくのが理想的だ。しかし本来「森林を破壊しない」事で付加価値が認められるべき森林認証は、大量植樹&大量伐採でコストパフォーマンスを上げたプランテーション産の木材の価格に太刀打ちできず、他の安い木材と同じ値段で買い叩かれている。これでは森林管理を維持できない。