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2.持続可能な木材原料の利用が与える地球温暖化対策への影響は?

スマリンド・レスタリ・ジャヤ社副社長 アストリック・ムルサティオ・ブディ氏

なぜFSC製品を買うのか?
FSC製品とは何か。FSC製品と温暖化とはどういう関係があるのか。なぜ高価なFSC製品を選ぶべきなのか。そしてエンドユーザーが求めているのは何か。今日は、このような質問から始めたいと思います。FSCはドイツのボンに本部がある国際機関です。世界のステークホルダーが関わる責任ある森林管理を促進するためのシステムであり、協議を経て国際基準を設置し、その審査は独立した第三者機関によって行われます。責任ある森林管理を進める組織に対しFSCマークが与えられ、責任ある林業の促進のための情報サービスやマーケティングプログラムが提供されています。FSC認証件数は世界中で徐々に増えてきています。

森林こそが温暖化の解決策
地球温暖化は二酸化炭素(CO2)の排出によって起こります。産業が急速に発展し、それによる排出が増えています。FSCの認証製品を使うことは、温暖化対策につながると私は考えています。森林火災や違法伐採がCO2の排出と深く関係しているからです。もちろん化石燃料の使用量およびCO2の排出量の削減も重要ですが、森林こそが温暖化の解決策だと思います(右図)。植林地であってもCO2の吸収に貢献することができますが、天然林では1haあたり約497tものCO2を蓄積することができるのです。

▼森林が持つCO2吸収/蓄積効果
fig_スマリンド


日本は伝統的に木造住宅を作ってきたのですから、木造住宅を増やすべきだと思います。金属や鉄鋼等の生産量が増えるとCO2の排出量が増えます。木造住宅の建設により、木材の消費は増えるのです。

社会的責任の達成を目指す「環境ソリューション」
スマリンド社はシンガポールを拠点とする林業グループのメンバーで、44万8,986haの伐採権をインドネシアの東カリマンタン州に持ち、植林地も11万6,876haあります。伐採地のユニットⅡでは、26万7,600haでFSC認証を取得しました。

当社は「社会的責任を達成できる企業を目指し、持続可能な資源からの原料を利用することで、環境ソリューションを提供する」ことをビジョンとしています。「環境ソリューション」というのは当社の概念で、すべてエコラベルのついた原材料や再生可能な資源を使い、技術によって木材を最大限に利用し、無駄を減らします。そしてその製品はエンドユーザー、とくに環境に配慮したユーザーに向けて販売しています。

ユニットⅡの認証取得には1992年から2005年まで13年かかったのですが、その道のりには「習得過程」と「実行」という二つのステップがあります。まず現状とFSCの掲げる持続可能な森林経営(SFM)の原則と基準のギャップについてスコーピングと分析をしました。それから社会・コミュニティプログラム(参加型アプローチ)を開始し、人材採用と研修を行いました。そして外部コンサルタントを採用することによって意識啓発に取り組み、NGOとの協働もしています。

認証取得に当たって保護価値の高い森林(HCVF)を保護しなくてはなりませんでした。HCVFとされた3ヵ所のうち、1万2,000haのパヤン山地区は政府から正式に伐採権を認められている場所ですが、森林伐採を自主的に凍結しなくてはなりませんでした。ここの木材を伐採すれば約25万m3、3,700万米ドルの木材価格に相当するのです(すべて直径60cm以上の商材を1m3あたり15米ドルで換算)。生物多様性の価値があることは理解していますが、このような経済的な価値を持つ場所を凍結しなければ認証は取得できなかったのです。ちなみにパヤンの炭素蓄積は630万tと計算しています。

FSC認証に向けたさまざまな取り組み
FSC認証の取得に向けてさまざまな取り組みが行われました。地元住民との参加型マッピングでは、われわれの伐採権所有地と先住民族の土地をお互いに確認をし、それにより住民の権利を明確にしています。また、CoC(流通・加工過程)管理では、バーコードシステムの導入により確実なものにしています。すべての丸太にバーコードを貼付します。つまり切り株にいたるまで、追跡可能なのです。

2003年から2005年までは、FSCの認証へ向けて、事前評価や公開会合などの必須条件を達成し、認証取得後の2006年以降はSFMパフォーマンスの維持とさらなる改善に取り組んでいます。認証取得後、初年度は6ヵ月ごと、次年度以降は毎年1回、認証機関による監査が行われます。

当社の他の操業ユニットではさらなるFSC認証取得プロジェクトが進められていますが、FSCの要件を満たすには非常に時間がかかるのが課題です。また、必ずしも認証取得後の監査を通過できるとは限りません。そして人材育成や啓発活動など、高い先行投資も必要です。

すべてのステークホルダーの関わり合いが必要
私たちは単独では目標を成し遂げることができません。さまざまな企業や政府のコミットメントが必要です。バイヤーや消費者の関わりも重要で、FSC製品をプレミアム価格のついた形で積極的に使用してもらうことも必要です。またエンドユーザーのコミットメントも重要で、エンドユーザーが業者と協力し合って認証製品を使えるような雰囲気づくりをしていく必要もあります。さらに、FSC認証のマーケットにおいて適正な市場戦略を提供することも重要です。

このように私たちはすべてのステークホルダーの関わり合いを求め、持続可能な木材原料の供給を目指しています。

※(財)地球・人間環境フォーラム発行『グローバルネット』2008年9月号(214号)より転載


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