1.日本における認証/合法検証された熱帯木材の需要開拓プロジェクトについて
C/VLウッドプロジェクトとは
まず簡単に当プロジェクトの紹介をします。最初に、プロジェクト名にあるC/VLウッドは Certified / Verified Legal Woodの略であり、日本語で言うと「認証木材/合法検証材」です。我々FoE-Japanと地球・人間環境フォーラム、地球環境戦略研究機関(IGES)の3機関で、環境や社会に配慮した木材の使用を推進するというフェアウッドキャンペーンを実施しています。その「フェアウッド」と同じ意味でC/VLを考えていただければと思います。
もう一点、なぜ合法だけではなく、持続可能性が必要なのかという点に関しては、生産国にも林業に関する法律は存在しますが、必ずしもその法律が森林の環境や持続可能性、周囲に住む人間に配慮して書かれているわけではありません。そこで少し幅広く、「単なる森としてではなく社会としての森林がその場に存在するために持続可能性が必要」という考え方を根拠にしこの活動を展開しています。これを受け、皆さんが取引している木材がどこから来ているのかを確認する事を目的とし、C/VLウッドという名称にメッセージを込めてこのプロジェクトを開始する運びとなりました。
もう一点、NGOの懸念として、合法ではあるものの森林を農地やアブラヤシ農園等、別の用途に転換する際に出た木材など、結果的に森林が減少してしまう事業に関わらないような木材を選別して使っていければより良いと考えています。
プロジェクト内容
<図1:2006年
日本の木材輸入実績 |
プロジェクトの目的はフェアウッドの利用拡大をすることであり、具体的にはクリアリングセンター等の情報交換を促進する場としてフェアウッドセンターを提供していきます。フェアウッドセンターは生産国の情報、消費国の情報をより効果的に発信することで、環境に配慮された木材の利用が進むよう設置されます。
プロジェクトの全体としては、まず企業の皆さんの取組みを我々が把握し、また森林伐採現場の事実をわかりやすく報告できるよう情報整理をします。2年目はこのワークショップのような活動を通して多くの方々に現状を知って頂き、その後フェアウッドセンターという情報交換の場を提供することで、より具体的なC/VLウッドの取引を進めていくという流れになります。
図2:用地別マップの一例 |
最初に国内企業意識調査として、日本にある33の企業と3つの木材業界団体に協力をお願いした結果、多くの関係者がグリーン購入法に関して認識を持ち、木材の合法性についても関心が高まっている事が分かりました。この結果は2007年7月現在の情報ですので、現状はもう少し改善されているかもしれません。
ガイドラインに関してもよく知られている状況であり、皆さん良く勉強していることが分かりました。多くの企業は団体認定制度を活用して合法性を担保していますが、中には独自に木材調達方針を作成し、自分で合法性や持続可能性の社内基準をつくって活動している企業や、認証制度を取得されている企業もありました。しかし現状ではプレミアコストや、合法性を確認するためのコスト、認証取得のコストもかかってしまい、それらがなかなか製品で還元できずに苦しいという話もありました。
現在インドネシアとマレーシアのカウンターパートに調査依頼を出しており、その成果物がどの様なものかという事をイメージして頂く為に、一部ご覧頂きたいと思います。(図2)伐採地、保護林、原住民などの所有林、及びそれに依存している人々の居住地などの要素を含んだ生産地の地図を作成いたしました。現在これら各要素をレイヤー化し、伐採地の周辺の状況がわかる地図の作成をしています。
これは過去1年間での成果の1つですが、その他、私たちで持ち合わせている情報を実際に木材調達に従事されている方々にお伝えする目的で、昨年の6月から今年の1月にかけてフェアウッド研究会を開催しました。内容に関しては企業が自社で調達している木材の原産地を確認する方法や、サプライチェーンを辿る方法、どんな樹種を確認したら良いのかという情報を紹介しました。
これからの活動、フェアウッドセンターについて
これから始動するフェアウッドセンターについて、どういう視点で何をするのかということに関して紹介します。図3にあるように生産地の履歴確認や生産者の森林施業の改善の取組のサポート、日本国内企業の調達方針の支援などの活動を予定しています。残り10ヶ月間で、フェアウッドセンターを立ち上げ、効果的に運営をしていきますが、特に2つのグッドビジネスモデル、次の2つのケースを想定して取り組んで行きたいと思います。
1つは、パネル類、ボード類のサプライチェーンをより透明にしていく事です。現在の企業同士による木材取引の経路情報が、普通の消費者や森林保全に関心を持つ人々に届き、その効果が更に発展していくことにより、普通の消費者がフェアウッドを選択的に購入できる状態を目指すものです。建販商社の調達したFSC森林認証材が、大手問屋ルートでDIYショップの店頭に並ぶ事例も見られるようになりました。尚この対象は、もちろん主要な製品であるため、大きなマーケットに対して取り組んでいく事になります。
もう1つは、図中にはコミュニティ森林のサプライチェーンと書きましたが、これはだいぶ小さな市場を想定しており、この市場を大きくしようという試みではありません。少量ではあるものの、生産者の顔の見える木材調達、いわゆる産直トレードに関心のある方に紹介するという方法でコミュニティ森林のサプライチェーン発展に取り組んでいきたいと考えています。