3.グリーン購入法の規格を満たす合法性検証材の供給
ヤヤサン・サバ森林部門グループゼネラルマネージャー ダウド・タンポコン氏
持続可能性の問題に対処するため、コンセッション(伐採権保有地)でどういうことをしているのか、ヤヤサン・サバの経験や取り組みについて紹介したいと思います。私は具体的な勧告や提言はしません。企業やバイヤーの判断にお任せし、われわれの取り組みが皆さんのポリシーに合致しているかどうか判断を仰ぎたいと思います。
コンセッション約100万haを有するグループ
マレーシアのサバ州は日本の南西にあります。われわれのコンセッションは州のちょうど真ん中に位置し、面積は約100万haに及びます。ヤヤサン・サバは1966年、サバ州議会の法例により、サバ州に暮らすマレーシア人すべての教育水準・生活水準を上げることを目的に設立されました。1970年に約85万haのコンセッションを割り当てられましたが、その後1984年には見直しと合併により単一ブロックに集められ、面積も拡大しました。同年、森林管理計画が作成され、州内閣の承認を得ました。
コンセッション内には世界的にも有名なマリアウ流域保全区やダヌム・バレー保全区、インバック保全区などの保全区が合わせて約10万haあります。クラスⅠの保護林・保全区域も含まれており、全体の10%ほどを占めています。サバ州には26の森林管理区画(FMU)がありますが、そのうち九つがヤヤサン・サバのコンセッション区域内にあり、州のFMU総面積の約3分の1に相当します。
ヤヤサン・サバは政府機関ですが、グループ内には事業を行ういろいろな子会社があります。林業や木材加工のほか、プランテーション事業も手がけています。バイオ技術やハーブの生産、漁業資源加工、運輸、不動産開発、観光業、石油天然ガスの開発なども行っています。その利益はヤヤサン・サバを通じ、奨学金や生活改善などの社会事業に使われています。
州全体の丸太生産量の約88%はヤヤサン・サバによるものです(2006~2007年)。州の財政にとってもヤヤサン・サバが非常に重要な役割を担っているということになります。また、2006年の州全体の丸太輸出量は約107万m3でしたが、その約9割に当たる約101万m3はヤヤサン・サバにより輸出されています。サバ州の丸太輸出は2006年から2008年までの合算で、全体の24%が日本向けです。相手国としては中国が最も多く全体の58%ほどです。
森林管理の向上に取り組み、グリーン購入法にも対応
オランダやスウェーデンなど海外の団体と森林の再生・回復などの共同プロジェクトを実施しています。また、立木のマッピングもしています。伐採する木はすべて特定して機械的に番号を振り、マーキングすることにより、計画的に伐採します。伐出作業道計画や集材計画も策定しています。
植林事業については、グループ企業の一つであるサバ・ソフトウッド社が約2万5,000haのFSC(森林管理協議会)認証を受けたアカシアマンギューム植林地を経営しています。
また、グループ全体で森林環境方針を策定しています。FMUレベルでの環境影響評価(EIA)を実施したり、FMU内の保護価値の高い森林(HCVF)を特定し、低インパクト伐採の採用などにより保護したりしています。
一方、日本の改定されたグリーン購入法に対応する取り組みも行っています。合法性については境界の設定やEIA、丸太生産のモニタリングなどを実施しています。合法性を確保するため、丸太にはシリアル番号や切り株番号、さらに森林局や所有する会社のマークなどがハンマーで押印され、ロイヤルティの支払いもマーキングにより証明されます(下図)。
▼マレーシア、サバ州産丸太のマーキング方法
1997年9月には持続可能な森林管理に関するライセンス契約を州政府と締結しました。その契約には、伐採に関する条件や規定、ロイヤリティや境界条件などの契約条項などが明記されています。また今後さらにFSC認証の取得を拡大するため、2004年からは業務の改善に取り組んでいます。2005年にはTFT(熱帯林トラスト)と覚書を締結し、FSC認証取得のため調査の結果、指摘されたギャップを改善しようと取り組んでいます。
さらに森林管理を一層向上させるため、品質管理システムISO9001も取得しています。また、2004年からは労働安全衛生管理システム(OSHMS)をすべての森林管理活動に適用し、今年11月までにはOSHAS18001の認証の取得も目指しています。
伐採地から販売拠点まで丸太を追跡できるRFID
森林管理の向上のため、丸太を追跡するための無線ICタグ(RFID)を利用しています。これにより、伐採されるジャングルから販売拠点まで丸太の追跡が可能となります。
まず伐採前にRFIDを使って木にタグをつけ、GPSレシーバが認識した木には木番号、樹種、GPS座標を登録します。伐採後はもう1枚のタグを切り株に残しておきます。そして携帯デバイスで切り株の位置や樹種、木の直径などその木のデータを入力します。丸太が貯木場にたどり着くとさらに情報がタグに登録されます。運搬に使うトラックについているアンテナがタグの情報を読み取ります。取り込んだ丸太のデータは衛星を通じほぼリアルタイムでサーバーで同期化され、蓄積されます。データは地域事務所だけでなく本社にも送られます。
このように、われわれの操業エリアで伐採された木に関する情報はすべてわれわれ自身で把握することができるのです。それにより、われわれは管理された森林からの丸太であることを検証・保証された製品を提供することができるのです。
※(財)地球・人間環境フォーラム発行『グローバルネット』2008年9月号(214号)より転載