トップ>ニュース>メールマガジンバックナンバー第25号>SGEC認証の家づくり

3.SGEC認証の家づくり

ENGLISH | 日本語
中尾 由一さん/菊池建設(株) 顧問


~ フェアウッド建築セミナー2006 in東京エコビルド展 講演録 その3 ~

林業から住宅業界へ
図1 択伐の様子
中尾氏発表資料から)

 認証をどういうことから取ったのか、私なりの心境を申し上げますと、実は私は昭和25年(1950年)に林業木材業界に入り40年間色々な所でやってきました。13年ほど前から建築業界に入りましたが、結果として林業から建築まで55年間やってきました。このような生き様の中から認証に至ったということを申し上げておきたいと思います。

 今、一番問題になっています国産のスギ、ヒノキは戦中、戦後直後は不十分でしたが、日本が戦争に負けて山河のある母国づくりに向けて、外地から引き上げてきた人々が山へ入ってどんどん植林した。それが育って現在、残っているのが大半の植林地です。都会に人口が集中して地域の疲弊が始まり、木は植えたけれども山側には管理する人がもういない、山側では経営ができない状況です。そんな一方で昭和30年代の後半から住宅産業が生まれて賑わっています。残念ながら日本の木は植えっぱなしでは建築材にはならない。外国から安い木材を持ってきて大量生産、しかも化石燃料を使った新建材を生み出し、建築を続けてきました。

 現在、その負の遺産というか、シックハウスという弊害が起こっています。新建材や新しい建築工法が関連してシックハウスは複合的な要因で発生したものと私は感じています。だからこそこの業界に50数年いる者として「国産材を使った、軸組工法で作った家が最高のものだ」という信念をもっています。

健康な家づくりを認証された国産材で
 日本にそれほど森林認証制度が普及しない中、SGEC(『緑の循環』認証会議)という日本独自の認証制度が生まれてきたのです。たまたま私が知っていた会社が日本で第1号の森林認証をとりました。静岡県富士宮市にある日本製紙の社有林です。2003年12月10日の日経新聞に紹介された記事を見て、早速これを利用しようではないかと、日本製紙に申し入れました。

 社有林は673ヘクタール、簡単に言いますとゴルフ場30個分ぐらいの広さです。この山を我々が建築会社としてうまく使っていこうではないかと申し出、説得した結果、森林認証材を活用した家づくりに着手することとなりました。国産材による軸組工法を頭の中において健康な家づくりをしようと思い、認証制度の取得に取りかかりました。

 目的はお客様に国産の健康な家を提供するということが一つ、もう一つは持続可能な林業経営ができる山でなければならないという課題もあります。日本製紙の山から建築に適した木だけということで年間約30ヘクタール分だけを毎年切らせてもらうのですが、木の成長が休眠する冬の時期に伐倒しし、半年間山で葉枯らし乾燥を続けます。葉枯らし乾燥したものを長さ4メートルに切ってさらに乾燥させます。葉枯らし乾燥は自然に水分が抜けているので製材しても非常に色艶が良くなります。半年置いていても虫は一切入りません。割れも非常に少ない。その材を使ってみると人工乾燥した木とは色合いから全然違うと言われます。その材を製材して3カ月ぐらい自然乾燥させておきます。伐倒からおよそ1年かけて建築適材という形にしてプレカット工場に回します。

 私はよくお客様に申し上げるのは、口に入れる食べ物は大丈夫かと産地まで心配するのに比べて住宅では材料の素生について何にも言っていないし、多くの会社は何もできていない。認証制度によって産地明示をし、健康な建築を届けるのが我々の使命なのだ、ということをお客様に申し上げると非常に安心してもらえています。

施主に安心を提供するために
 図1は選択伐です。30ヘクタールの中から我々と山林家でどの木が良いのかを決めて伐倒し、翌年の連休明けまで放置しておきます。林内作業車で集材しまして山の中から出してきます。葉枯らし乾燥によって重量も半分程度まで軽くなり運搬効率も上がります(図2)。製材所では認証材としてきちっとした形をとるために他の材木と交わらないように管理しています(図3)。2005年7月に認証材の第1号として建築現場に使われたものです(図4)。

図2 図3 図4
図5 図6 図7

 私どもは、お施主さんにいかに健康で快適な建築を安く提供するかというのが仕事です。菊池建設はSGECの認証林産物取扱認定事業体として2005年4月28日に認証取得しました。これまでに約50棟は引渡しをしていますが、お客様にはSGEC認証林材使用の証明書を発行しています(図5)。そこには認証材の産地とパーセンテージを表記することでお客様に安心を提供しているのです。

 今年の9月までのSGECの森林・COC認証を受けたものをみると、住宅建築会社は6つあります。小さいところも含めて様々ですが、より大勢の人が取り組まれるようになればさらに世の中に認められると思っています。

 床から柱・梁まで認証材のスギ・ヒノキを使っています(図6,7)。認証材は現在、富士宮の山だけでは間に合いませんので四国などを含めて3ヵ所から調達しています。適材適所で進めていくつもりですが、いずれにしても近い将来、私どもは認証100パーセントの家を提供したいと考えています。

図8 図9 図10

 いくつか当社の施工したものを紹介します。木造建築の特別養護老人ホームです(図8,9)。木造づくりの老人ホームとしては日本の第2号です。また、今年の全木連のポスターに写っているのもこの老人ホームで、銘木など原木で3万本を使った建物です。これは、先月引き渡したのですが、健康に配慮した木造の医院を建てさせていただきました(図10)。
(2006年11月25日東京都内にて)

> 菊池建設(株) WEBサイト                         
  TOP▲
  < 記事1 | 記事2  | 記事3 | 記事4 >

※このページを印刷する場合は、ブラウザのページ設定にて上下左右の余白を 5mm に設定することを推奨します。

2009 FAIRWOOD PARTNERS All Rights Reserved.