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フェアウッドセミナー
ルーマニアの原生林を脅かす日本の木材市場
~SDGs時代の木材調達リスクとどう向き合うか

2019.1.11掲載
2019.02.22更新

ルーマニア違法伐採

欧州最後の原生林の大部分が残るルーマニア。同国における違法伐採問題は深刻で政府自ら「控えめに見積もっても国内で伐採される原木の半分が違法」と認めており、国内メディアの監視も高まるなど、一般市民にも深刻な問題として認識されています。

ルーマニアにおける違法伐採と森林減少についてこれまで問題提起をしてきた国際NGOのEIA(環境調査エージェンシー)によれば、この問題の背景にはオーストリアの製材業大手のシュバイク・ホファー社の企業活動とそこにつながる日本の木材消費があります。

本セミナーでは、現地ルーマニアのNGOとEIAから2名の海外ゲストを迎え、日本の木材消費がルーマニアの人々や自然環境に対してどのような影響を与えているのか、現場情報を紹介いただきます。加えて、持続可能な調達の日本人専門家2人を交えたセッションでは、日本企業が直面する木材調達リスクにどう向き合っていくべきかを考えます。

イベントは終了しました。ご参加いただきありがとうございました。
●開催概要
日 時:2019年1月30日(水)13:30-16:30(開場:13:00)
会 場:AP市ヶ谷Dルーム
(東京都千代田区五番町1-10市ヶ谷大郷ビル5階)
アクセスはこちら(最寄駅:市ヶ谷駅より徒歩1分)
参加費:無料(要事前申し込み)
定 員:90名

●プログラム※敬称略。内容は予告なく変更することがあります

  • 第一部:現地ルーマニアからの報告
    報告1:ルーマニア材と日本市場とのつながり:何が問題なのか?
     デイビッド・ゲール/EIAユーラシアプログラム コーディネーター
    報告2:欧州最後の原生林とルーマニアの人々
     Antoniu Bumb/ルーマニアNGO DeClicデジタル・キャンペーナー
  • 第二部:日本企業はSDGs時代の木材調達リスクとどう向き合うべきか
    コメンテーター
    ・冨田秀実/ロイドレジスタージャパン(株)取締役、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会持続可能な調達WG委員
    ・籾井まり/グリーンディープコンサルティング代表、国際シンクタンクForest Trendsシニア・アドバイザー



【主催】
環境調査エージェンシー(EIA)、地球・人間環境フォーラム、国際環境NGO FoE Japan


【関連資料】

◆配布資料

[発表資料(敬称略)]

[質問表でいただいた質問に対する回答]
質問1 日本では、企業と森林組合は、大型の林業機材購入の際に政府の補助金を利用しており、また、外国人を含む短期労働者を雇用している。ルーマニアでは、森林施業にはどのような人々が携わっているのか?(正式な契約をせずに働いている人達がいると聞いたことがある)
回答1 ルーマニアでは、2通りのケース、つまり合法伐採と違法伐採について考える必要がある。いずれのケースも一部は貧困層の雇用の場となっている。貧困層のほとんどは地方出身者であり、私の知る限りルーマニア人のみである。最大の問題は、契約を結ばずに雇われて、違法伐採を行っている点である。彼らは窃盗を働いているわけで、犯罪ネットワークの末端を担っている。彼らは最も高いリスクを冒しているのであって、わずかな儲けと引き換えに自分の命と自由を危険に晒しているのである。合法企業で働く人々は雇用契約を結んでいるが、違法材を購入することにより、正式な契約を結ばずに働いている人々を間接的に使っていることになる。
質問2 ルーマニアの所有権について、違法伐採はどこで行われているのか?国有林か、地方政府所有の森林か、または私有林か?(それぞれの森林タイプの割合についても知りたい)
回答2 我々の把握している限り、違法伐採は、国有林でも私有林でも行われている。過去30年以上にわたって、私有林は犯罪に手を貸す人々に不正に配分されてきた。彼らはその私有林を違法に皆伐し、手っ取り早く利益を得るということが横行してきた。しかし一方で、合法かつ持続的に森林を管理している、歴史的に深いルーツを持つコミュニティフォレストの組織も多数存在している。 ルーマニアの中央政府は、ルーマニアの森林面積の約半分を所有しており、それらの森林は国立森林管理機関(NFA:National Forest Administration、Romsilva)によって管理されている。このRomsilvaが管理している森林では違法伐採の事例が多い。 国立公園には、国有地と、私有地の両方が含まれる。違法伐採は、Romsilvaが管理する国立公園と民間人・民間組織が管理する国立公園で行われてきた。
質問3 国有林から違法に伐採されてきたのか?
回答3 そのとおり。不幸なことに、違法伐採は国立公園そして保護地域で行われてきた。政府所有の森林でも私有林でも行われてきたということである。
質問4 EUTR(EU木材規制)は、加盟国の管轄官庁に対し、事業者(operator:市場に最初に出荷する者)を検査するよう要請している。HS社については、調査は実施されたのか?
回答4 実施された。ルーマニアの管轄官庁は、もちろんHS社を複数回にわたって調査した。EIAは直接、管轄官庁に対し、それらの調査内容の詳細について問い合わせたが、何の情報も提供されていない。我々の理解では、管轄官庁はHS社を単に取引業者(Trader:出荷された製品等を購入する組織)として調査しただけで、事業者(Operator)として調査していないと思われる。HS社は単に購入した木材および販売した木製品の記録を継続するよう監督庁から要請されただけだろう。そのため、管轄官庁による調査に、HS社が違法材を購入したかどうかの把握に直結するような情報が含まれているとは我々は考えていない。
質問5 ドイツやオランダ、イギリスの管轄官庁は、HS社に警告や行政指導を行ったのかどうか?(これらの国の企業がHS社から木材を購入した場合)
回答5 HS社の行動に関して他のEU加盟国が警告や行政指導を行ったことはない。通常、管轄官庁によるそのような指導が特定の企業に対して行われることはない。
質問6 ルーマニアでは市民運動が非常に活発なのに、なぜ政治家の腐敗がこのように深刻なのか?
回答6 ルーマニアの市民社会が強靭なものとなった背景には、深刻な政治の腐敗がある。ルーマニアでは市民運動は非常に盛んである。その理由は、腐敗に反対する何百万人もの人々によってエンパワーされているからだ。腐敗した政治家はまだ多くいる。なぜなら司法制度が真に独立したのはたったの5年前だからだ。投獄された政治家達はすべて、この5年間に起訴された。第二次大戦直後から続いた共産党独裁体制の時代以来この70年のあいだに、行政システムに浸透した犯罪ネットワークを現在、一掃している最中なのである。ルーマニアではこのような腐敗した構造がいまだに力を持っている。政治家の顔ぶれは新しいが、腐敗の習慣はかつてと同じなのだ。
質問7 (デイヴィッドへの質問)ご報告の内容によると、警察は2018年5月にHS社を調査したとのことだが、HS社は違法行為を停止したのか?もしそうでないのなら、なぜなのか?
回答7 我々の最近の調査では、HS社のサプライチェーンはいまだにハイリスクの状況にある。HS社は、伐採や丸太の購入に責任を持つべき立場にある数百の第三者木材供給業者からの調達方針を継続すると思われる。我々が行っている調査そして他のルーマニアのNGOやメディアの調査は、ルーマニアがいまだ違法伐採のハイリスク国であることを裏付けている。HS社が第三者供給業者―特定の木材集積所(Depot)-から買い付けている丸太の適切な管理をしていない以上、HS社は違法材を扱い続けることになるだろう。
質問8 日本企業がルーマニアやその隣接国から輸入する場合、どのようにすればその合法性を確認できるのか?
回答8 日本企業がルーマニアのようなハイリスク国から調達する場合は、適切なデュー・ディリジェンスを実施する必要がある。デュー・ディリジェンスの最初のステップは、購入する材の出所を知ることである。残念ながら数百の第三者供給業者、特に木材集積所(Depot)から丸太を購入しているHS社のような会社は、材の出所について日本のバイヤーに情報を提供できない。そのため、日本のバイヤーは、それらの材についてデュー・ディリジェンスを実施できないことになる。日本企業がHS社やルーマニアの他の企業から木材を購入したいのであれば、その購入に対して十分なトレーサビリティを要求する必要がある。
質問9 可能であればルーマニアでの持続可能な林業(森林管理)の事例を教えていただきたい。
回答9 ルーマニアの多くの企業とコミュニティグループは、適切で持続可能な林業(森林管理)を行っている。しかし違法伐採に手を染める人々が木材価格を引き下げているために、持続可能な林業の担い手である良心的な企業は競争上不利な状況に陥っている。持続可能な林業を行っている企業が林業を続けていくためには、日本および世界中の木材バイヤーが違法材の購入を拒否し、法律を守り適切で持続可能な伐採を行っている企業とコミュニティだけを支持することが必要だ。
質問10 ルーマニアで違法伐採に関わっているのはHS社だけなのか?
回答10 そうではない。HS社はルーマニアで最大の木材加工業者の一つであるが、ほかにも多くの企業がHS社と同様に、木材調達を複数の第三者伐採企業や木材集積所(Depot)に依存している。そうした企業も、供給業者の木材調達の方法を十分な管理をしていなければ、同じ様に違法材のリスクにさらされることになる。
質問11 ルーマニアでは一般にFSC認証制度は機能していないのか?
回答11 機能していない。FSCのパネル調査により、HS社のサプライチェーンに多数の違法材の事例が見つかり、またFSC認証を取得したHS社のサプライヤーの多くで犯罪と疑われる行為がみられることが明らかとなった。パネルのこの調査結果は、HS社がFSC認証を失うまでの間、違法木材がFSC認証材として日本を含む市場へ売られていたことを示すものである。EIAや他のルーマニアのNGOによる調査で、他のFSC認証林でも違法伐採が見つかっている。森林法の施行が必ずしも信頼できないルーマニアのような国では、FSCにはよりよい自己管理メカニズムと、現在よりもはるかに強固な透明性とトレーサビリティの確立が必要だと確信している。
質問12 東京オリンピックによる調達コードは、FSC認証材とPEFC認証材の使用を認めている。PEFCでは不十分か、それとも意義があるか?
回答12 2015年以降、EIAはHS社のサプライチェーン上の違法性の証拠を、FSCとPEFCの双方に提示した。この証拠により、FSCはHS社と関係断絶に至った。同じ時期、PEFCはHS社に対し、有意義な行動を何もとらず、HS社のPEFC認証は今でも有効である。有意義な管理ができていないことから、PEFCはルーマニアのようなハイリスク国では認証制度としての不十分であると考えている。

【お問合せ】
  • Eメール:contact_fw(a)fairwood.jp((a)を@に変える)
    国際環境NGO FoE Japan TEL:03-6909-5983(三柴、佐々木)
    地球・人間環境フォーラム TEL:03-5825-9735(坂本、飯沼)



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