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3.インドネシアにおけるパーム農園開発の現状

インドネシアNGOサウィット・ウォッチ ノーマン・ジワン

 ~ グローバルネット204号(2007年11月)から転載 ~

インドネシアとアブラヤシ
広大なアブラヤシ農園の様子
 アブラヤシはインドネシアの自生植物ではありません。オランダ植民地時代に西アフリカから1848年に輸入されました。最初の大規模商業農園が1911年にでき、現在は23州にある30のグループが、600のアブラヤシ農園の子会社を管理しています。その面積は720万(ha)にのぼります。それから、1999年から2004年の5年間で、1年あたりの植えつけ量が40万100(ha)に到達しました。インドネシア政府はアブラヤシプランテーション開発のために1,800万(ha)の土地をすでに許可し、割り当てています。

 これからの20年で世界の食用油の需要が2倍になると言われています。アブラヤシ農園は、5~10年の間に500万~1,000万(ha)拡大します。西ヨーロッパとアメリカの市場は安定していますが、逆に中国、インドはかなり伸びることが見込まれます。

アブラヤシ農園開発による影響
 アブラヤシ農園による影響として、まず、大規模な森林減少が挙げられます。1,800万(ha)の森林がアブラヤシ農園として切り開かれる計画ですが、うち実際にアブラヤシが植えつけられているのは720万(ha)にしか過ぎません。それから生物多様性が失われます。これは非常に重要なポイントです。

 次に先住民族と農園の間で土地に関する紛争が起きています。2007年の時点において、少なくとも500の紛争が353のコミュニティに影響を与えています。それから労働条件が悪い。そして、大量の農薬(殺虫剤、除草剤も含む)使用によって、とくに女性に影響が出ています。それから小規模自作農家の貧困も大きな問題です。

 また、非常に懸念されているのが、アブラヤシ農園が泥炭地と重なる部分で、大量の炭素が排出されていることです。

インドネシアの法的枠組み
 まず、投資法があります。これによると、最大165年の土地利用の権利がプランテーション企業に認められています。人びとがアブラヤシのために一度、土地を差し出すと、子供や孫の代まで土地利用ができなくなります。これは人権にも関わってきます。

 プランテーション法では、企業の土地利用の権利が120年にわたって認められています。操業許可は、1企業あたり最大で10万(ha)まで認められます。これはゴム農園には認められていません。アブラヤシだけが、非常に例外的な扱いを受けています。

 それから、バイオ燃料を推進するバイオ燃料政策があります。すでに、インドネシア、マレーシア間の2国間協定で、1,200万トンのパーム油をバイオディーゼルのために利用することを決めています。1,200万トンということで、さらに開発が大きく進んでいくでしょう。

未解決の問題
  法律の矛盾があります。“国益”の名のもとに、商業開発のための土地収用を認めようとしています。しかし、先住民の権利・慣習的な土地の権利をどこまで認めるかは明確ではありません。慣習的な土地利用権がある場所が使用されるということで、開発の影響は社会的にも環境という面においても、どういった結果をもたらすのでしょうか。それについて、強制的な法規制で対応するのか、それとも自主的な取り組みを求めるのか。

 持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)のような国際市場メカニズムを活用する中では、自主的な基準がある一方で、国内解釈はどうするのか、この間にギャップがあります。また、持続可能性の基準に違反するという申し立てがあったとき、それにどう対処するのか。さらに加工・流通過程の管理も大きなポイントで、エンドユーザーは、ある商品が持続可能性があるものか否か、どのようにすれば自信を持つことができるのでしょうか。

 EU(欧州連合)指令によってバイオ燃料利用の目標が設定されていますが、それにどう対応するのか、あるいは規制がないインド、中国の状況にどう対応するのか。再生可能なエネルギーの需要にどう応えていくべきなのでしょうか。

 CSRが確立されていかなくてはなりません。これは国の担当分野です。そして土地を利用する権利と管理する権利の間にバランスがなくてはなりません。また地元の人びとに対して、土地の平等な利用を確実たらしめることが必要です。さらに、CSRに至る以前に、紛争の解決が重要です。それからCSRは、政府の役割を壊したり横取りしたりしてはならない。また、自由意思にもとづく事前の情報を提供された上での合意の原則に従うということも重要です。

持続可能なパーム油実現のための9ヵ条
 パーム油は、いまや食用油としての取引量が一番多いものです。正しく使えば、人びとに雇用を生み出し、富の源泉になります。しかし対応を間違えればアブラヤシによって土地を奪取、生活基盤の喪失、紛争、労働搾取、生態系の荒廃といった問題を招きかねません。

 われわれにとって、持続可能なパーム油は不可欠です。そのためには以下の9つの点を押さえておく必要があります。

(1) 国際法を重んじること
(2) 慣習法の権利を尊重すること
(3) 自由意思にもとづく事前の情報を提供された上での合意の原則に従うとこと
(4) プランテーションの開発において暴力を禁止すること
(5) アブラヤシの植えつけ、再植林に関して火入れをしないこと
(6) 原生林や非常に価値の高い生態系の土地転換を行ってはならないこと
(7) 地元コミュニティに正当な土地の権利がある場所にパーム油の開発の認証を与えてはならないこと
(8) 労働者の権利を尊重すること
(9) 男女平等を尊重すること

 私たちは常に、「正義なき開発は搾取」であることを忘れてはならないのです。

関連HP:
 NPO法人ゼリ・ジャパン、地球・人間環境フォーラム主催「パーム油とCSR」開催報告
 http://www.gef.or.jp/activity/economy/sustainable/palmoil2007_report.html>
 

                                                                                
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