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2.インドネシアからの木材調達における環境的・社会的リスクの定性的評価

森林NGO Forest Watch Indonesia : FWI  Farid Wajdi

 
図1:1989年から2003年の間におけるインドネシア各地域別の森林被覆変化
 
  この講演では、まずインドネシアからの木材調達におけるリスクの定性的評価について、後半では複数のステークホルダーに関するインドネシアの新しいシステムを後半で紹介します。



インドネシアの森林の状況
 衛星写真を使用し、森林の被覆状況を分析した結果、2005年時点でのインドネシアの土地全体の約50%は森林であった事が判明しました。しかし他の調査に基づき私達がこのうち森林劣化・消失が発生している土地の面積を計算したところ、ここ14年間で約2,800万haの森林被覆を失い、3,700万haが原生林から二次林に劣化している事が判明しました。(図1)これは、多くの森林が木材として伐採企業によって伐採された結果です。また、特に活発なのは東、中央カリマンタンでの伐採活動です。

生態系リスクについて
 我々FWIはインドネシアで森林伐採をする事によって発生するリスクを、「生態系リスク」、「環境リスク」、「社会リスク」の3種別に分けてリスク評価を行いました。
 まずは生態系リスクですが、インドネシアは世界で4番目に多くのレッドリスト種を持ち、387種もの絶滅危惧種が生息している国です。
図2:ジャンビ州、国立公園と伐採予定地が
重複している地域の事例

 ところが図2の通り、2つの国立公園の近くに沢山の伐採予定地が存在する様に、多くのインドネシアの州においては、国立公園の生態系に影響を及ぼす程すぐ近くに伐採予定地がある場合があるのです。

 

また別の調査では、インドネシア全体で見た場合、1989年から2003年までの14年間の森林劣化率は年間約260万ha、森林減少率は年間約190万haとなっており、この状況が続けばインドネシアの森林は45年後には全て消失する計算でした。しかしこれに関する最新のデータでは、2003年から2005年の森林減少率の分析をした結果、以前よりも減っているという数字が明らかになりました。1989年から2003年のカリマンタンの森林減少率が非常に高い一方、2003から2005年の減少率は非常に減っているのです。一見事態は好転している様に見えるかもしれませんが、これは裏を返せばそもそも森林そのものが無くなってきているからだ、という考え方もできます。

 森林劣化という大きな問題はいつも森林減少とともにあり、この主な理由は多くの森林が木材の為に伐採されているからに他なりません。特に現在は300万ha以上と見積もられている大森林が残されているパプア島での事業が顕著で、多くの伐採企業が新しい伐採許可を取得しようとしています。

環境リスクについて

図3:2007年の各地における違法伐採件数

 次は環境リスクについてお話したいと思います。図3の通り、インドネシアでは多くの違法伐採が行われておりますが、この数値は新聞のデータを集計したものであり、これはあくまで報道されたもの、全体のごく一部である事を先にお伝えしておきます。現行の違法伐採は特にスマトラ島において活発であり、次いでカリマンタンも比較的多くなっています。また違法伐採だけではなく、図の通り違法居住、盗伐、違法管理や密輸といった多くの犯罪が起こっております。

 この密輸について補足致しますが、当然こうした違法伐採木材を外国に販売することは国内法で禁じられているものの、これはインドネシアだけの問題ではなく、こうした違法木材に対しての需要があるからこそ起こっている問題だ、とも言えます。
図4:2006年に調査8地域で観測された森林火災

 また、8つの州において森林火災の調査・分析を行った結果、森林火災の多くは西カリマンタン州、中部カリマンタン州とリアウ州で起こっている事が判明しました。
 この結果の理由としては、両カリマンタン州、リアウ州には多くの泥炭地が存在し、この有機材が多く存在する地域で一旦火災が発生すると、歯止めが利かない程大きく広がってしまうという事が挙げられます。(図4) 

 
社会リスクについて
 リアウ州には多くの伐採予定地がありますが、伐採企業の多くは先住民が住んでいる事を認識せずに伐採予定地を選定しています。このため、居住地区と重複したり、近くに先住民が住んでいたりといった状況が発生するのです。ここから住民と企業の軋轢が発生するのですが、インドネシアでは1997年から2003年の間に、この様な紛争が約2000件も発生しています。

  尚2000年度は、まだインドネシアでは法の施行が充分では無かったのです。2001年から2007年の間には、紛争が非常に減っていることが分かると思いますが、このデータも正確ではありません。まだ表に出てきていない、メディアで報道されていない紛争がまだ沢山あるのです。

リスク評価のまとめ
 これらのリスクから、インドネシアの森林を伐採する事はハイリスクであることが判断できます。理由としては未だ森林劣化・減少率が非常に大きい事、次にインドネシアの森林は非持続的な森林管理がされている事、また最後の理由としてその転換、違法伐採、森林火災、土地所有権等をめぐる社会的紛争がある事などが挙げられます。

 本来森林資源に依存するステークホルダーは皆、適切な森林管理によって何らかの恩恵を得られる状態が好ましいと考えます。このため我々FWIが今も、そして今後も提案していく事は、「インドネシア政府は、適切な森林管理によって、森林計画のために必要な情報をまとめていくこと」、そして「多くのインドネシアの先住民族が森林管理に参画すること」なのです。

木材調達検証システムTLAS
図5:木材調達検証システムTLASの組織関連図

 最後に木材調達における新しい合法性検証システムを紹介します。インドネシアで策定されたこの合法検証システムは、TLAS(Timber Legality Assurance System)といい、今年やっと最終的に仕上がりました。以前のシステムでは調達元や経路等が不明瞭だという問題を抱えていましたが、TLASでは違法伐採を厳密に検証していけるよう、またどこから来たのか、その経路等を文書化し全ての合法的な定義に従う事ができる様になりました。
                                                                                 図5の様にTLASにはインドネシア森林省、監視機関、認証機関の3つの機関が存在し、それぞれがこのシステムの責任を負う事になっています。木材調達を行う各企業はこのシステムの認証機関から証明書を取得する必要があり、LPKと呼ばれる部門が、最認証、年次審査、問題発生時の対処等、森林管理の遵法性を各企業に対し確認します。またこれらに関する監査を、NGOなど市民団体が行う流れになっています。 実施に関しては、政府による法整備を待ってから実施に入る予定です。  
 
 TLASは木材貿易における合法性保証のニーズに応えて作り出された解決策であり、また森林の利己的利用を減らすために実施される合法性検証システムなのです。
 
 日本の商社は、インドネシアから木材を購入する際に認証材、合法材のみを購入することでTLASをサポートする事ができるのです。
 我々としては森林消失を抑える努力として、このシステムによりインドネシアでの持続可能な森林管理が確立できできればと考えています。

                          
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