第39回「街から変える、国産材活用の新たな潮流」(2019.6.14)
2019.5.27掲載
2019.08.08更新
国産材を利用し日本の森林を守る運動推進協議会、ウッド・チェンジ・ネットワーク、森林を活かす都市の木造化推進議員連盟(協議会)など、政治、行政、産業界を問わず、街で国産材活用を促進することで国内の森林の健全化を目指す運動が活発化しています。 今後の日本の木材流通・活用がどう変わるのか、どう変えていかなければいけないのかを事業者、市民がそれぞれの立場で考えていかなければなりません。
今回は一般社団法人全国木材組合連合会の常務理事、森田一行様をお招きして、今後の見通しや目指すべき社会についてお話を伺います。
開催報告
(成田 陸/フェアウッド・パートナーズ インターン)
第39回は「国産材を巡る最近の動向」と題して、一般社団法人全国木材組合連合会常務理事の森田一行氏にお話いただきました。森田氏は1979年に林野庁入庁。違法伐採対策、林産物貿易交渉などを担当し、5年前より現職。現在も違法伐採などを担当しています。
今回森田氏が講演で使用された資料の多くは林野庁など官公庁が発表している政策に関する資料の引用で、いわば、政府の立場、視点から林業、木材産業に関する政策や全国の流れを戦後から網羅的に解説していただきました。
現在、全木連でも国産材を活用していこうと機運が高まっていますが、森田氏が就任された5年前にはそうしたものは全くなく、むしろ国産材は否定され外材を使ってなんぼという流れだったようです。ただこの5年で業界自体が変わってきていて、全木連の会員である製材所などが国産材活用にも目を向けなければ、自分達の生業が持続可能ではないと気付きはじめたとのことでした。その良い例が合板で、10年ほど前は国内で生産されていた合板の原料はラワン材だったのが、現在はスギ、カラマツとなってきております。この背景として世界的に木材資源が貴重になってきていることを挙げていました。またカラマツの植林は30年前にやめており、それが現在使用出来る資源が限られていることを教訓としているようです。
次に戦後からの木材活用の歴史をお話いただきました。戦後すぐの都市づくりにおいては、戦時中焼け野原になった経験と森林資源枯渇により、都市不燃化、非木造化が推奨されました。これは1950年、衆議院の「都市建築物の不燃化の促進に関する決議」からはじまり10年かけて様々な側面から「木材を使わない」方向になったとのことでした。それから60年が経ち森林資源の充実、地方創生、地球温暖化対策などの背景により、「公共建築物等における木材利用の促進に関する法律」を契機に、木造化、木質化が進んでいる状態です。森田氏は今年度か来年度には様々な方向から木材活用が進む制度をつくるように現在働きかけているそうです。
最後にお話いただいたのは、木の使い方は二通りあるということでした。それは柔らかい木の使い方と、硬い木の使い方があるということ。柔らかい木は目に着くところに置き、人の感性に訴える使い方です。これは林野庁が推進している「顔の見える木材」にも通じるところがあります。担い手は地域に密着している中小規模の製材所です。次に硬い木の使い方ですが、目に触れない所にコンクリートや鉄と同じように強度という機能で考える使い方です。この使い方は工業製品になりコストを下げることを求められるため、担い手は大規模な製材所になります。この二つの使い方を考えていくことが大事なのだそうです。
余談となりますが、質疑応答では違法木材に関しての質問があり、違法木材の現状についてお答えいただきました。違法木材の状況は現在と20年前では大きく違っており、20年前は輸出国(開発途上国)の国力が弱っていたため、輸出される木材は違法木材の恐れが高く、違法伐採を防ぐためにはその輸出国の国力増大が必要だったとのこと。現在は輸出国の国力が増強、充実し、違法木材を国として出さない状況になってきており、違法木材を輸出しているのは一部の企業に限られるような状況に変わってきているとのこと。したがって対策はその個別企業に対して考える状況になっているそうです。
今回は国産材を中心に歴史や流れをお話頂き、感じたことは現在様々な環境、状況が移り変わっている最中だと感じました。この過渡期ともいえる変化の激しい時代だからこそ本物と言われる森林、木材の価値を考えていきたいと思いました。
開催案内
【開催概要】
日 時:2019年6月14日(金)17:00~20:00(開場:16:30)
場 所: 地球環境パートナーシッププラザ(〒150-0001東京都渋谷区神宮前5-53-70国連大学ビル1F、http://www.geoc.jp/access/、03-3407-8107)
会 費: 3,000円(懇親会費1,000円を含む。当日受付でいただきます)
【プログラム】(内容は予告なく変更することがあります)
第1部:講演「街から変える、国産材活用の新たな潮流」
森田一行氏/一般社団法人全国木材組合連合会 常務理事
第2部:懇親会
【講師プロフィール】
森田一行氏(もりた・かずゆき)
1979年新潟大学農学部林学科卒、林野庁入庁。林野庁では神岡営林署長など国内の現場勤務のほか、9年間にわたりJICA専門家としてナイジェリア、ミャンマー、インドネシア、ラオスで技術指導等を行う。最後は林野庁でWTO、FTA等林産物貿易交渉を担当し、2006年に導入された合法木材のガイドライン作成に携わり、今も全木連で違法伐採対策を担当。SGEC、日本木材加工技術協会等理事。
【お申込み】
お申し込みフォームにてお申し込みください。フォーム記入ができない場合、「第39回フェアウッド研究部会参加希望」と件名に明記の上、1)お名前 2)ふりがな 3)ご所属(組織名及び部署名等)4)Eメールアドレスを、メールにてinfo@fairwood.jpまで送付ください。
※定員60名
【お問合せ】
- 地球・人間環境フォーラム(担当:坂本)
http://www.fairwood.jp、info@fairwood.jp、TEL:03-5825-9735 - ワイス・ワイス(担当窓口/広報課 野村)
http://www.wisewise.com、press@wisewise.com、TEL: 03-5467-7003