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山の日記念セミナー:
これでわかる木材デューデリジェンス~違法リスクの調べ方

全体質疑応答
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Q1. なぜ、合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律(クリーンウッド法)には違法伐採禁止条項(罰則規定)が組み込まれなかったか?
A1. 上河氏:
今回の法律は「議員立法」という形で策定されたためだろう。厳しい罰則規定を設けるということについて、日本社会ではまだ抵抗が大きいのでは? 欧米と違い、「悪いことをしたので罰則を科す」というよりは、「良いことを奨励する」の方が日本の社会に合っているし、今回の法律のベースもそこにあると思う。
Q2. DDが最終的に十分だと判断する基準は何か?基準は誰が定め、最終判断は誰が下すのか?
A2. ヒューレット氏:
レイシー法では、企業が最終的にDDについて評価するということになっている。しかし、それには執行リスクが伴う。例えば最終的な判断が間違っていたり、リスクの緩和策に十分踏み込まず回避してしまった場合、法執行上のリスクを負う、ということになる。つまり、アメリカでは、LL社の件で学んだ通り、法の要求に従わない場合はそれに伴う非常に重大な帰結が待っている。
一連の作業では、リスクアセスメント、そして特定したリスクをランク付けし、その中で最もリスクが高いものについてDDを追加的に行う、あるいはサプライチェーンから排除する、という、複数のステップが必要だということをANSで示した。その中でもっとも重要な点は「完璧なシステムはない」ということ。システムの中には改善できる要素を入れておくということが重要だ。

ウォーレル氏:
EUの場合、法廷の場で司法の判断がまだ出ていないので、今のところ基準について確固たる決定的なものはなく、各国の企業あるいは各国の解釈に任されることになる。英国では、EUTR第6条の要件に従えばDDを行ったことになるという考え方。

上河氏:
原材料の合法性についてどのように確認したかが問われる。トレーサビリティーをどこまできちんと確認するか、確認した情報がどこまで正確か、などを確認することが重要であって、合法・不合法かを一定の基準で決めるものではないと思う。
Q3. 坂本:EUTRについては決定的な判断基準がまだなくても、企業はすでにDDを実施しているが、英国企業が参考にする判断基準は何か?
A3. ウォーレル氏:
最終的な判断は個人に委ねられる。
3つの要素(情報収集、リスク評価、リスク緩和)に従って、それを確保していけば、ほぼ十分にDDが行えると考えている。
特定の樹種や国に関するリスクやリスク緩和策について、いろいろ議論できると思うが、考え方や判断は個人によって違う。とにかくEUTRであれば第6条がすべての基本的な指針になる。

サンダース氏:
私たちが一緒に仕事してきた英国内やEUの企業の中で、非常に良いものを作り上げ、さらにそれを公表しているところもある。
①サプライチェーンについて完全に文書化する、②コスト化がかからない方法でリスクを特定する、そういう仕組みがあるといいだろう。

リスクの特定にはいくつか方法(例)がある。

  1. 輸送に関する文書を全般的に検証する

    サプライチェーンに関わる輸送の証明書などを集め、全体を確認した結果、モノの移動が国内で広範囲にまたがっていた場合、コストをかけなくてもサプライチェーン内の輸送に関する文書を集めて信用できるか確認するきっかけになる。
  2. 時間軸に沿って確認する

    伐採許可証が数年前のものだった場合、合理的な理由があって伐採してから購入して届くまでにそれだけの時間がかかったのか疑ってみる。
    リスクアセスメントの方法について、他にも様々な実践的ツールが出てきており、ベストプラクティスの企業のシステムを見てみることにより、良い方法を見出すことができる。
  3. 特定の伐採地区のコンセッションの数量を検証する

    特定の地区で、非常に大きなバイヤーがいる場合、そのバイヤーが数年間にわたりどれくらい購入しているかトラッキングし、許可証で認められている規定量を超えてないか確認する。

リスクの緩和策について、ほとんどの企業が「サプライチェーンの複雑さを減らすこと」を行っている。サプライチェーンが広い地域にまたがらないようにしたり、製品のscopeとなるものを縮小したりすることによってサプライチェーンを簡素化・単純化できれば、さらにどのようなリスクがあるか確認することができる。それでもリスクがあった場合、多くの企業は、仲介業者による買い付けでなく、現地スタッフ、あるいはその国のリスクやリスク緩和策に詳しい第三者に換える。 また、ファイバー検査も客観的に担保できる有効な方法。

そう言ったリスクにどう対応するか、政府が具体的に明文化した規定を出すわけではない。しかし、今や、業界で実際に使われているツールや実践的な対処の仕方というのができあがりつつある。それらが主流になり、より多くの企業が使うようになればよい。

ハウレット氏:
DDというのは、ペーパーワークで済むことではない。LL社の事例で学んだことは、書類をきちんとまとめ、注文書や出荷に関わる書類、木材伐採に関わる書類などが本当に信頼できるものか、記載されていることが本当に正確か、自ら突き止めなくてはならない、ということ。
また、DNA検査やアイソトープを使った検査など、新しい技術を使って科学的な方法を使って、申告されている樹種と実際の樹種が一致しているか確認することも重要。
サプライチェーンを物理的にたどっていくということも重要。特に、現地調査は重要で、LL社の件はNGOによる調査で初めて明らかになった。HPVAでも、メンバーが実際に中国のメーカーを訪れ、そこから情報源をたどって伐採地のシベリアまで行き、木材の展示会まで行って、文書に書いてあることが正しいかを確認する。
Q4. 認証とDDとの関係について。認証だけではなぜ合法性のDDと認められないのか?
A4. 上河氏:
認証の過程自体は問題でない。しかし、CoCの場合、どこまでトレーサビリティーがとれるのかを考えると、情報はなかなか得られない。そこで、日本の製紙業界では認証に加えて、サプライヤーからトレーサビリティーレポートによって、伐採地域、樹種、どういう法律があるか、などの情報を別に得るようにしている。認証+αで確認することにより、さらにDDが確保できる、と考える。

サンダース氏:
認証そのものに偽造のリスクがあるため、EUの仕組みでもアメリカの仕組みでも認証だけでは不十分とされている。監査レベル、特にCoCに関わる部分の監査の堅牢性が不十分であることが多いと考えられている。そのため、認証というのはリスク緩和策のひとつのツールとして使われるべきもので、追加的に自社でもチェックを行うことによって、本当のDDができると考えるべきだ。
Q5. EUTRの結果、ヨーロッパで認証の利用が増えたとのことだが、アメリカでは?
A5. ハウレット氏:
アメリカでも認証件数は増えている。レイシー法の改正、そして特にLL社の件があって以降、多くの企業が認証製品を使うようになっている。


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