本当に木質バイオマス発電は、カーボン・ニュートラルなのだろうか。実は衝撃の数値が出ている。
イギリスのシンクタンク、王立国際問題研究所(通称・チャタム・ハウス)の出した化石燃料各種と木質バイオマスの燃焼による温室効果ガス排出量の比較だ。
これによると、天然ガスや石炭各種(歴青炭、無煙炭、褐炭)と比べて、木材がもっとも排出量が多かったのだ。しかもCO2の約25倍の温室効果があるとされるメタンガスが、ほかの30倍にもなっている。
この計算式は複雑なので詳しいことは省くが、木材を燃料とするには、まず樹木を伐りだして輸送し、チップに砕くかペレット化するなどの加工が必要だ。
それぞれの過程でCO2が発生する。加えて、これまでCO2を吸収していた樹木を伐採するのだから、その分の吸収はなくなり、森林土地改変によって土壌中の有機物の分解が進みCO2発生を促進する。
再造林しても、苗木が小さな間のCO2吸収量は少ない……と考えれば理解しやすいだろう。
木質バイオマス発電は、再生可能エネルギーと言いつつ、実は気候変動を激化させかねない疑いが出てきたのだ。
しかも、日本の現実は欧米よりも厳しい。まず廃熱利用がほとんど行われていない。欧米では、たいてい燃焼時の熱で発電するとともに温水提供や暖房などに熱利用が進められている。
発電と熱利用を合わせたら木材の持つエネルギー量の最大8割は利用できるとされる。だが日本の場合は、ほぼ発電だけなのだ。すると効率は25%~38%程度しかない。
さらに燃料となる木材の調達先は、国内より海外(ベトナムやカナダ、マレーシアなど)が多くて輸送距離は遠大となる。船で運ぶにしても化石燃料が使われCO2を排出するだろう。
また熱帯アジアで生産されるアブラヤシを燃料(油脂のほかヤシ殻など)とする場合は、アブラヤシ農園建設のため泥炭地帯の開発が行われることで、莫大なCO2を発生させてしまうことも想定される。
原文はこちら
https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakaatsuo/20221115-00324031